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生物の起源〜細胞生命の起源〜

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補遺 1:追加情報(PDF 版

作成:仲田崇志

更新:2008年04月16日
修正:2009年01月29日
追加情報:2010年09月01日


目次




はじめに

この文章では,生物の起源に関して筆者が勉強したことを紹介したいと思います。 生物がどこから来たのか,どのようにして誕生したのか,そもそも何もないところから生物が出現するなどということがありえるのか, などは多くの人が疑問に思うテーマです。しかしながら,飛躍的に発展した現在の生物学でもこの疑問には明確な答えが出せていません。 だからといって生物の起源が全く闇の中にあるのかと言えば,実はそうでもありません。1950 年代の有名なミラーの実験(Miller, 1953)により, 生物の起源を実験を通じて調べることが出来ると考えられるようになりました。一方で,同じ 1950 年代に構造が決定された DNA の研究から, 生物が精密に作られた「物体」として(魂のようなものを考えなくても)説明できるという考えが浸透しました。

こうして始まった生物の起源に関する研究は,単に生物の構成物質(アミノ酸,核酸塩基,等々)の由来を検証する研究から, 果ては物質がどのように秩序だった細胞を作り出すように複雑化したのかを調べる研究まで,格段の進歩を見せています。 近年では多くの生物の全ゲノムの情報が比較できるようになり,それを利用して最初の生物の姿を類推しようとする流れも力を持っています。

現在,生物の起源の研究は未だ霧の中をさまよっている状態です。しかしそれでも,霧の中にシルエットが浮かんでいる, と言える程度には知識は成熟してきています。この文章を通じてより多くの人が,そのシルエットを見ることが出来れば, そしてシルエットの形をより明瞭に描き出すことが出来ればと思っています。


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概要

はじめに本稿の概要を図 1 に示します。

図 1:あらすじ

まず「第1章:生物とは何か」では,そもそもある物体が生物である,とはどういう事なのか, どのような特徴を獲得すれば,無生物から生物になったと呼べるのかを考えてみたいと思います。 この章で行う生物の定義が,あとの議論の土台になります。

「第2章:生物が生まれた頃」では,生物が誕生した時代とその時代の地球の様子を紹介します。生物はおそらく 40 億年ほど前, 形成されてから 5 億年ほど経った地球上で誕生したと推測されています。最古の生物証拠についてはその真偽を巡って議論がありますが, その議論についても紹介したいと思います。

「第3章:簡単な有機物ができてきた!」では,アミノ酸,糖,核酸塩基など, 生体物質の単位となる単純な有機分子がどのようにして原始地球に出現したのかについて議論します。 このような低分子の有機物(モノマー)は,互いに繋がってタンパク質や核酸(DNA や RNA)と言った,より複雑な有機分子を作る単位になります。

そして,タンパク質や核酸などの生物に不可欠な高分子ができるためには,モノマーが長く繋がる必要があります。 このような反応(重合反応)がどのようにして起こったのかに関する研究を「第4章:そして分子は長く繋がって」で紹介します。

高分子は,例えどんなに複雑で大きくても,それだけでは単なる分子であって,生物とは呼べません。 一般に,生物と呼ばれるためには増殖し,進化することが必要です。これらの高分子は互いに助け合って増殖することを始めたと考えられています。 特に RNA は,遺伝子として働くことも他の化学反応を助ける触媒として働くことも出来るため,最初の「生命のような」分子だった可能性があります。 RNA が遺伝子と触媒の両方の働きを兼ねていたような「生命」のことを,またはそんな生命が生活していた時代を RNA ワールドと呼びますが, 「第5章:RNA が全てを握っていたのか?」では,この RNA ワールド仮説を問題点も含めて議論したいと思います。

現在我々が知っている生物は触媒にタンパク質(酵素)を好んで利用しています。タンパク質は遺伝子にはなれないと思われるので, RNA ワールドが実在していたかどうかに関わらず,何らかの遺伝子が酵素を合成し,利用できるようになった過程が存在したはずです。 「第6章:核酸とタンパク質の協力」では,遺伝子と触媒が別々の物質に別れ,遺伝子が触媒の合成を制御するようになった過程について, 現在の生物学の理解を紹介します。

もし,RNA ワールドが生物の前身だったとすると,生物の遺伝子は RNA から DNA に変更されたことになります。 DNA は全ての現生生物が遺伝子として持っていますから,生物が生物であるためには必要であったと考えられます。 「第7章:遺伝子は DNA に任せた」では遺伝子が RNA から DNA に移った理由と過程について触れます。 おそらく遺伝子が交代したこの瞬間こそ,生物が生物らしくなった瞬間,生物誕生の瞬間と呼ぶことが出来るでしょう。

生物が誕生してからも歴史は続きます。彼らは長い時間進化をし,そして最初の重大な分岐点に立たされることになります。 近年は,生物を分ける 3 つの三大グループ(真正細菌,古細菌,真核生物)の最後の共通祖先がどのような生物であったのか, などを現生生物の比較に基づいて類推する試みが進んでいます。「第8章:偉大なご先祖様」では,この試みを追ってみます。


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第1章:生物とは何か

「生物の起源」というテーマは,ちょっと抽象的過ぎてどこから手を突けたらよいのか迷うところがあります。 その理由の一つは,そもそも生物とはどんなものなのかが完全には理解されていないことです。 そこで,この章では生物の正体について突き詰めて,生物の定義を考えてみたいと思います。ここで考えた定義をもとに, 次の章からそのような生物がどのようにして生まれたのかを議論していくことになります。

まず細かい話に入る前に用語の整理をしておきましょう。よく「生命の起源」というフレーズを目にしますが, この文章のタイトルは「生物の起源」です。実はこれにはきちんとした理由があります。

「生命(Life)」という用語はとても広い意味で使われていて,例えば「地球外生命」, 「人工生命」など私たちが見たこともないような,存在するかどうかもわからないようなものにも使われます。 一方で「生物(Organism)」はもっと具体的な,私たちが目にしている生き物,つまりは「地球生命」を指すために使われます。 もちろん例外もありますが,こんな風に区別すると議論がしやすくなるので,私は「生命」と「生物」を区別することにしています。 今回は私たちの祖先の誕生をテーマにしていますから,「地球生命の起源」=「生物の起源」がこの文章のタイトルになります。

「生命」の定義は多くの人が試み続けており,未だに決定的なものは出されていません。最近では Luisi (1998),Koshland Jr. (2002),Ruiz-Mirazo et al. (2004) や Oliver & Perry (2006) などが「生命」の定義を行っています。 また NASA(アメリカ航空宇宙局)の用いた定義も有名でよく引用されます(Joyce, 1994)。

参考までに,NASA の定義,Ruiz-Mirazo らによる定義および Oliver と Perry による定義を引用,訳出しておきましょう。

  • NASA の用いた定義(Joyce, 1994)

    Life is a self-sustained chemical system capable of undergoing Darwinian evolution.

    (生命とは,ダーウィン進化を受けることが可能な,自己保存的な化学系である)

  • Ruiz-Mirazo et al. (2004) による定義

    ‘A living being’ is any autonomous system with open-ended evolutionary capacities.

    (「生きている物」とは,自由に進化する能力を有した,あらゆる自律的な系である)

  • Oliver & Perry (2006) による定義

    Life is the sum total of events which allows an autonomous system to respond to external and internal changes and to renew itself from which in such a way as to promote its own continuation.

    (生命とは,外的および内的変化に応答し,自己の存続を推進するような方法で自己を更新する自律系を可能にするような 事象の総和である)

さらに詳細な解説と議論も行われていますが,多くの研究で「進化できる」という点と「エネルギーを使って自分を管理している」 (つまり代謝を行っている)という 2 点が生命の本質と考えられているようです。 しかし私たちは未だに宇宙生命というのを見たことがありません。他の生命との比較なしに「生きている」 ということを理解することが本当に出来るでしょうか? 「生命」の定義の難しさはこんなところにも理由があるようです (Cleland & Chyba, 2002)。

そんな「生命」の中でも私たちが最も興味を持つのは「地球生命」,すなわち「生物」でしょう。 「生物」については私たちははるかに良く知っています。「生物」がどのようにして生活し,どのようにして増殖し, どのようにして進化していくのかは,近年の生物学の発展によってかなりの部分が分かってきました。「生物」 がどのような仕組みで「生きて」いるのかが分かってきたといってもいいでしょう。これから,生物について私たちが知っていることを基に 「生物」を定義していきましょう。私たちが「生物」だと思っている全てのものが持っている特徴,そしてそれがなければ「生きて」 いけないような特徴を選び出せば,「生物」の定義ができるはずです。

「生物」には単細胞生物と多細胞生物が存在します。単細胞生物と多細胞生物では個体の概念も増殖の概念もまるで違っていて, 同じ「生物」として定義するのは一見困難です。しかし逆に言えば,どちらも細胞から出来ています。ウイルスなどは細胞構造を持ちませんが, ウイルスは代謝を行わず,また他の生物の子孫である,あるいは他の生物の祖先になったとも考えにくいため, 一般には「生物」とは考えられていません。従って「生物」の特徴の一つ目には,「1つまたは複数の細胞から出来ていて, 総体としても自己保存している」ことが挙げられるでしょう。細胞についてはこれから定義しますが, 細胞こそ生物の代謝の場であると言えます。

「進化できる」というのも「生物」の重要な特徴ですが,そのためには個体の特徴が世代を超えて引き継がれ, その過程で変異が発生しなければなりません。これを担っているのが遺伝子で,この遺伝子も細胞内に含まれています。 単細胞生物では当然,細胞内の遺伝子がその細胞の発生を決めることになりますし,多細胞動物はでも, 大抵は1(または少数の)細胞から発生を開始し,その細胞の遺伝子がその後の発生を決めています。 そして遺伝子は発生を続けても体内の多くの細胞に保持され,世代を超えても引き継がれることになります。従って, 「生物」の二つ目の特徴は「個体中の細胞が含む遺伝情報に基づいてつくられる」ことと言えます。

両者をまとめると,「生物」は以下のように定義できるでしょう(図 2)。

  • 生物:1つまたは複数の細胞からなる物体で,総体として自己保存しており, その物体中の細胞が含む遺伝情報に基づいてつくられるもの。

図 2:生物と細胞

さて,次は「細胞」とは何かを考えなければなりません。上の定義では「生物」の持つミステリアスな性質を, 細胞の性質としてしまいました。では,細胞はどのようにして出来ているんでしょうか?今度は分子細胞学の知識に基づいて, 「細胞」という構造を定義しましょう。細胞は特殊な材料が,特殊な関係を保って出来ているとても精巧な機械にも例えられます。 ここからはまず細胞の材料,それからそれらの間の関係の順に説明していきます。

細胞は様々な無機分子や有機分子から出来ていますが,中でも特に重要なものは以下の3つに分類できます。 これらはどれも細胞の生存に必要不可欠なものです。

  1. リン脂質:リン酸,グリセリンで出来た親水性の頭部と,長い疎水性の炭素鎖からなる尾部からなっている分子です。 細胞を包んでいる細胞膜の主成分ですが,細胞膜はその他の物質も含んでいます。一般に,細胞膜を作る分子は, 親水性の部分と疎水性の部分を同じ分子の中に持っていることが必要で,そのような分子はまとめて両親媒性分子 と呼ばれます。

  2. タンパク質:アミノ酸が長く繋がり,複雑な構造をとるようになった高分子です。 細胞の内外で様々な役割を果たしています。細胞膜の構成要素にもなりますが,触媒としての働きが最も注目されます。 細胞内では無数の化学物質が無数の化学反応を起こしていますが,化学反応が無秩序に起こっていては困ります。 細胞はタンパク質性の触媒(酵素)によって特定の化学反応の速度を速めて,化学反応の経路をコントロールしています。

  3. 核酸:核酸塩基,糖,リン酸からなるヌクレオチドが長く繋がった高分子です。塩基の組成や糖の種類が異なる, RNA(リボ核酸)と DNA(デオキシリボ核酸)の2種類の分子があります。

