サンホラ考察メモ


■Elysion
〜楽園幻想物語組曲〜
 ├ はじめに
 ├ ループ考察
 ├ 箱舟
 ├ 3-1+1-2
 ├ 盲目のうちに
 └ 肩に座る少女


■Chronicle 2nd
 ├ はじめに
 ├ クロニカとノア
 ├ ルキウスとイリア
 ├ ルキア
 └ 書の魔獣

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最初に、私の考える時系列はこうなっています。

エルの絵本【魔女とラフレンツェ】

エルの天秤

エルの楽園[→side:E→]

エルの楽園[→side:A→]

エルの肖像(ここからループ突入)

ABYSSサイド

エルの絵本【笛吹き男とパレード】

トラック44

エルの天秤

この後、エルの絵本【魔女とラフレンツェ】を除いてループしていく


1周目にABYSSサイドが無いのですが、ABYSSサイドとは仮面の男(オルフェウス)がエリス(エウリディケ)を探す物語です。オルフェウスは冥府の番人(ラフレンツェ)を虜にして扉の中へ入り、神話の通りなら冥府の王(サンホラ的にはタナトス?)も彼の竪琴に聴き入ってエウリディケを連れて行くことを許してくれます。1周目はエウリディケの魂を探す必要がなかったのではないでしょうか。

死者を現世に連れ戻すには恐らくこの世に新たに生まれなければならなかったのではないか、というのは多くの方の見解として出ていますが私もそれを支持しています。ラフレンツェの娘として生まれたエウリディケ、外見は(血の繋がった娘なので)ラフレンツェそっくりですが魂はエウリディケです。生まれた娘にオルフェウスはエウリディケと名付け、恋人として育て、愛する。それをラフレンツェが知ってしまい、彼らに呪いをかけたのです。ラフレンツェのかけた呪いはオルフェウスが振り返ってしまう呪い、エウリディケを冥府へ堕とす呪いなのですがもはや冥府の扉の外へ出てしまっている彼らにそこまでの呪い(直接殺すような呪い)はかけられず、かわりに2つの呪いをかけました。1つ目は少しでも早く亡者へ戻す=短命の呪い。エルが病気にかかったことにはその呪いが関連していると考えられます。

オルフェウスはエウリディケを連れてラフレンツェの元から逃げ出し、この時に逃亡の為にアビス、エリスと名前を変えたのではないでしょうか。そしてElysion本編と同じようにエルの8歳(と思われる)の誕生日に何らかの原因でアビスはプレゼントの肖像画を持ったまま命を落としてしまった。現実を受け入れられずに本編のエルと同じように夢想の世界へ入ったエルは自分でその肖像画を取り出して「最愛の娘エリスの8つの誕生日に」と書いた(これで幼い筆跡、妙に歪な題名の説明がつきます。ついでにエリスは幼い頃に名前を変えられてしまった為に自分の本当の名がエウリディケとは知りません)のですが、彼女の幻想の中では題名つきの肖像画を父からもらったことになっているのでしょう。…本当は知っているのですけどね。二人とも亡くなって誰もいなくなり、「深い森の廃屋」の完成です。やがてこの家に生まれ変わったアビスがやって来て、少年と肖像は邂逅する。

ここで少年が恋をするのは「病的に白い彼女」の外見にではなく、かつて愛したエウリディケだと(記憶は無くても)無意識に解ったからだと考えます。そしてエルも同じ理由でアビスがかつての恋人だと無意識に解り、恋心を抱いていたと思っています。「どんな恋が咲くの?」から「ずっと一緒にいられるの?」の部分は父親への恋心を歌ったものだと考えています。

「やがて少年は♂の為に自らを殺し 少女は♀の為に自らを殺す」

これは少年が自分の中の♂(オルフェウス)の為に自らを殺し(人生を投げ出してエリスを探す)、少女は自分の中の♀(エウリディケ)の為に自らを殺す(親子であることを忘れて父親に恋をする)、ということではないでしょうか。

