サンホラ考察メモ


■Elysion
〜楽園幻想物語組曲〜
 ├ はじめに
 ├ ループ考察
 ├ 箱舟
 ├ 3-1+1-2
 ├ 盲目のうちに
 └ 肩に座る少女


■Chronicle 2nd
 ├ はじめに
 ├ クロニカとノア
 ├ ルキウスとイリア
 ├ ルキア
 └ 書の魔獣

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以前、考察サイト様で楽園パレードで仮面の男の肩に座っている少女は「少女の姿で永遠に楽園に辿りつけない仮面の男(とABYSSの少女達)を嘲笑うラフレンツェではないか」というものを読んで、その説をとても気に入っていました。そのサイト様はループ説を否定されていたので(根拠に基づいた素晴らしい考察です)、残念ながら私の妄想にそのまま組み込むことが出来ないのですが、この「肩に座った少女はラフレンツェである」という説は、私の持っていた疑問の1つを解決してくれる気がしてきました。

仮面の男がエルらしき少女を肩に乗せABYSSの少女達を連れて歩いていく、永遠に続くパレードの物語「エルの絵本【笛吹き男とパレード】」はループ派にとって最も解釈の難しいもののひとつではないでしょうか。この物語の存在そのものが「ループ説」や「仮面の男はエリスを探してABYSSサイドを彷徨っている説」と大きく矛盾しているからです。

仮面の男が「エリス候補」として選んだABYSSの少女達。「彼女こそ私のエリスなのだろうか」からは今度こそ、という想いが伝わってきます。少なくとも手当たり次第に少女をこの子はエリスかな、それともあっちかな、と見ていたわけではなく何らかの基準があったのだろうと想像できます。彼女らは基本的に「楽園=愛する人」を「自分の手」で失った少女達で、そして楽園パレードの歌詞にもある通り、「心に深い傷を負った者」であり「心に深い闇を飼った者」である。これは「エルの楽園」両バージョンから窺えるエルの無垢なイメージとはなかなか結びつかないのではないでしょうか。エルは父親という楽園を失ってはいますが自分で手を下したわけではなく、最初のエウリディケだって自分が死んでしまっただけでオルフェウスに何かしたわけではありません。エルには「心の闇」が足りないのです。

ABYSSの少女達が失った楽園、それは愛する相手がこの世からいなくなったということでは無いと思います。相手が生きてさえいれば楽園だったかと言えばそうではなかったからこそ、彼女達は罪を犯した。「Ark」では裏切られた時、「Baroque」では分かり合えないと知った時、「Yield」では子供を失った時、「Sacrifice」では妹が慰み者にされた時(姉は知りませんが)、「StarDust」では彼と見知らぬ女を見た時、この時に彼女達は楽園を失っていて、失った「結果」、愛する人を殺した(死なせた)に過ぎません。エルとアビスはお互いを想い合ったまま亡くなった筈です。エルにとってABYSSの少女達と同じ意味では楽園を失ったとは言えず、エルとABYSSの少女達との共通点は性別以外一つも無いことになるのではないでしょうか。

また、ABYSSの少女達全員が「エリス」という名前という可能性も無いわけではありませんが、エリスという名の少女達が皆ああいった薄幸な罪人だというのも不自然な気がします。仮に候補全員の名がエリスだとしても心に傷を負わず闇も飼っていないエリスだっている筈で、パレードへ連れていくエリスと連れて行かないエリスが出てくる筈です。根本的な条件とは言えないでしょう。

仮面の男は何も知らないエルとは違い、恋したエリスを甦らせる為に他人を利用し、最初から恋愛の相手としてエルを育てているあたりは「心の闇」を抱えていると言えますし、もともとのオルフェウスの場合は事故で恋人を失っているわけですから(生まれ変わって記憶が無くても)「心の傷」もあると言ってもいいでしょう。しかしアビスが自分と似た境遇の少女を連れ去っていたとすると「彼女こそ私のエリスなのだろうか」のセリフの説明がつかなくなります。エリスかな?と思ったら自分と似ていたので連れてきた、でもいいのですが、仮面の男よりももっと彼女達に似た境遇の人物がいます。

そうです、ラフレンツェ。愛した男に、それも男の恋人の為に利用されて捨てられた、漆黒の焔を抱く少女。裏切りを受けた「Ark」、拒絶された「Baroque」、三角関係の「Yield」、男の身勝手の犠牲になった「Sacrifice」、そして捨てられた「StarDust」…ラフレンツェ、オルフェウス、エウリディケと並べた場合、ABYSSの少女達は皆「ラフレンツェ側」の人間であると考えるのが一番しっくりこないでしょうか。

ここからは思いっきり創作ですが、肖像に恋をした少年のところに肖像とそっくりな姿のラフレンツェがやってきます。オルフェウスへの未練と復讐の気持ちを綯い交ぜにして彼に声をかけますが、少年は最初は驚くもののエリスとそっくりな姿をしていても彼女の魂が求めている人物(エウリディケ)ではないことが解り、ラフレンツェからは興味を失います。それを悟ったラフレンツェは自分が冥府の番人だと名乗り、エリスの居場所を一緒に探してあげると持ちかけました。本当は冥府の扉が開かれて亡者達が出て行ってしまった為に居場所など解る筈もないのですが。

そして共にエリスを探すことになった仮面の男(少年)とラフレンツェ。ラフレンツェは自分と似た境遇の娘を見つけ出しては「あの子じゃないかしら?」「それともこの子じゃないかしら?」と仮面の男に言って連れてこさせます。何故かと言えば彼女達の魂を救うため、「想い出を過去の光として埋葬させるため」です。ラフレンツェも彼女達と同じく「荒野を彷徨う者」なのです。自分と同じような目に遭った少女を仮面の男に見せ、救わせる。このパレードはラフレンツェにとって、オルフェウスに罪の意識を思い出させる贖罪のパレードなのではないでしょうか。当の仮面の男は(記憶が無いため)そんなことは知る由もなく、ラフレンツェもそれをわかっているから彼を本当に赦すことはないのでしょう。永遠にも思える時間が流れて仮面の男はようやく本物のエリスを見つけ、ラフレンツェもその場では一時的に解放します。…どうせその後、幸せな時間は長く続かないのですから。仮面の男がエリスと立ち去った後、ラフレンツェは集めたABYSSの魂達に本当の死の安らぎを与えられるよう冥府の神に頼み、また肖像の少年が生まれるのを待っているのです。彼女が救われるのはオルフェウスが心から後悔し、ラフレンツェに謝った時でしょう。そんな日は永遠に来ないのでしょうが。

と、こんなのはいかがでしょうか…。私は仮面の男がループしていると解釈しているので、楽園パレードでエリスを見つけ出さないと成立しません。仮面の男が楽園(エリス)を見つけるのと同時にABYSSの少女達もそれぞれの楽園を見つけ出し、また惨劇のループへと陥っていくのでしょうか。仮面の男と同じだけの執念があればそうなっていくのかもしれませんが、「冥府の扉を開けた」という明確な罪のある仮面の男と、単によくある感情のもつれで人を殺してしまった少女達が同じ目に遭うというのは少女達が哀れです。というわけでお気に入りの「肩に座った少女はラフレンツェである」説を拝借してこんな解釈に至りました。本気で妄想にしか見えないものになってしまいましたけど(´・ω・`)

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