    • RNA:塩基としてアデニン(A),グアニン(G),ウラシル(U),シトシン(C)を持ち, 糖としてはリボースを使っています。生体内では触媒として働いたり,タンパク質の合成に関与するなどの役割を果たしています。 タンパク質の合成においては,DNA の情報を仲介してアミノ酸を並べる鋳型になる mRNA(メッセンジャー RNA)と, mRNA の上にアミノ酸を運んでくる tRNA(トランスファー RNA),アミノ酸同士をつなげるリボソームで重要な働きを担う rRNA(リボソーマル RNA)の3種類が特に重要です。

    • DNA:塩基としては A,G,C と,U の代わりにチミン(T)が含まれていて,糖としてはデオキシリボースを使っています。 遺伝子の本体であり,この分子上の塩基の並びがタンパク質のアミノ酸の並びを決めています。タンパク質の合成の際には, mRNA の鋳型として,間接的に合成されるタンパク質のアミノ酸配列を決めています。

細胞が細胞として機能するためには,これらの物質が適切な働きと関係を保っていなければなりません。まず, 細胞が環境とは別の化学反応を行いながら自分自身を維持していくには,外界と隔離されつつも, ある程度物質のやり取りを続けていく必要があります。そのために働くのが,低分子は通しても高分子は通さないような,半透性を持った膜です。 細胞においてこのような膜を構成しているのが,先に述べたリン脂質であったり,一部のタンパク質であったりします(両親媒性分子です)。 そこで「細胞」の特徴の一つ目は「両親媒性分子の膜で包まれている」ことだと言えます。

細胞の特徴が,細胞分裂を経ても受け継がれるためには,情報を保持する遺伝子(DNA)が必要です。では, どのような情報が保持されている必要があるでしょうか?まず,細胞を維持するためには代謝系の酵素等の配列情報が必要です。 代謝の経路自体はどのようなものでも構いませんし,実際に生物が用いている代謝系は必ずしも全て共通しているわけではありません。 次に酵素をはじめとするタンパク質の合成系も必要です。そして遺伝子そのものをコピーするために,DNA 複製酵素が必要です。 これらをまとめて,細胞の特徴の二つ目は「膜の内側に,自己保存に必要な化学反応系(代謝系)のタンパク質触媒(酵素), タンパク質合成系の触媒,および DNA 複製酵素の配列情報を DNA の配列中に保持している」ことであると言えるでしょう。

そして,DNA の配列情報は単に持っているだけでは仕方ありません。遺伝子の情報は RNA やタンパク質の形に転写(DNA の情報を基に RNA を合成すること)・翻訳(RNA の情報を基にタンパク質を合成すること)されて初めて意味を持ちます。転写・翻訳のための装置, これは RNA とタンパク質を中心に出来ていますが,これが細胞内に存在して,しかも働ける状態に維持されていなければならないでしょう。 従って,細胞の特徴の三つ目は「DNA の配列情報を RNA,タンパク質の形に変換する触媒系を機能可能な状態で維持している」 になります。

さて,これで細胞の持っている特徴は網羅されたと思います。この章のまとめとして,今まで考えてきた「細胞」の三つの特徴をつなげて, 「細胞」の定義にしてみましょう(図 3)。次の章からは,最初の細胞がどのように出来てきたのかを, この定義に乗っ取って考えていくことになります。

  • 細胞:両親媒性分子の膜で包まれ,その内側に自己保存に必要な化学反応系(代謝系)のタンパク質触媒(酵素), タンパク質合成系の触媒,および DNA 複製酵素の配列情報を DNA の配列中に保持していて,この DNA の配列情報を RNA, タンパク質の形に変換する触媒系を機能可能な状態で維持している系。

図 3:細胞の基本概念


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第2章:生物が生まれた頃

この章から,本格的に生物の起源に関する研究の紹介に入ります。まず,どのようにして生物が誕生したのかを調べるためには, 生物がいつ,どこで,つまりはどのような環境で誕生したのかを知っていなければなりません。 生物が生まれたのは遥か数十億年も昔のことであり,最初の生物の証拠は一切残っていません。 そこで地質学や天文学的な傍証に基づいて,生物の誕生時期やその当時の環境が推測されています。 (

実のところ,生物が地球上で生まれたのか,それとも宇宙の他の場所で生まれたのかについても論争がありました。 しかし,宇宙に満ちている宇宙線が生物にとってかなり有害であることを考えると, 太陽系外で生まれた生物が自然に太陽系にたどり着くことはまず考えられません。ありうるとすれば, 太陽系外の知的生命体が意図的に生物を地球に送り込んだ可能性くらいですが(Crick & Orgel, 1973) それについては現在の知識では否定も肯定も出来ないでしょう。

生物が太陽系内の他の惑星で誕生して地球にたどり着いたとすると,火星がほとんど唯一の候補になります(Nisbet & Sleep, 2001)。 火星は地球から比較的近い距離にあり,過去に海があった証拠が現在集まりつつあり, 過去の火星は原始地球とよく似た環境を持っていたと考えられます(McKay, 1998; Malin & Edgett, 2003 ほか)。 特に McKay et al. (1996) が,火星からやってきた ALH84001 という隕石から生物の痕跡を発見したと報告して以来, 火星の生物探索が俄然盛り上がってきました。結局,ALH84001 の証拠の多くは状況証拠に過ぎず, おそらく間違いだったと考えられるに至っていますが(小出, 1998; Schopf, 1999 など), 最近ではやはり火星由来のナクラ(Nakhla)隕石に細菌が作ったような細い管状の構造とその内部に詰まった有機物が確認され, 生命が作った可能性が指摘されました(Gibson, Jr. et al., 2006; McKay et al., 2006。Kerr, 2006 も参照)。 ナクラ隕石については地球上で生物が紛れ込んだ可能性も否定できませんが,今後も火星の探索や火星隕石の研究が進めば, 新しい発見が出てくるかもしれません。

ちなみに,この ALH84001 は火星から地球まで辿り着く間にも,ほとんど加熱を受けていないと言われています (Weiss et al., 2000)。つまり,火星と地球の間で微生物が生きたまま運ばれる可能性もあるかもしれません。 原始地球と原始火星をひっくるめた生物圏が存在していたとしたら,とても面白いと思います。しかしこの問題についても, 残念ながら現在は答えを出すことは出来ません。ですから,この文章ではとりあえず地球で生物が誕生したものとして, 話を進めることにしましょう。

さて,図 4 には原始地球にまつわる歴史年表を示します。観測技術の発展により,現在宇宙の年齢は 136〜139 億歳であるとされています (Krauss & Chaboyer, 2003; Bennett et al., 2003; Spergel et al., 2003; Tegmark et al., 2004; Seljak et al., 2005; Dauphas, 2006; Tegmark et al., 2006; Spergel et al., 2007)。 それから約 100 億年の時を経た 45.7 億年前に原始太陽系星雲から,太陽系の天体の元となる粒子が凝固し始めました (Allègre et al. 1995; Amelin, et al., 2002)。一たび太陽系内に粒子が出来始めると, これらはすぐに凝集して微惑星を作ります。微惑星は互いに衝突してやがて惑星を作ります。地球もまたこのようにして形成され, 太陽系が出来てから約 3000 万年以内に月を伴い,マントルの内側に核を持つような天体にまで成長したとされています (Yin et al., 2002; Klein et al., 2002; Schoenberg et al., 2002b; Jacobsen, 2003)。

図 4:原始地球の歴史年表(単位は億年)

地球が出来てからしばらくの間,その表面は大変過酷な状況だったと考えられています。月のクレーターや月から来た隕石の研究から, およそ 39 億年前まで激しい天体衝突が続いたと見られています。そして 40〜38 億年前に最後の大規模な天体衝突のピーク (Late Heavy Bombardment: LHB)が起こり,月の表面は全面的に変成を受けたとされています(Tera et al., 1974; Cohen et al., 2000)。LHB が起こった原因としては,この時期に起こったと予想されている, 太陽系の外部惑星の大規模な軌道変化が指摘されています(Tsiganis et al., 2005; Gomes et al., 2005)。 ただしこの仮説の場合,天体衝突の原因は太陽系の中でも外側よりの微惑星と考えられますが, 月面クレーターのサイズ分布を見ると火星と木星の間にある主帯小惑星が原因とも指摘されています(Strom et al., 2005) ()。 いずれにせよ月面を襲った LHB は地球をも襲ったと思われ(Maher & Stevenson, 1988; Oberbeck & Fogleman, 1988; Sleep et al., 1989),実際に始生代初期の堆積岩中に,さらに古い時代の隕石衝突の証拠が残っています(Schoenberg et al., 2002a)。

これらの証拠から,地球に安定した海洋ができたのは約 39 億年前以降であろうと考えられます。 ただ地球への天体衝突はより小規模だった可能性もあります(Arrhenius & Lepland, 2000)。また 44.0 億年前からそれ以降の冥王代の鉱物に大陸地殻の証拠が見付かっていて,この事実はその時代に海洋が存在した可能性を示しています (Wilde et al., 2001; Mojzsis et al., 2001; Harrison et al., 2005; Amelin, 2005)。 同様に,43 億 5000 万〜40 億年前のジルコン鉱物の形成温度を推定した研究から,冥王代の地球にプレートテクトニクスが機能し, 現在の地球と同様の地殻や海洋が存在したことが予想されました(Watson & Harrison, 2005。ただし議論もあります;Glikson, 2006; Nutman, 2006; Watson & Harrison, 2006)。

しかし仮に冥王代に海洋が存在したとしても,天体衝突の影響で度々沸騰し,ともすれば干上がっていたことでしょう (Sleep et al., 1989; Nisbet & Sleep, 2001)。地球上で最古の岩石と呼ばれるアカスタ片麻岩(図 5)の形成時期が 40.0〜40.3 億年前であることも,これより以前の地球が過酷な状況であったことを支持しています(Bowring et al., 1989; Bowring & Williams, 1999)()。ただし最古の地層は約 38.2 億年前のグリーンランドの地層で, 生物の誕生は 38 億年前以降とも言われています (Moorbath, 2005b)。逆に Harrison et al. (2005) などは,これ以前の岩石は LHB によってではなく, 活発なプレート活動によって失われたと推測しており,海洋は形成後一度も干上がっていない可能性も残されています。 もし仮に LHB が生物を滅ぼすほど激しいものでなかったとすれば, 生物の誕生は最大で 45 億年前まで遡る可能性もあるということです。 なお,LHB で天体衝突が終了したわけではなく,30〜35 億年前頃まで減少しながらも頻繁に起こっていたと見られています (Sleep et al., 1989; Culler et al., 2000; Arrhenius & Lepland, 2000; Cohen et al., 2000)。 これもまた生物の起源や初期進化に影響を与えたことでしょう。

図 5:アカスタ片麻岩

生物の記録はこの直後より始まります。生物が無機炭素を固定して有機物を合成する際には,軽い同位体(12C) を選択的に取り込むことが知られています。そこで太古の堆積岩の中の 12C と,より重い 13C の存在比を調べて, 12C が濃縮されていることが示せれば,その時代に生物がいて炭素を固定していたことがわかります(Schidlowski, 1988; このような同位体比の証拠を同位体化石などと呼びます)。これまでにこの方法を用いて最古の生物の証拠が探索されてきましたが, その結果現在では,グリーンランドのイスア地域で発見された 37〜38 億年前の同位体化石が最古のものと考えられています(Mojzsis et al., 1996; Rosing, 1999)。この内,Mojzsis らが用いたサンプルに関しては,堆積岩ではなく変成岩であり, 生物の証拠を含んでいるとは考えられない,とする反論が出ており,論争が起こっています(Fedo & Whitehouse, 2002a; van Zuilen et al., 2002; Mojzsis & Harrison, 2002; Friend et al., 2002; Fedo & Whitehouse, 2002b)。 さらに Mojzsis et al. (1996) の用いたサンプルや周辺のサンプルに,そもそもグラファイトが含まれておらず, 従って生物の痕跡は全く見つからないという結果すら出ていましたが(Lepland et al., 2005), 別の研究者はグラファイトの存在を再確認しています(McKeegan et al., 2007; Eiler, 2007)。Rosing (1999) による 37〜38 億年前の同位体化石は,堆積岩中のサンプルであることには疑問はないそうで,より確かな最古の同位体化石といえます (Fedo & Whitehouse, 2002a; van Zuilen et al. 2002)。しかし,天体衝突による地球外物質の汚染の可能性を唱える研究者もおり, 確実な生物の証拠とは言えないのかも知れません(Schoenberg et al., 2002a; Brasier et al., 2004)。 Rosing & Frei (2004) は,イスア地域の地層に含まれる鉛同位体を調べ, 始生代にこの地域に酸化的な環境が存在したことを示しました。彼らは生物由来とされた有機炭素の量なども勘案し, この時代に酸素発生型の光合成を行うシアノバクテリアがいたのではないかと議論しています。 ただ,37 億年前というのはあまりに古すぎるため,シアノバクテリアのような派生的な細菌が存在したとはにわかには信じられません。 同位体化石を残した生物に関しては,今後の研究の進展が待たれます。