肖像画を見た少年は冥府へエリスを探しに行きますが、オルフェウスの神話にも振り返って堕としてしまったエウリディケをもう一度冥府へ探しに行くけれど、もはや彼のどんな竪琴にも川の渡し守が耳を貸さなかったというエピソードのあるものがあります。恐らくアビスにも「二度目は無かった」のでしょう(ラフレンツェにした仕打ちをを考えれば当然なのですが)。そしてエリスを探し彷徨わなければならなくなった、それがABYSSサイドであるという考えから1周目はABYSSサイドに当たるものは無かったと思っています。

冥府の扉が開いていて亡者も生者も自由に行き来できるようになったしまったため(開けたのは本人なのですが)少年期〜青年期を現世にいるのか冥府にいるのかもわからないエリスを探してABYSSサイドを彷徨うことに費やします。そう考えるとエリ前ジャケの少し若く見える仮面の男は探している最中の姿であるという説明もつきます(勿論またイメージが決まっていなかったという可能性も充分にありますが)。そうしてやっと魂を見つけ出して現世に生まれさせます。魂さえエリスならいいのですからこの時、母親は誰でもいいのです。どんな母親であろうと産まれる子供は病的に白い少女、これがラフレンツェの2つ目の呪いです。生まれ変わるエウリディケは永遠にラフレンツェに酷似している、という呪い。仮面の男がエリス候補にした少女達はそういった外見ではありませんが、仮面の男本人がその呪いを知らないのでしょう(生まれ変わったら記憶は受け継がないと見ているので永遠に知らないことになります)。この呪いは私にした仕打ちを忘れるなというラフレンツェの心の叫びでもあるのですが、冒頭の「わたしは生涯 彼女を愛することはないだろう〜」というアビスの言葉を考えると全く気にしてはいなそうです。どこまでも外道です。まあエリ組に登場する男性は物語の性質上、YieldといいSacrificeといいStarDustといい外道ばっかりなのですけど。

上記のことから私はラフレンツェは最初のエリスを産んだもののエルの母親は毎回別人で、オルフェウスとアビス、エウリディケとエルは(輪廻を続ける)同一人物と考えます。本来、楽園を失った罪の罰を受けるべきは魔女とラフレンツェの物語から普通に考えれば誓いを破ったラフレンツェと禁忌を犯したオルフェウスということになりますが、肖像にある「E」と「A」がエルとアビス、それを神の罰を受けたエヴァとアダムと読ませるならば、罰を受けたのはオルフェウスとエウリディケと考えた方が自然です。ループしているのはオルフェウスとエウリディケ(の魂)のみで、ラフレンツェはその外側にいるのではないでしょうか。そもそも「その男の妄念が永遠を孕ませるならば」とある通り、ラフレンツェの呪いはループさせるにまでは及んでおらず、ループさせているのはエウリディケを求めるオルフェウス自身(の妄念)ということになります。そこにラフレンツェが存在する余地はないでしょう。唯一エルの母親として存在することは出来ますが、ラフレンツェが永遠に捨てられる女として輪廻しているというのはアビスやエルよりもずっと残酷で哀しいです。いくらなんでもそんな扱いは無いと思いたいです。

Moiraで「死人戦争のハジマリ」とあるのでラフレンツェが本当の意味での最後の番人であり、エルが奈落へ堕ちた後にラフレンツェ(の立場)となって生まれ変わったオルフェウス(アビス)に出会い…というループではなさそうです(あまりMoiraと絡めるのもどうかと思いますが)。あれだけ身体の弱そうだったエルが成長して子供を産めるとも考えにくいですし、私の前提ではエウリディケ=エルですので、エウリディケがエルを産んでしまったらエウリディケが2人になってしまいます。また、生まれ変わっていてもアビスはオルフェウスです。成長したエル=エウリディケを騙すということはありえません。オルフェウスとエウリディケの魂がループしている、だからこそ惹かれあうのだと考えています。

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