同位体化石のような生物の痕跡ではなく,形の残った生物の化石が見付かるのはさらに後の時代の地層からになります。 オーストラリアで発見された 34.6 億年前の微小な「化石」が,今のところ最古の化石記録と考えられています(Schopf & Packer, 1987; Schopf, 1992; Schopf, 1993; Schopf, 1999)。この化石を含む地層は,当初浅い海で堆積したと解釈されていましたが, 現在では熱水噴出孔の周辺との解釈が広まっています(磯崎 ほか, 1995; Brasier et al., 2002)。ただ,この「微化石」 についても,不定形の構造を含んでいることなどから,その正体が無生物的に出来た偽化石である可能性を指摘する声があります (Brasier et al., 2002; Garcia-Ruiz et al., 2003; Brasier et al., 2004; Brasier et al., 2006)。 ただ,彼らの反論は「疑問を呈する」という域を出ていないように思えますし, 化石の中にある不定形の構造も化石が後に熱変成を受けたために出来たと説明されています (Kazmierczak & Kremer, 2002)。これらの微化石が確かに不規則な炭素質から出来ている, すなわち生物と考えられるとの研究もでていますが(Schopf et al., 2002a; De Gregorio & Sharp, 2003), これだけでは微化石が生物由来である決定的な証拠とも言えません(Pasteris & Wopenka, 2002; Schopf et al., 2002b; Brasier et al., 2004)。ただ,この地層からの微化石の報告は他にも複数ありますので(Ueno et al., 2001), それらが全て間違っているとも考え難いのではないでしょうか。一部の研究では微化石中の炭素同位体比が調べられており, 13C が減少していることも示されています(Ueno et al., 2001)。それどころか, 石英中に閉じこめられた当時の大気がメタンを含み,同位体比からはそのメタンがメタン生成菌によって合成されたとも言われています (Ueno et al. 2006a。ただし議論もあります;Sherwood Lollar & McCollom, 2006; Ueno et al., 2006b)。

ほぼ同じ時期の地層から,硫黄の同位体化石の偏りも検出されており,約 35 億年前にすでに硫酸還元菌も存在したと考えられています (Shen et al., 2001)。南アフリカのやはり約 35 億年前の地層からは,炭素同位体の証拠をともなった, 溶岩中で生活する微生物の化石の報告もあります(Furnes et al., 2004)。オーストラリアのやや若い地層(約 34 億 3000 万年前) からのは真の微化石と言われる構造(Brasier et al., 2004)や, 光合成細菌などが層状に積み重なって形成されるストロマトライトという構造(Allwood et al., 2006)が報告されています。 南アフリカからはこれよりわずかに若い 34.2 億年前に浅海域に微生物マットを形成していたとする研究があり(Tice & Lowe, 2004), ここでは浅海域から深海域に至るまでの広い環境の地質が調べられています。なお,Tice & Lowe (2004) は彼らが調べた微生物は酸素非発生型の光合成を行う微生物だったと推測しています。現生の光合成細菌では Chloroflexus の仲間が最初期に分岐した真正細菌であると考えらていることも(Cavalier-Smith, 2002a),この推定を裏付けています。 なお,仮にこれらの微化石を全て偽化石とみなす場合,確実に現生生物と比較できる微化石は 32.4 億年前の糸状の構造になり(Rasmussen, 2000; Knoll, 2003。19 億年前の微化石が最古との意見もあります;Moorbath, 2005a), いずれにせよ 30 億年以上前に生物が誕生していたとの説が有力です。

これらの同位体や化石の証拠は少しずつ乏しくなりつつも,38〜37 億年前に至るまで連続して辿れるようです。 従って,生物は 38〜37 億年前より以前に既に誕生していたと考えてよいでしょう。

さて,では生物が生まれたと予想される始生代の地球はどのような環境だったのでしょうか。 大気,陸域,海洋に分けて考えて見ましょう。

地球は大量の微惑星の衝突によって形成されました(Matsui & Mizutani, 1977; 丸山 および 磯崎, 1998)。 この過程で揮発した物質や彗星・隕石の衝突によって出てくる揮発性成分(Owen, 1998), そして後に火山から放出されたガス(Kasting, 1993; Kasting & Brown, 1998)などが原始大気の主成分になったと考えられています。 具体的には二酸化炭素や窒素,水蒸気を主成分として含み,微量成分としては一酸化炭素や水素などを含んでいたと推定されています (Kasting, 1993)。また,メタンは原始大気中では不安定ですが,熱水噴出孔などから供給された可能性があります(Holm & Andersson, 1998)。 この様な大気は現在の酸素を多量に含む酸化型大気に対して,弱還元型大気と呼ばれます。さらに最近の研究からは, 原始大気中には現在よりも水素が蓄積しやすく,30% 以上もの水素を含んでいた可能性が指摘されています(Tian et al., 2005; Chyba, 2005)。 ただしこの仮説についてはまだ議論があります(Catling, 2006; Tian et al., 2006)。 どちらの仮説の場合でも重要なのは,原始地球には分子状の酸素はほとんど存在しなかったということです(Kasting & Brown, 1998)。 酸素は反応性が高いため,もし存在すると自然生成した有機物と反応して酸化させてしまいます。現在の大気と大きく異なり, 酸素が存在しなかった事が生物の誕生において必要だったのです。

大気から有機物が生成する過程では,もう少し複雑な構造の気体も大気中に供給される必要があります。 ホルムアルデヒドやシアン化水素がこれにあたりますが,いずれも(シアン化水素の生成には微量のメタンが必要) 上記の弱還元型大気から生成しうると考えられています(Kasting & Brown, 1998)。

次に陸域に関してですが,始生代の大陸についてはほとんど何もわかっていません。 最古の大陸地殻の証拠が 44 億年前に存在し(Wilde et al., 2001; Mojzsis et al., 2001; Harrison et al., 2005; Amelin, 2005),その他の証拠を総合すると 40 億年前には既に大陸と呼べるものが存在したようです(Holland & Kasting, 1992)。 ただし現在の大陸と比較すると小規模だったと思われています(Galer, 1991; Lowe, 1992)。 現存する大陸地殻の年代からの推定では,35 億年以上前は大陸の量は現在の 1% 未満だったと言われています(Lowe, 1992)。 しかし,干潟のような特殊な環境は生物の起源に関与した可能性が指摘されています(沢井 および 石神, 1991)。

前述したように,39 億年前にはすでに海洋も存在したと考えられています。しかし,海洋の環境についても, 陸域と同様に乏しい証拠しか残されておらす,主として理論的な側面から温度環境などが推測されています。 形成直後の地球表面は全体に溶融してマグマオーシャンに覆われていたと考えられますが(Matsui & Abe, 1986), 海洋が成立した頃にはすでに地表温度は 0〜100℃ 程度であったと言えます。 原始地球の温度を決定する要因としては,太陽光の強度と温室効果ガスのバランス,そして天体衝突などがあげられます (宮川, 2004)。

太陽光の強度は過去には現在に比べて弱かったと考えられており,温室効果ガスがなければ地球表面は容易に凍結したと考えられています (Kasting, 1993; Sagan & Chyba, 1997; Nisbet & Sleep, 2001)。メタンやアンモニア, 二酸化炭素が温室効果ガスとして働いたと考えられますが,現在の知識ではそれらの存在比についてはまるで理解できていません (Sagan & Chyba, 1997; 宮川, 2004)()。 天体衝突は海洋を一時的に激しく加熱します。巨大な天体の衝突があった場合, 海洋全体が沸騰する場合も考えられ(Maher & Stevenson, 1988; Sleep et al., 1989), 2000〜3000 年ほど厳しい環境が存続します(Sleep et al., 1989)。

地質学的な証拠からは少なくとも 35 億年前には地表温度が 57 ℃以下だったことが示唆され(Holland & Kasting, 1992), 酸素同位体比の研究からは先カンブリア時代の初期は 70〜80 ℃程度だったとも言われています(Karhu & Epstein, 1986; 宮川, 2004; Robert & Chaussidon, 2006)。また,最古の氷河の証拠が 25 億年前であることから, より古い時代の地球が極端な低温であったとは考えにくいとされています(Holland & Kasting, 1992)。 しかしいずれの研究も断片的な地質証拠に基づいており,地球全体の状態を長期間にわたって議論するには問題があります(宮川, 2004)。 海洋表面が常に凍結しており,天体衝突の直後や火山周辺などの特定の条件がそろった場所でのみ水面が姿を見せていたという考えも, 十分にありえたでしょう(Bada et al., 1994; Nisbet & Sleep, 2001)。

海洋の組成についても情報は多くありません。塩濃度については現在とさほど変わらなかったと推測されていますが, カルシウムやマグネシウムのイオン濃度については確かなことはわかっていません(Holland & Kasting, 1992)。 なお,pH については二酸化炭素の濃度によって決まるそうですが,その値は 5.8〜8.1 程度であったとされています (Holland & Kasting, 1992)。

火山活動が現在よりも活発だったため,熱水系も現在より遥かに多かったようです。これらは海洋にリン酸(Yamagata et al., 1978)や還元的なガス(メタンやアンモニア,水素;柳川 および 小林, 1988; Holland & Kasting, 1992; 柳川, 1996),触媒となる金属元素など(柳川 および 小林, 1988; 柳川, 1992),生物の誕生に重要な物質を供給したと考えられます。

以上,長々と書きかましたが,生物が生まれた頃の環境については正確なことは何一つ分かっていないというのが現状です。 しかし様々になされてきた推測に基づき,原始地球でどのようにして生物が誕生したのか, 無数の場所・条件について研究されています。次の章では,原始地球のどのような場所・条件で単純な有機物が生成したのか, あるいはしなかったのかについて紹介します。


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第3章:簡単な有機物ができてきた!

生物の原料となる有機物は,生物の誕生以前にすでに地球上に存在していたと考えられています。 というのも,生物は有機物抜きには存在できませんが,有機物は非生物的にも生成することが知られているからです。 原始地球でも実際に有機物が生成していたのかについては,実験的に検証することが出来ます。 初めにそのような実験を行ったのが Miller (1953) でした。 Miller (1953) は当時考えられていた原始大気の成分をフラスコ内に入れて放電を続けることにより,数種類のアミノ酸を得ました。 その後も同様のモデル実験を通じて無数の有機物が合成されています。

環境条件としては,熱水噴出孔を模したもの(Hennet et al., 1992; Yanagawa & Kobayashi, 1992; Marshall, 1994; Huber & Wächtershäuser, 2006)から,大気上層部の条件を想定したもの(Miyakawa et al., 2002 など)まで様々な条件が調べられ, エネルギー源も同様に太陽光(特に紫外線),放電,宇宙線,放射線,火山,加熱(熱水),天体衝突など幅広く調べられています (Miller & Urey, 1959; Mojzsis et al., 1999)。

ところで,原始大気からの有機物生成を考える場合,弱還元型大気と強還元型大気のいずれを原始大気のモデルとして採用するかによって, 大きく結果が異なることがわかっています。強還元型大気への放電の方が弱還元大気への放電に比べて より効率的にアミノ酸の合成が起こるという結果が得られています(Schlesinger & Miller, 1983)。 紫外線照射の場合も同様に,弱還元型大気からはほとんどアミノ酸が得られていません(Bar-Nun & Chang, 1983)。 ただし,宇宙線の照射によって弱還元型大気から有機物が生成する事が確認されており(Kobayashi et al., 1998; Kobayashi et al., 1999; Takahashi et al., 1999; Miyakawa et al., 2002), 弱還元型大気から全く有機物が得られないというわけではないようです。 別の考え方として,弱還元型大気のもとでは熱水噴出孔における有機物生成が重要な役割を果たしたとの見解も存在し (柳川 および 小林, 1988; Yanagawa & Kobayashi, 1992; 柳川, 1994; 柳川, 1996), 熱水噴出孔を模した条件での有機物生成も調べられています(Hennet et al., 1992; Yanagawa & Kobayashi, 1992; Marshall, 1994; Huber & Wächtershäuser, 2006)。

地球外の天体も有機物の供給源として注目されています(Oró, 1961; Anders, 1989; Nakamura-Messenger et al., 2006)。 隕石(図 6:Cronin, 1998)や微小隕石(Maurette, 1998),星間塵(Bernstein et al., 1999),彗星(Delsemme, 1998; Sandford et al., 2006)などから多くの有機物が検出されています。有機物の濃度に着目するのであれば, 彗星のような巨大な天体衝突が最も効率が良かったという意見もあり(斉藤, 2000), 必ずしも全ての天体が有効な有機物の供給源ではなかったかもしれません。 逆に巨大な天体が地球に衝突した場合,衝突時に内部の有機物が破壊される可能性も高くなるため, 星間塵の方が供給源としてより影響が大きかったとする見方もあります(Chyba & Sagan, 1992; Chyba, 1993)。 天体衝突は単に内部の有機物を運んだだけではなく,衝突に際して有機物の合成にも関与したと考えられています (Chyba & Sagan, 1992; Miyakawa et al., 2002)。 これは大気の酸化還元状態とは関係がないようで,やはり重要な有機物の供給源だったのかもしれません (Chyba & Sagan, 1992; Chyba, 1993; Miyakawa et al., 1999a; Miyakawa et al., 2002)。

図 6:アエンデ隕石の断面(炭素質コンドライトの例。ただしこの隕石からはアミノ酸は検出されていない)

ちなみに,生成した有機物は海洋中に蓄積していったと考えられます。しかし,有機物は化学反応によって分解していきます。 そこで有機物が蓄積するためには海洋の温度が低温であった方が望ましいとされています(Miller, 1998)。 また熱水系にはしばしば多孔質の鉱物が存在していますが,その微細な孔(< 1mm)に複雑な有機物が濃縮される現象が報告されており (Baaske et al., 2007),熱水系では有機物の合成と濃縮が並行して行われたのかも知れません。

さて,ここからはもう少し具体的に有機物の生成をまとめてみましょう。生物に不可欠な有機物を大雑把に整理しますと, タンパク質の構成単位であるアミノ酸,DNA や RNA の構成要素である核酸塩基や糖類(デオキシリボースまたはリボース), 細胞膜をつくる脂質などが挙げられるでしょう。糖類は核酸の構成要素としてだけではなく,生体活動のエネルギー源としても用いられます。 これらの化合物について,順に見ていきましょう。

まずアミノ酸ですが,これは比較的容易に生成したと考えられます。強還元型あるいは弱還元型の大気への放電 (Miller, 1953; Miller & Urey, 1959; Schlesinger & Miller, 1983; Miller, 1998)や宇宙線の照射 (Kobayashi et al., 1998; Kobayashi et al., 1999; Takahashi et al., 1999), 熱水噴出孔を模した実験(柳川 および 小林, 1988; Hennet et al., 1992; Yanagawa & Kobayashi, 1992; Marshall, 1994; Miyakawa et al., 2002; Huber & Wächtershäuser, 2006),隕石や微小隕石の成分 (Cronin, 1998; Maurette, 1998),星間塵(および彗星)の生成条件を模した実験(Kasamatsu et al., 1997; Bernstein et al., 2002; Muños Caro et al., 2002)や彗星そのもの(Sandford et al., 2006), 天体衝突を模した実験(Miyakawa et al., 1999b; Miyakawa et al., 2002) などの全てにおいて多かれ少なかれアミノ酸が得られています。これらの実験などで得られたアミノ酸の種類をまとめると,表 1 のようになります。 実験ごとに検出方法にも違いがありますので,必ずしも同じ基準で比較は出来ませんが,グリシン・アラニン・バリン・セリン・アスパラギン酸・ グルタミン酸などは比較的容易に生成し,一方でアルギニンなどは非常に生成しにくかったことが伺えます。 また,生成したアミノ酸においても,その生成量に大きな差があった事は注意する必要があるでしょう。

表 1:実験などで生成する生体アミノ酸の種類

放電(強還元型大気)*1グリシン,アラニン, バリン,ロイシン,イソロイシン,セリン,トレオニン,アスパラギン酸,グルタミン酸,プロリン
放電(弱還元型大気)*2グリシン,アラニン,セリン,アスパラギン酸, グルタミン酸
宇宙線*3グリシン,アラニン,バリン,セリン,トレオニン,アスパラギン酸, グルタミン酸,プロリン
熱水噴出孔*4グリシン,アラニン,バリン,ロイシン,イソロイシン,セリン, トレオニン,メチオニン,システイン,ヒスチジン,フェニルアラニン,アスパラギン酸,グルタミン酸,リジン,プロリン
隕石*5グリシン,アラニン,バリン,ロイシン,イソロイシン,セリン, アスパラギン酸,グルタミン酸,プロリン
微小隕石*6アラニン
星間塵・彗星*7グリシン,アラニン,セリン
天体衝突*8グリシン,アラニン,アスパラギン酸

*1: Miller, 1953; Miller & Urey, 1959; Miller, 1998。
*2: Schlesinger & Miller, 1983。
*3: Kobayashi et al., 1998; Kobayashi et al., 1999; Takahashi et al., 1999; Miyakawa etal., 2002。
*4: Hennet et al., 1992; Yanagawa & Kobayashi, 1992; Marshall, 1994; Huber & Wächtershäuser, 2006。
*5: Weber & Miller, 1981; Osawa, 1995。
*6: Maurette, 1998。
*7: Kasamatsu et al., 1997; Bernstein et al., 2002; Munõs Carlo et al., 2002; Sandford et al., 2006。
*8: Miyakawa et al., 1999; Miyakawa et al., 2002。

生物の起源を考えるにあたっては,アミノ酸の種類のみならず,光学異性体にも注目する必要があります。 グリシン以外のアミノ酸には D 型と L 型の鏡像異性体が存在します。L 型と D 型は一般的な化学的性質はほぼ同じですが, 生物の体内で重合したり,互いに相互作用する場合にはまるで異なる挙動を示します。 そのため生物はほとんど L 型のアミノ酸のみを用いています。 ところが自然生成したアミノ酸や隕石中のアミノ酸は L 型と D 型をほぼ等量含んでいます。 また実験で生成した産物中や隕石中には生物が通常タンパク質に用いていないようなアミノ酸も多々合成されます。 ということは生物が誕生する前にアミノ酸が 20 種の,しかも L 型のアミノ酸に絞り込まれたことになります(Weber & Miller, 1981)。 光学異性体の選別過程については次章でまた触れることになりますが,おそらくはわずかにあった存在比の偏りが増幅されて, 最終的に L 型のみに固定されたと予想されています。偏りが増幅される過程としては,次章で触れる重合過程も考えられていますが, 結晶化と結晶の破砕が同時に起こるような場合(例えば砂浜など)にはアミノ酸単独でも光学異性体の選別が起こることも報告されています (Frank, 1953; Noorduin et al., 2008; McBride & Tully, 2008)。

興味深いことに,隕石中のアミノ酸はわずかに L 型が多いことが知られています(Cronin & Pizzarello, 1997)。 この他にも円偏光や偏極電子など,偏りのあるエネルギー源(中性子星や超新星に由来する)のもとでアミノ酸生成や分解が起こると, 光学異性体の比に偏りが生じてくることもわかっています(斉藤, 2000)。

アミノ酸の自然生成の研究において,問題点をもう一点挙げるとすると,塩基性のアミノ酸が非常に合成されにくいということでしょう (Miller, 1998)。熱水噴出孔の模擬実験から例外的にリジンが検出されていますが(Hennet et al., 1992; Marshall, 1994), 原始地球の熱水系が正確に再現されているかどうか疑問が残りますし, 熱水系で合成されたアミノ酸が生物の誕生に貢献したのかどうかも未知数です。最初期の生物が塩基性のアミノ酸を使わずに誕生し, 後の時代に塩基性アミノ酸が利用されるようになった可能性も考える必要があるかもしれません。 塩基性アミノ酸以外にも,あまり大量に生成しないアミノ酸はいくつもあり,同様に生物が最初からは用いなかったかもしれません。 逆に生物が最初期に利用していたと考えて差し支えないのは,グリシン,アラニン,バリン,セリン,アスパラギン酸, グルタミン酸などでしょうか(Wong, 1988)。

アミノ酸の次に核酸(DNA や RNA)の構成要素について見ていきましょう。核酸はヌクレオチドを単位とした繰り返し構造で, ヌクレオチドが核酸塩基・糖・リン酸から出来ているのは第 1 章で触れました。 このうち核酸塩基の生成については,シアン化物やシアノアセチレンが関与していたとする研究が盛んに行われました。

アデニンは,シアン化物を水溶液中で加熱する事により得られています(Oró, 1960; Schwartz et al., 1984)。 この反応の中間体とシアン,シアン酸などを反応させることによりグアニンも生成します(Sanchez et al., 1966)。 これらのシアン化物の重合反応はホルムアルデヒドなどによって触媒されるという研究もあります (Schwartz & Goverde, 1982; Schwartz et al., 1984)。 シトシンはシアノアセチレンとシアン酸を水中で反応させる事によって(Sanchez et al., 1966; Ferris et al., 1968), ウラシルはシトシンの加水分解によって生成します(Ferris et al., 1968)。 シトシンの生成経路としてはさらに尿素とシアノアセトアルデヒドを濃縮させる方法も知られています(Robertson & Miller, 1995)。

しかし第 2 章でも軽く触れましたが,原始地球においてシアン化水素などがどの程度存在したのかはよく分かっていません (おそらく存在する事はしたでしょう)。核酸塩基の生成には高濃度のシアン化物が必要とされていますが, 例えば干潟などの環境でもそこまでの濃縮が起こったとは考えにくいところがあり,熱水系の多孔質の鉱物への濃縮など (Baaske et al., 2007)特定の条件下でのみ核酸塩基の合成が起こった可能性はあるでしょう。

そこで,核酸塩基の供給にも天体衝突が大きく関与したとの考え方も出てきます。還元的な天体がシアン化合物を供給し, ここから核酸塩基が生成した可能性です。シアン化水素とホルムアルデヒドは,星間分子としても(国立天文台, 1999) 彗星中にも確認されていますし(Delsemme, 1998),シアノアセチレンも星間分子として知られています(国立天文台, 1999)。 天体からは,核酸塩基が直接供給された可能性もあり,実際に隕石中からアデニン,グアニンのプリン塩基と(Stoks & Sanchez, 1981), ピリミジン塩基の中では微量のウラシル(Stoks & Sanchez, 1979)が検出されています。天体衝突のエネルギーによっても核酸塩基, 特にピリミジン塩基が生成したことを示唆する実験もあります(Miyakawa et al., 1999a; Miyakawa et al., 2002)。

このように,天体衝突が起きれば一通りの核酸塩基はそろうと見られており,これが有力な供給源と考えられます。 しかしこの他にも弱還元型大気への宇宙線照射の実験からもウラシル(Kobayasi & Tsuji, 1997; Miyakawa et al., 2002) やアデニン,グアニン(Miyakawa et al., 2002)が生成しており, さらに新しい生成過程が見つかれば,天体衝突が必ずしも重要ではなかったことが示されるかもしれません。

核酸糖類(リボース,デオキシリボース)については,はたして効率よく生成したのかどうか疑問がもたれていました。 リボースなども含めた一般的な糖類については,ホルムアルデヒドを原料に粘土触媒の存在下(Gabel & Ponnamperuma, 1967; Reid & Orgel, 1967; Cairns-Smith et al., 1972; Schwartz & de Graaf, 1993),あるいは紫外線やガンマ線などの照射により (Ponnamperuma & Mariner, 1963),生成することが知られており(Shapiro, 1988),隕石からも検出されました (Cooper et al., 2001)。つまるところ,ホルムアルデヒドさえ存在すれば問題ないように見えますが,実はそうではありません。

糖類には異性体が非常に多いため,上記の反応で生成する糖類にはリボースは割合的にほとんど含まれていません(Shapiro, 1988)。 しかもリボースは安定性が低く,容易に分解してしまうのです(Larralde et al., 1995)。 そこで,研究者によっては最初期の生物が核酸糖類としてリボースやデオキシリボースの代わりに別の物質を用いたと考えたり (Joyce et al., 1987; Nielsen et al., 1991; Wittung et al., 1994; Eschenmoser, 1999; Joyce, 2002b), リボースと少数の糖類だけが選択的に合成される過程があったと仮定して,実験的に検証されています (Müller et al., 1990; De Graaf et al., 1997; Ricardo et al., 2004)。 しかしながら,このような代替物あるいは選択的合成機構が,実際に生物が誕生するに当たって利用されていたのかどうかを調べる術は, 現在のところありません。また,現在の生体において 1 分子の核酸は 1 種類の糖からのみできていますが, 原始地球において 1 種類の糖を大量に手に入れるのが難しかったのだとすると, 黎明期の生物が複数種の糖からなっていた可能性も排除できないように思われます。

核酸のもう一つの要素のリン酸については,無機物として第 2 章で軽くふれており,ここでは触れる必要はないでしょう。

最後に,細胞膜を構成する材料となる膜脂質について紹介しましょう。 膜脂質の一部に組み込まれる直鎖脂肪酸はこれまでモデル実験からは充分に合成されていないそうです(Miller, 1998)。 しかし膜構造を作るためには親水部分と疎水部分を両方とも持っているような,適切なサイズの両親媒性分子が存在すれば良いと思われます。 そこで物質の種類を問わずに探してみると,隕石から抽出した物質が,自己集合して膜胞構造を作るような現象が見つかっています (Deamer, 1985; Deamer & Pashley, 1989)。そして巨大隕石の衝突が起こったとして, 高温高圧の衝突地点でこれらの両親媒性分子が溶け出してくることまでが調べられています(Mautner et al., 1995)。 さらに星間塵のモデルからも同様の膜構造が得られています(Dworkin et al., 2001)。

以上のように,全てとは行きませんが重要な生体分子は何らかのモデル実験から得られていることがわかります。 しかし現在の知見では,主要な生体分子の得られる場所は限られており,必ずしも互いが近くで合成されたかどうかが示されていません。 しかも原始大気の成分など未だに前提条件がまるで確定されていないために,問題が複雑になっています。 色々なシナリオの中では,天体衝突により供給・合成される有機物は最も多様性に富んでおり, しかも有機物が比較的高濃度で得られることから(斉藤, 2000),最も魅力的な有機物の供給源に思えます。 もちろん熱水系における有機物の濃縮も有力な供給源と言えるでしょう(Baaske et al., 2007)。 ただ原始大気が強還元型であった可能性が復活してくると(Tian et al., 2005), この場合は海洋が有機物に満ちた「生命のスープ」状態であった可能性も考えられます。 いずれが真実を捉えているのかは今後の研究が明らかにしてくれることでしょう。

最終的には,地球上がどのような環境であって,その中のどこでどの有機物がどの程度得られたのか, 生成した有機物がどのように相互作用したのか,までが明らかになってほしいものです。 しかし原始地球の手がかりがほとんど手に入らない現在においては, 様々な実験を繰り返し,その結果どのような有機物が得られるのか,というデータを蓄積していくしかありません。 従って,この章では原始地球に存在した有機物の種類や量・濃度についてこれ以上深入りすることは出来ません。 この点は保留し,第 4 章では自然生成した単純な有機物が以下にして複雑なポリマー(重合体)へとつながって (重合して)いったのかを見ていきたいと思います。


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第4章:そして分子は長く繋がって

細胞を構成するタンパク質や核酸は,それぞれアミノ酸とヌクレオチドの多量体です。 そしてヌクレオチドはリボースまたはデオキシリボースに核酸塩基とリン酸が結合した構造です。 これらは前の章で紹介した単純な有機物が結合して生成したと考えられますが,この過程は原始地球で起こったのか, 起こったとしてどのような環境で起こったのかについても盛んに研究がなされています。

現在,このような多量体は隕石などから検出されておらず,従って原始地球に存在した証拠は模擬実験から得るしかありません。 ここで扱う有機物の重合は基本的に脱水縮合反応です。生物が水中で誕生したとすると, 水中で脱水反応を行うという難問にぶつかります。では,一体どのような環境であれば重合反応が起きたのでしょうか。 幾つか候補として指摘されているのは,干潟,火山の周辺,熱水噴出孔,そして海洋域(高温だったと考えた場合)などです。 エネルギーが存在する場所,あるいは濃縮・乾燥が起こる場所などが想定されていると言い換えても良いでしょう。 これらの環境を模した実験から有機物の重合が研究されており,現在一定の成果が得られています。 ここではまずアミノ酸からのポリペプチドの合成から見ていきましょう。

アミノ酸の重合はアミノ酸生成と同様にさほど困難ではなかったようです。一部の例を紹介しますと, Ito et al. (1986) は数種のアミノ酸の混合液を繰り返し乾燥・水和させることによってポリペプチドの生成を見ています。 最近では Oba et al. (2005) がやはり同様の実験から加水分解活性のあるポリペプチドを得ています。 また熱水噴出孔の周辺を模した条件の下で短いペプチドが合成することも実験的に確かめられています (Imai et al., 1999; Futamura & Yamamoto, 2005)。その他にもアミノ酸の重合に関しては様々な実験が行われています (沢井 および 石神, 1991)。

ペプチド結合の形成を触媒する物質についても研究が進められており, モンモリロナイト(montmorillonite)という粘土鉱物がアミノ酸の重合を触媒することや(Ferris et al., 1996), 火山ガスの一酸化炭素(CO)と (Fe, Ni)S が共在する条件で,あるいはやはり火山ガスの硫化カルボニル(COS)が存在する時に, ペプチド結合が形成されるとする研究も行われています(Huber et al., 2003; Leman et al., 2004)。

模擬実験から合成される重合体は,さらに凝集して球状の構造体をとるものも多数知られています。 主として海水を模した溶液中でアミノ酸を 100 ℃前後で加熱することによって得られる構造体は,中身が詰まったマリグラヌール (marigranule)や,中空のマリゾーム(marisome)と呼ばれ(Yanagawa & Egami, 1978; Yanagawa et al., 1980; Yanagawa et al., 1988),また 300 ℃程度で出現するミクロスフェア(microsphere)もペプチド様の物質を含む球状構造です (Yanagawa & Kojima, 1985; Yanagawa et al., 1988; Yanagawa & Kobayashi, 1992)。

報告されているペプチド(様化合物)の重合度については,数アミノ酸程度(Imai et al., 1999) から数十アミノ酸程度(Ferris et al., 1996)と条件次第のようですが, 生物の合成するタンパク質のような数百アミノ酸からなるペプチドを得た実験はないようです。 特にミクロスフェアなどでは必ずしもペプチド結合から重合体が出来ているわけでもないようです(Yanagawa et al., 1988; Yanagawa & Kobayashi, 1992)。つまり,原始地球,おそらくは原始海洋で生成したペプチドは,必ずしも現在のタンパク質と同じものではなく, 化学的には異なったものだった可能性があります。

問題になるのはこれらの原始的なペプチドの触媒能ですが,タンパク質のように特異的かつ高効率だったとは考えにくいでしょう。 しかし低レベルの触媒活性であれば実際にペプチド結合の加水分解活性などが認められており(Oba et al., 2005), 極端な例では,2 アミノ酸からなるジペプチドであっても触媒活性を持ちうることが示されています(Shimizu, 1995; 清水, 1996)。 また自然生成するペプチドは球状構造など高次構造をとることによって,化学反応の「場」を提供する役割も果たすことが出来たでしょう。 特にマリゾームのような膜構造や,脂質とペプチドからなるような膜構造は, 細胞膜の前身として生物が誕生する前の世界で機能していた可能性があります(Yanagawa et al., 1988)。

ペプチドの合成については最後にもう一つふれておかなければならない問題があります。 生体のアミノ酸は L 型の光学異性体のみからできていますが,原始地球に存在したと考えられるアミノ酸は,わずかに L 型が多かったとしても (Cronin & Pizzarello, 1997; 斉藤, 2000),基本的には L 型と D 型を同程度含んだラセミ体だったということです (ただし最近では光学異性体の選別が起こりえたとの見方もある;Frank, 1953; Noorduin et al., 2008; McBride & Tully, 2008)。 もちろん RNA からの翻訳機構が成立する前の前生物的ペプチドが両方の異性体を含んでいた可能性も充分にありますが, 自然生成するペプチドが光学活性を持っていた可能性も考えられます。興味深い系としては, 両親媒性の分子と結合したアミノ酸が水面に配列することにより,同じ光学異性体の間でのみペプチド結合が生じ, 同じ異性体のみを含んだペプチドが合成されるというものがあります(Zepik et al., 2002)。 この原理は必ずしも水面に限定されるものではないため,例えば膜胞の表面や鉱物表面といった界面に, アミノ酸やアミノ酸を含んだ化合物が配向して,光学的に活性なペプチドが生成した可能性も検証に値することでしょう。

このように,ペプチドや類似物質に関しては前生物的に生成し,生物の誕生に際して何らかの関わりを持った事が示唆されていますが, 核酸の方については幾つもの困難が指摘されています。

生物が最初に用いた核酸は RNA だったと考える研究者は少なくありません。現在生物が利用する核酸には DNA と RNA がありますが, 後述する RNA ワールド仮説の後押しもあって RNA の生成過程がより熱心に研究されています。 また,最初期の核酸の糖類が絞り込めないために RNA をモデルにして研究しているという側面もあります。

RNA の構造単位はリボヌクレオチドで,リボヌクレオチドはリボース・リン酸・核酸塩基(現在の生物ではアデニン・グアニン・ ウラシル・シトシン)からなっています(図 7)。核酸塩基とリボースが結合したヌクレオシドは,例えばプリン塩基について, 塩基とリボースを乾燥させて加熱することで生成していますが,水中での収量は遙かに少ないようです(Fuller et al., 1972) ()。 さらにヌクレオシドをリン酸化する実験では,例えば縮合剤を加えることによってウリジン(ウラシルを含んだヌクレオシド) のリン酸化などが報告されていますが,やはり収量は少ないようです(Lohrmann & Orgel, 1968)。

図 7:RNA の構造

実験で得られるヌクレオチドの収量は少なく,原始地球でのヌクレオチド生成の様子は不透明です。この原因として考えられるのは, そもそも最初の核酸様物質は RNA とは全く別の,より生成しやすい分子を単位にしていた可能性や, 想定できる実験条件があまりに多様であるため,最適な条件で実験が行われていない可能性があると思います。

もっともリン酸が供給される条件は限られています。興味深いことに,生体と海水の元素組成を比較すると, リンは生体に比べて海水に含まれる量が一段と低いことが分かります(Haraguchi, 1999; Haraguchi, 2004; Millero, 2006)。 従って最初に核酸が生成した場所は,リン酸が通常よりも濃縮された場所だったと考えられます。 第 2 章で触れたように,ポリリン酸は火山ガスから供給されると見られています(Yamagata et al., 1978)。 火山周辺,熱水系の周辺のような環境を想定した実験から,ヌクレオチド生成に適した条件を見つけていく必要があるでしょう。

さらにヌクレオチドが生成したとしても,それが重合しなければ RNA は生成しません。RNA の生成実験も様々に行われていますが, ヌクレオチドの活性化にはポリリン酸の他にイミダゾールなど様々な化合物が用いられ,活性化の研究も行われています (Lohrmann & Orgel, 1973)。活性化されたヌクレオチドの重合には触媒の存在が重要な役割を果たしたと考えられており(Ferris, 2006), 実際にモンモリロナイトという粘土鉱物(火山灰の風化により生成するため,原始地球にも豊富に存在したとされる) が触媒として働くと,最大で 30-50 量体の RNA オリゴマーが生成しています(Ferris et al., 1996; Ferris, 2006)。 金属イオンも種類によっては 20 量体弱の RNA オリゴマー生成を触媒するとのことです(Ferris, 2006)。

しかし問題はまだまだあります。ヌクレオチドにはリボースが D 型の異性体と L 型の異性体があるはずです。また, ヌクレオチド同士の結合様式もリン酸がリボースの 3' 位につくものと 2' 位につくものがあります(図 8)。 機能する RNA 分子が出来るためには,このような異性体が混在していては問題があるため, 一つの,あるいはせめて少数の異性体が選択的に結合することが望まれます。 生物は D 型のリボースを核酸の糖として利用し,その 3' 位と 5' 位にリン酸を結合させます()。 モンモリロナイトは異性体を選別する能力もあるようで,前生物的な触媒として期待されています(Ferris, 2006)。 しかしその一方で塩基がアデニンの場合には同じ光学異性体のリボースのヌクレオチド同士の結合が,ウラシルの場合には D-リボースと L-リボースが混在した結合が好まれるとの話もあり(Ferris, 2006),均一な異性体からなる RNA オリゴマーは簡単には生成しなかったと思われます。異性体の選別は RNA の複製が進化するときに起こったのかも知れません。

図 8:RNA の結合様式

RNA 生成の各過程に収量の問題や条件の問題がある上,数十量体の RNA オリゴマーでは生物の遺伝子として短すぎます。 現在知られている限り,もっとも小さいゲノムを持った生物は "Carsonella ruddii"(ガンマプロテオバクテリア) という昆虫の細胞内共生菌の一種で,15 万 9662 塩基対のゲノムを持っています(Nakabachi et al., 2006)。 100 塩基未満の RNA オリゴマーと 16 万塩基対のゲノムとの間には相当な溝があります。 生物の誕生の過程ではこの間に何らかの中間段階があったと考えられます。その最初の過程として言われているのは RNA ワールド仮説です。 これは RNA が遺伝子として働くと同時に,RNA を複製する酵素もまた RNA が兼ねていたとする仮説です(Gilbert, 1986)。 RNA ワールド仮説の検証は盛んに行われており,同時にその妥当性や起源には疑問の声も上がっています。 第 5 章では RNA ワールド仮説を紹介すると共に,その欠点なども議論してみたいと思います。


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第5章:RNA が全てを握っていたのか?

現生の生物が長鎖の核酸を合成できるのは DNA や RNA の合成酵素を持っているためです。 しかしタンパク質の酵素は核酸の配列情報を基に合成されるため, 核酸とタンパク質の起源がどちらにあるのかははっきりしませんでした。 しかし触媒として機能する RNA(リボザイム)が発見されると,RNA 合成反応の触媒と遺伝子を兼ねた RNA が生物の起源に関わったとする RNA ワールド仮説が注目されるようになりました(Gilbert, 1986)。 すなわち,RNA が自己複製する仕組みを検証する研究が盛んに行われるようになりました。

なお,前章でも一部紹介したように,核酸には様々な種類や異性体が存在します。 そのうち RNA 以外の核酸の寄与については未知数ですが,実験的に検証するに当たっては RNA をモデルとして研究が進められています。

さて,第4章の議論を踏まえると,短鎖の核酸(オリゴヌクレオチド)は原始地球に生成したと想定されます。 核酸複製の起源においては,このようなオリゴヌクレオチドまたはヌクレオチドの単量体が基質となり, 別のオリゴヌクレオチドを鋳型にして複製反応が進んだと考えられます。 オリゴヌクレオチドの方がヌクレオチドの単量体に比べて,より安定に鋳型と結合できたと思われますので, 初めはオリゴヌクレオチド同士の結合によって,長鎖の核酸が合成されていたと推測されます。

オリゴヌクレオチド同士の結合反応の触媒(リガーゼ)の候補には,鋳型それ自身が考えられます。 現生の生物からもそのような RNA 配列が知られていますし(Doudna & Szostak, 1989), 試験管内進化という手法によってもリガーゼ・リボザイムが得られていて(Bartel & Szostak, 1993; Ekland et al., 1995), 詳細な研究が進められています(Robertson & Scott, 2007)。

ここで試験管内進化の手法について簡単に解説が必要かもしれません。 これは特定の物質(例えば RNA)と強く相互作用(あるいは結合)するような RNA 配列を選別・進化させる方法です。 図 9 に模式的に示したように,両側に選別のための配列を,内部にランダムな配列を持った RNA 分子を無数に用意します。 次に 3' 末端(B)と相補的に結合する分子だけを選別し,引き続き 5' 末端(A) と相補的に結合する分子だけを選別します。すると残った分子は 5' 端の断片と 3' 端の断片が矢印の部分で結合したものになるはずです。 ランダム配列の部分にリガーゼ活性があれば,5' 端と 3' 端が結合する可能性は上がりますので, この方法でリガーゼ活性を持った配列が濃縮できます。さらに得られた産物に変異を入れながら増幅し, 同じ操作を繰り返すことでよりリガーゼ活性の高い配列も得ることができるという仕組みです。 ちなみに選別の方法を工夫することで,特定の物質に結合する能力を持った RNA も得られます。

図 9:試験管内進化に使われる RNA

試験管内進化の結果得られた配列,あるいはこれを改変した配列から作られたリガーゼはタンパク質の酵素に準ずる活性を持っており, 自己複製の起源には十分だったと思われます。中にはシトシンを含まないものや(Rogers & Joyce, 2001), ジアミノプリンとウラシルのみからなるリガーゼ・リボザイム(Reader & Joyce, 2002)なども合成されており, 配列にはかなりの可塑性があることが示されています。

一方で,合成されたリボザイムの多くは「自己複製」を行う能力を厳密には持っていません。 A というリボザイムと鋳型を兼ねた分子が,相補鎖の B と C という核酸断片を結合させ,BC を合成する反応を考えましょう。 このとき普通,BC は A とは違う配列です。そして BC が A と同様のリガーゼ活性を持っていない限り, いつまでたっても A は複製されないのです(図 10a)。

自己複製が起こるためには複製される BC もリガーゼ活性を持つ必要があります。最もシンプルな場合では, BC すなわち複製産物が A と同じ配列を持つ場合です。相補鎖が同じ配列になるような配列を自己相補的な配列と呼びますが, このような自己相補的なリガーゼ・リボザイムこそが,最初の複製単位としては理想的と考えられます(図 10b)。 自己相補的なリガーゼによる複製の実験も既に報告されていますが,この実験では二本鎖の形成に関わらない塩基が多数あり, 完全に配列依存的な自己複製とは言えません(Paul & Joyce, 2002)()。

図 10:RNA 断片の複製

さらにこの反応の際に,B や C の末端が A の端より長くてもかまわないはずです。このときには, 反応産物としてより長鎖の RNA が生成するでしょう(短い場合も当然考えられます)。 極端な例としては,部分的に被った自己相補的配列による重合反応の実験がありますが(図 11;Bolli et al., 1997), これは反応基質が一種類でなければ起こりませんので,あまり現実的な仮定ではないでしょう。

図 11:オリゴヌクレオチドの重合と伸張

ここまでは核酸が鋳型と触媒を兼ねる場合を考えてきましたが,これでは別の機能を持つのは困難です。 もしそこに,自分自身だけではなく,別の分子上に配列した核酸断片を結合させるようなリガーゼが出現すれば, 様々な配列・機能を持った核酸が増殖できるようになるでしょう。

このようなリガーゼの候補としては,やはり核酸とペプチドが考えられます。 核酸の場合,他の分子の結合を触媒するリガーゼ・リボザイムは天然には知られていません。 しかしながら天然のリボザイムや試験管内進化で得られたリボザイムを改変することによって様々なリガーゼが得られています (Doudna et al., 1991; Green & Szostak, 1992; Ekland et al., 1995)。 鋳型とリガーゼを兼ねたリボザイムの中から他の分子の反応を触媒するリボザイムが進化してきたとすれば, どのようにして出現したのかについても説明できるでしょう。

しかしこの仮説にも問題点があります。現時点では少なくとも短鎖の RNA ではこのような性質を持つものは知られていません。 長鎖の RNA の場合には,今度はリガーゼそのものの複製が困難になります。分子が長ければそれだけ正確な複製が困難ですし, そもそも自然に出現する確率も低くなります。比較的短鎖で正確な複製能力を持ったリボザイムが存在すればよいわけですが, 果たして自然界に存在し得たのかは疑問です。

機能を持ったリボザイムが一般に長鎖(100 ヌクレオチド以上)であることから,このようなリボザイムの自然発生には疑問が残っています (清水, 1996; Strobel, 2001)。氷上での反応であれば長鎖のヌクレオチドも生成可能で,リボザイムも機能できる, とする興味深い仮説も提示されていますが(Vlassov et al., 2005),原始地球の温度について定説がなく(第 2 章), 真偽のほどはわかりません。

厳密な RNA ワールド仮説に従うのであれば,全てをリボザイムで説明したくなるわけですが, 前章で,原始地球上ではポリヌクレオチドよりもポリペプチドの方が生成しやすかったと議論しました。 とするとペプチドがリガーゼとして働いた可能性も考慮しなければなりません。自然界からは,ある種のウイルスから RNA リガーゼが報告されています(Kleppe et al., 1970; Silber et al., 1972)。 ただしこれらはいずれも DNA の鋳型上に並んだ RNA の結合を触媒するもので,ここで想定しているものとは幾分異なってはいます。

ペプチドが RNA 複製におよぼす触媒効果を調べた研究はあまりありません。しかし原始地球を模した環境で合成した (加熱重合させた)ポリペプチドが,むしろヌクレオチドの重合を阻害するという実験が報告されており(Kawamura et al., 2002; Kawamura & Kuranoue, 2005),ポリペプチドは原初のリガーゼにはなり得なかったのかもしれません。

さて,ここまでは核酸合成の基質がオリゴヌクレオチドだと仮定してきましたが, オリゴヌクレオチドを基質にした場合には利点と欠点が考えられます。 利点としては光学異性体の選別が挙げられています。オリゴヌクレオチドが均一な光学異性体でできている方がより効率よく重合される, との結果がピラノシル RNA を用いて示されています(Bolli et al., 1997)。 これは光学異性体がそろっていた方が,より安定して鋳型上に配向できるためでしょう。

一方で,基質がオリゴヌクレオチドの場合は複製が不正確になるおそれがあります(James & Ellington, 1999)。 配列の大部分が正しく塩基対形成されていれば,不正な塩基対がわずかに含まれていても反応が進行してしまうと考えられるためです。 そこで長鎖の RNA が正確に複製できるようになるためには,基質にヌクレオチドの単量体を用いた重合反応の進化が必要と考えられます。 このような,鋳型上のポリヌクレオチドにヌクレオチドを一つずつ付加させる反応を触媒する酵素をポリメラーゼと呼びます(図 12)。

図 12:リガーゼとポリメラーゼ

試験管内進化で得られたリガーゼ・リボザイムを改変することにより,既にポリメラーゼ・リボザイムが得られています (Ekland & Bartel, 1996; Johnston et al., 2001)。このリボザイムは未だ自分自身と同じ長さの RNA を正確に複製するには能力不足ですが,生物の起源の際にリガーゼ・リボザイムからポリメラーゼ・ リボザイムが進化した可能性は十分にあるでしょう。

さて,RNA の複製が安定して起こるためには,基質や触媒が互いに近くに存在しなければなりません。 リガーゼであれポリメラーゼであれ,合成した産物が自分自身の近傍に存在しない限り,継続的な複製はできません。 もし鋳型・産物が自由に水中に存在していたとすると, 両者は自然に拡散してしまうため再び会合して次の増幅反応を起こせる確率はほとんどありません(図 13a)。 シミュレーションの研究でも,複製触媒(リガーゼまたはポリメラーゼ)が近傍に束縛され続けない限り, 無関係な RNA 断片ばかりが複製されて,複製触媒自身の複製がほとんど進まないまま消滅してしまう, という結果が予想されています(Szabo et al., 2002)。

そこで触媒,核酸が狭い範囲に束縛されている必要がありました。もし複製触媒が特定の区画に閉じこめられていれば, 反応産物が拡散することなく鋳型の複製に再び関わることができるため,反応が継続的に起こせると考えられます(図 13b)。 このように,反応産物を束縛する機構としては,例えば鉱物の表面を想定することもできますし (Szabo et al., 2002),両親媒性分子の膜胞,核酸の凝集体などのアイデアが提出されています(Joyce, 2002b)。

図 13:複製と区画化

特に何らかの膜胞が複製系の起源に関与した,とする仮説は,細胞膜の起源にも直結する考え方として興味深いものがあります。 膜を構成する分子が適切なサイズであれば,すなわち膜の厚さが適当な暑さであれば,複製酵素は内部に閉じこめられるものの, 反応の基質(より低分子のヌクレオチド単量体,またはオリゴヌクレオチド)は出入りが出来る,という膜胞が合成できるそうです (図 14;Deamer, 1998)()()。このような膜胞は外部から基質を取り込み続けることで, 内部で長鎖の核酸を半永久的に増殖させることができると考えられます。さらに,膜胞同士の融合や,膜胞の分裂によって, 内部の複製酵素を膜胞同士で交換・統合したり,系全体が増殖することも可能になります(Szostak et al., 2001)。 系全体の増殖には膜胞の成長も必要ですが,これは新規に膜胞同士の融合によって起こったのでしょう。

図 14:理想的な膜胞モデル

自己複製系の進化は,遺伝子である核酸,触媒である核酸または他の分子,そして系を維持するための膜胞, という要素の共生進化というモデルで考えることができるかと思います。 しかし RNA にせよ,低分子のオリゴペプチドにせよ,その触媒能力には限界があったと思われます。 現在の生物ではタンパク質,あるいはタンパク質と RNA の複合体が触媒として働いています。 これは高度な触媒能はタンパク質抜きには実現できなかったためでしょう。 次章ではタンパク質の合成系がどのようにして進化してきたのかについて,簡単なシナリオを紹介したいと思います。


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第6章:核酸とタンパク質の協力

RNA ワールドにおいては RNA と,自然生成した分子(例えばオリゴペプチド)が触媒として働いていたと考えられます。 リボザイムが活性部位などにオリゴペプチドを取り込んで機能していた可能性はあるかもしれませんが, 特定の配列を持ったポリペプチドを量産できるようになるまでは,ポリペプチドが高度な触媒能を持つことは出来なかったでしょう。 高度な触媒能を持ったポリペプチド,タンパク質(酵素)は,RNA 上の遺伝子配列を基に合成されるようになって初めて出現したと思われます。 現在知られている酵素は化学反応を特異的,効率的に触媒し,そのことで代謝の流れを精密に制御しています。 そして複雑に制御された代謝系こそが生物の特徴です。この点から見てもタンパク質合成系の進化は重要な意味を持っていました。

生物がタンパク質を合成する仕組みを簡単に説明すれば,既に合成したポリペプチドにアミノ酸を一つずつ付加していく反応, と言うことができます。この伸長反応はタンパク質と RNA からなる巨大な複合体であるリボソーム上で行われ, RNA ポリメラーゼ,mRNA,tRNA,アミノアシル tRNA 合成酵素(aminoacyl-tRNA synthetase: aaRS),伸長因子, そして多数の制御因子などが関与しています。これらの因子が全て同時に進化したはずはありませんから, おそらく遙かに単純な機構から徐々に因子が増えていって,効率のよいタンパク質合成系が進化してきたのでしょう。

現在のタンパク質合成の過程を極めて単純化すると,4 つの重要なステップを認めることが出来ます(図 15;Joyce, 2002a)。

図 15:タンパク質の合成

まずアミノ酸が反応しやすいように活性化されます。ATP のリン酸部分がアミノ酸のカルボキシル基に結合し, アミノアシルアデニレートとなります。次にアミノアシルアデニレートは tRNA の 3' 末端に結合し,アミノアシル tRNA が生成します。 この反応の触媒が aaRS で,aaRS が対応するアミノ酸と tRNA を識別し,正しい組合せのアミノアシル tRNA を合成します。 ここから先の反応は基本的にリボソームと呼ばれる,タンパク質と RNA の巨大な複合体の上で行われます(図 16)。 リボソーム上には tRNA が落ち着ける場所が 2 箇所あります。先にリボソーム上についている mRNA がガイドの役割を果たし, 既に合成されたペプチドを結合したペプチジル tRNA とアミノアシル tRNA が並べられます(図 16a)。 そしてペプチジル tRNA からペプチド鎖がアミノアシル tRNA に渡され,新しいペプチド結合が出来ます(図 16b)。 ペプチド鎖がはずれた tRNA はリボソームから離れ,その位置に新しいペプチジル tRNA が移ります(図 16c)。 これに伴って新しいアミノアシル tRNA が mRNA の配列に従ってリボソーム上に結合し,初めの状態に戻ります(図 16d)。

図 16:タンパク質の合成

この過程は RNA(tRNA)またはペプチジル RNA にアミノ酸またはペプチド鎖を付加する過程と見なすことが出来ます。 RNA ワールド仮説を踏まえて考えるならば,もともとは RNA を修飾する仕組みだったのではないでしょうか。 RNA を修飾する利点についてはいくつもの可能性が指摘されています(Joyce, 2002a)。 例えば RNA の複製開始のためのラベルになった可能性(Weiner & Maizels, 1987; Orgel, 1989; Maizels & Weiner, 1999), RNA の安定性を増加させた可能性(Orgel, 1989),リボザイムの機能を向上させた可能性,鉱物表面への吸着を促進した可能性 (Orgel, 1989),膜胞へのアンカーとして働いた可能性,などが考えられるかと思います。

さて,このようなタンパク質合成系はどのようにして誕生したのでしょうか。タンパク質の合成系は極めて複雑な系なので, 実際には段階的に進化したと考えられます。そこで上述の 4 つのステップについて順に考えてみましょう。

まずアミノアシルアデニレートの生成ですが,RNA ワールドにおいてアミノアシルアデニレートが単独で役割を持っていたとは, あまり考えられていません()。とすればアミノアシルアデニレートを合成するリボザイムがあったと考えるよりは, アミノアシルアデニレートが自然生成したと考える方が自然です。これまでの研究では, イミダゾールの存在下で ATP とアミノ酸を繰り返し蒸発乾固させることによりアミノアシルアデニレートが生成することが示されており (Lohrmann & Orgel, 1973; Sawai et al., 1975),自然生成したとの考えを裏付ける形になっています。

次のステップでは,アミノアシルアデニレートが RNA に付加され,アミノアシル tRNA が生成する過程を考える必要があります。 アミノアシル化が RNA にとって利点となったのであれば,この過程がリボザイムによって触媒された可能性も考えられますし, オリゴペプチドなどの RNA とは独立した因子によって触媒された可能性もあるでしょう。 また tRNA にしても現在の tRNA のような複雑な構造が初めから存在したとは考えられません。 おそらく遙かに単純な RNA 鎖がアミノアシル化を受け,結果として tRNA の前身となったものと思われます。

このような「原始 tRNA」を用いた実験で,バリンとアスパラギン酸が結合したジペプチド(Val-Asp) がアミノアシル化を触媒出来ることが示されています(Shimizu, 1995; 清水, 1996)。 興味深いことにバリンもアスパラギン酸も比較的自然生成しやすいアミノ酸ですから(Miller, 1998),Val-Asp も容易に生成したと思われます。

しかしさらに効率の良いアミノアシル化はリボザイムの触媒によって起こった可能性もあります。 アミノアシル化を触媒するリボザイムについては試験管内進化の手法によって,何種類かのものが得られています。 例えば自分自身の 5' 末端にアミノ酸を付加するものも(Lee et al., 2000),3' 末端に付加するもの(Saito et al., 2001; 斉藤 ほか, 2002)も得られていますし,これらの分子の活性部位は別の RNA 分子をアミノアシル化することもできるようです (Lee et al., 2000; Saito et al., 2001; 斉藤 ほか, 2002)。なお,これらのリボザイムはペプチド鎖を付加する能力は持たず, あくまで 1 アミノ酸を付加する触媒です。

リボザイムがアミノアシル化を行うようになった場合,このような複雑な触媒はアミノ酸の光学異性体の選別にも働けた可能性があります。 ジペプチドの触媒では光学活性の選別ができたとは考えにくく,どこかの段階でリボザイムに役割を譲ったと考えるべきでしょう。 おそらく RNA のアミノアシル化が進化したときに,アミノ酸が L 型に限られるような進化が起こったのでしょう。

RNA に付加されたアミノ酸は,他の RNA からアミノ酸あるいはペプチド鎖を受け渡されることによって伸張していきます。 RNA に結合したアミノ基を,他のアミノアシル RNA またはペプチジル RNA のカルボキシル基に移す反応(ペプチジルトランスファー)は, 現生の生物の細胞ではリボソームの中で行われています。リボソームの詳細な構造解析の結果に基づいて, 反応の起こる部位は完全に RNA に囲まれていて,反応触媒として働いているのはタンパク質ではなく,RNA であると考えられています (Nissen et al., 2000)。リボソームからタンパク質の大部分を排除してもペプチジルトランスフェラーゼ活性が残った, とする研究もこの解釈を支持しています(Noller et al., 1992)。しかしタンパク質を完全に排除した場合には活性が失われるようで (Noller et al., 1992; Khaitovich et al., 1999),タンパク質が構造の安定化に寄与している可能性はあります。 一方で,タンパク質抜きにペプチジルトランスフェラーゼ活性を持つリボザイムは試験管内進化の手法によって得られており, 原理的にはタンパク質が不要であることを示しています(Zhang & Cech, 1997)。原始生命においては RNA が単独でペプチジルトランスファー活性を持っていた可能性もありますし, オリゴペプチドを取り込んで安定化していた可能性もあるでしょう。

タンパク質の合成反応においては,ペプチジルトランスファー反応に加えてもう一つ重要な要素があります。 それはアミノ酸が特定の配列で結合されることです。ランダムにアミノ酸が並んだだけでは,高度な触媒能を持ったタンパク質は生成できませんから, 遺伝情報に制御された,特定の配列のタンパク質を合成する仕組みが必要になります。タンパク質の配列を指示する役目は mRNA が果たしますが, 原始的な生命では mRNA は遺伝子となる RNA が兼任していた可能性があります。 また,mRNA の配列に沿ってアミノ酸をリボソームに運ぶのは tRNA です。mRNA の配列と tRNA を対応づけるのが遺伝暗号で, 現生の生物では mRNA の 3 文字区切りのコドンと,tRNA 側のアンチコドン部分が水素結合することによって機能しています。 しかしそもそも特定の種類の tRNA が特定のアミノ酸を運ぶには,アミノアシル化の際に選別が行われる必要があります。 これを行う触媒は aaRS ですから,アミノ酸ごと,tRNA ごとの aaRS が分化することによって遺伝暗号が誕生,進化したと考えられます (Osawa, 1997)。

遺伝暗号の起源と進化については現在でも活発な議論が行われています。遺伝暗号が誕生したのは RNA ワールドにおいてだと言われており, tRNA の方が現生の aaRS 酵素(タンパク質)よりも保存されていることを根拠に,最初の aaRS はリボザイムだったとする見解などがあります (Hohn et al., 2006)。遺伝暗号が 3 塩基のコドンよりなることの説明としては,そもそも RNA 複製リボザイムが, 複製の正確さを維持するために 3 塩基のオリゴヌクレオチドを基質として使っていて,このリボザイムがリボソームに, 基質が tRNA に進化したとする仮説などが提出されています(Line, 2005)。

最初の遺伝暗号については,おそらく現在のように 64 のコドンと 20 種のアミノ酸(および終止コドン) が対応づけられたような複雑なものではなく,より少数のアミノ酸と単純なコドンの対応であったと推定されています (Weber & Miller, 1981; Wong, 1988; Osawa, 1995; 池原, 1999; Knight et al., 1999; Ikehara, 2001; 池原, 2006)。 最初期のアミノ酸の有力候補としては,比較的生成しやすかったと見られるグリシン,アラニン,バリン,アスパラギン酸の 4 種が挙げられています (池原, 1999; Ikehara, 2001; 池原, 2006)。この 4 種のアミノ酸はそれだけでタンパク質の構造をとることができると見られていて (池原, 1999; Ikehara, 2001; 池原, 2006),この 4 種だけで原初のタンパク質が作られていて,機能していたと思われます。 また,これら 4 種のアミノ酸に対応する遺伝暗号がいずれも G(グアニン)で始まることも,歴史的な共通性を暗示しています(表 2)。 ここから当初の遺伝暗号が GNC でコードされていたとも議論されており(Ikehara, 2001; 池原, 2006), 初期の遺伝暗号が極めて単純なものであっても成立し得たと見られます。

表 2:普遍遺伝暗号表とグリシン,アラニン,バリン,アスパラギン酸

  第 2 塩基 
  U CA G  

1

UPhe SerTyr CysU
3

C
Leu停止 停止A
TrpG
CPro HisArg U
C
GlnA
G
AIle ThrAsn SerU
C
LysArg A
MetG
G Val Ala Asp GlyU
C
GluA
G

原始的な tRNA,aaRS,rRNA などのタンパク質合成装置が RNA の複製リボザイムと「共生」していたとすれば, そのような系は原始生命と見なしても良いかもしれません。タンパク質合成系の成立に関しては,多くの部分が未だに仮説の域を出ませんが, 原始的なタンパク質の合成系と RNA の合成系が互いに依存するようになれば,両者の進化と相互依存関係は加速され, 深まっていったと想像されます(図 17)。

図 17:RNA とタンパク質の相互依存的共生系

この状態では,アミノ酸やヌクレオチドなどのタンパク質と RNA の原材料は自然生成したものに頼っていたと仮定しています。 また,図 17 ではそれぞれの RNA 要素が独立に複製しているものとして描きましたが, ゲノム RNA とリボザイムが区別されていた可能性もあるでしょう。しかし複製の鋳型は一本鎖の状態をとることが望ましく, 他方でリボザイムとしては高次構造をとる必要があったと考えられます。そのため両者が兼任できたとは考えにくく, この場合,スイッチが必要であった可能性も考えられます(アミノ酸やペプチドによる修飾の可能性も)。

このような系で複製のサイクルが回り,系の内部の各成分が増殖したとします。 この系を包んでいたであろう膜構造も自己組織化によって拡大し,分裂や融合を行うことができたでしょう(Bachmann et al., 1992; Szostak et al., 2001)()。この系は複製と変異を繰り返し,進化していったことでしょう。 RNA とタンパク質の依存関係はますます深まり,リボソームや aaRS,RNA 複製触媒などは RNA(リボザイム) とタンパク質の複合体になったと考えられます。複製系の主成分がタンパク質と RNA の複合体(リボヌクレオタンパク質:RNP) である状態は,RNA ワールドから現在の生物(DNA ワールド)へと至る中間段階であったと考えられており, RNP ワールドと呼ばれています(Weiner, 1988)。

RNP ワールドの誕生は,生物の誕生へ向けた大きな第一歩となったと考えられます。 次章では RNP ワールドから DNA ワールドへの移行について推定してみましょう。


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第7章:遺伝子は DNA に任せた

RNA ワールドにおいてタンパク質の機能は益々洗練され,リボザイムが果たしていた機能を代わるようになっていったと思われます。 さらにこれまで自然生成に頼っていた生物の原料などもタンパク質が合成するようになったと考えられます。 リボソームは RNA とタンパク質の複合体として現在の形に近づき,RNA ポリメラーゼ,aaRS などはリボザイムからタンパク質へと移行したのかもしれません。ヌクレオシド,ヌクレオチド,アミノ酸,膜胞を構成する脂質, など,生物の原材料も自然生成に依存していたものが,タンパク質酵素によって合成されるようになったことでしょう。 これに伴って膜輸送タンパク質なども必要になったと考えられます。

特に着目されるのはヌクレオチド三リン酸(NTP)の合成系です。現生の生物において,細胞内でエネルギーのやりとりを行う時には, ATP が「通貨」として用いられます。具体的には,ATP を加水分解して ADP とリン酸にする反応では大きなエネルギーが発生し, これを利用して様々な反応が行われています。従って,細胞がエネルギーを発生するためには ATP を合成する必要があります。 ATP は同時に核酸合成の原材料でもあり,元々核酸合成のための経路からエネルギー「通貨」へと転用されたと推測されます。

こうして RNA を遺伝子とした生物が誕生したとします。しかし現生の生物には RNA を遺伝子とするものは知られていません。 ウイルスの中には RNA を遺伝子とするものもいますが,ウイルスには自律的な増殖能がなく,後の時代に細胞内部の因子から起源したと思われます。 現在の生物が全て DNA を遺伝子として持っていることから,どこかの段階で遺伝子の機能が RNA から DNA へと移行したと考えられます。 移行のタイミングについては謎ですが,原因については DNA 分子の方が RNA 分子よりも化学的に安定性だったためではないかと言われています (Joyce, 2002a)。

RNA と DNA の違いは,ヌクレオチドの糖がリボースかデオキシリボースかで,これは糖の 2'-位が -OH 基か -H 基という違いになります(図 18)。 従って RNA の情報を DNA に移行する過程には 2 つの流れが想定できます(図 19)。1 つには RNA を修飾して DNA に変換する過程(図 19a)で, もう 1 つ考えられるのは,RNA を鋳型として DNA を合成する,逆転写と呼ばれる過程(図 19b)です(Gilbert, 1986; Joyce, 2002a)。

図 18:RNA と DNA

図 19:DNA の出現過程

前者は,具体的には RNA の糖の 2'-位の -OH 基を還元して -H 基に変換する反応ですが,この反応はどうやらリボザイムが行うことはできなかったようで, このことから DNA 遺伝子の起源はタンパク質合成の仕組みが成立した後であったと考えられています(Joyce, 2002a)。 前章ではゲノム RNA とリボザイムが化学的な修飾によって区別されていた可能性について指摘しましたが,DNA と RNA の間の変換が, まさにこのスイッチに相当していたのかもしれません。さらに DNA を鋳型にして DNA を合成する酵素(DNA ポリメラーゼ)が進化してくれば, DNA は完全に遺伝子として働くことができるようになります。そして RNA も DNA から変換して合成するのではなく, DNA を鋳型にして酵素(DNA 依存性 RNA ポリメラーゼ)によって合成されるようになれば,「DNA → RNA → タンパク質」という, 現在のものと同じ情報の流れが成立したと考えられます(図20)。

図 20:DNA ワールドへの進化 I

逆転写から DNA ワールドが進化したとする仮説は,レトロウイルスにおいて発見された逆転写酵素を当時の分子化石と見なす考えと結びついています (Gilbert, 1986; Joyce, 2002a)。しかしこの仮説では,デオキシリボースが事前に存在する必要があり,これが何故合成されたのかの説明が困難です。 そしてレトロウイルスがそれほどまで古い起源を持つとは考えにくいことからも,あまり説得力がある仮説とは言えないでしょう。 ただしデオキシリボースが自然生成していたとすれば,基質の選択制の低い "RNA" 複製酵素が誤ってこれを取り込み,DNA を合成した可能性は考えられます。 後にこの酵素が特異性の高い DNA ポリメラーゼと RNA ポリメラーゼに分化して,DNA ワールドが出現したのかもしれません(図 21)。

図 21:DNA ワールドへの進化 II

いずれの仮説が正しいとしても,最終的には(DNA 依存性)DNA ポリメラーゼと(DNA 依存性)RNA ポリメラーゼの 2 種類が分化し, 現在まで受け継がれることになったと考えられます。レトロウイルスの持つ逆転写酵素は後の時代に起源したのでしょう。

こうして DNA は遺伝子としての役割を引き継ぎました。このときこそが現在の細胞の基本的な仕組みが確立したときであり, まさに生物誕生の瞬間といって良いでしょう(図 22)。次章では最初の生物の姿を推測するために,生物の系統関係の根本について, これまでに明らかになっていることを紹介したいと思います。

図 22:細胞における情報の流れ


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第8章:偉大なご先祖様

誕生した直後の生物の姿については証拠が残されていないことから推測が困難です。現在の生物を元にして推定することができるのは最後の共通祖先 (Last Universal Common Ancestor: LUCA または Last Universal Ancestor: LUA などと呼ばれる)となります。 生物の最初の枝分かれが分かれば,その両方の枝に存在している形質は LUCA が既に持っていた形質と推定することができるためです (Galtier et al., 1999; Kyrpides et al., 1999; Miyazaki et al., 2001; 山岸, 2003; Gaucher et al., 2003; Koonin, 2003; Jékely, 2006; Ranea, et al., 2006; Gaucher et al., 2008)。 ただし生物間(ドメイン間でも)で遺伝子が移動する水平遺伝子移動と呼ばれる現象が広く知られているため(Doolittle, 1999 など), 祖先から子孫に直接受け継がれた形質なのか,水平遺伝子移動によって全く異なる生物から獲得された形質なのかは注意しておく必要はあります (Koonin, 2003; Mirkin et al., 2003)。

現在,生物は 3 つのドメイン(domain)に分類する考えが主流になっています(Woese & Fox, 1977; Woose et al., 1990)。 真正細菌ドメイン(Bacteria),古細菌ドメイン(Archaea),真核生物ドメイン(Eucarya)はそれぞれ主要な遺伝子が系統的に大きく異なっていて, 脂質の組成などにも明確な差があります。これらの 3 つのドメインの系統関係については現在でも決着はついておらず, 幾つかの仮説が提唱されています()。

真核生物は 2 つ以上の生物が合わさってできたと考えられています。細胞内にある一部のオルガネラ(ミトコンドリアや葉緑体) は真正細菌の細胞内共生によって誕生したのもので,特にミトコンドリアの起源は現生の真核生物の最後の共通祖先より昔に遡ると考えられています (Dolezal et al., 2005; Embley & Martin, 2006; Carlton et al., 2007)。 ミトコンドリアの元になった真正細菌はプロテオバクテリア門アルファプロテオバクテリア綱の生物と見られています(Fitzpatrick et al., 2006)。

一方でアルファプロテオバクテリアの宿主となった生物,すなわち真核生物の核の起源については疑問が残されています。 LUCA 以前に遺伝子重複を起こしたタンパク質で全生物の最初の分岐を推定した場合には,真正細菌が始めに分岐し, 次いで古細菌と真核生物が分岐したとの結果が出されています(Gogarten et al., 1989; Iwabe et al., 1989)。 しかし古細菌の単系統性については疑問も挙げられています。古細菌の中にはユリアーケオタ界とクレンアーケオタ界の 2 大系統が認められていますが (Woese et al., 1990),このうちクレンアーケオタ界(またはエオサイト:eocytes, Eocyta)がより真核生物に近縁だとする見解もあります (図23a;Lake et al., 1984; Baldauf et al., 1996; Rivera & Lake, 2004)()。 古細菌が単系統だとする意見も未だに根強く,(図23b;Woese et al., 1990; Cavalier-Smith, 2002b), RNA polymerase II が古細菌では共通して 2 つに分かれていることが証拠に挙げられています (Klenk et al., 1992; Klenk et al., 1999; Cavalier-Smith, 2002b)。

図 23:全生物の系統樹

なお,古細菌にはユリアーケオタやクレンアーケオタ以外にも未培養の系統群も知られているため(Barns et al., 1996; Takai & Horikoshi, 1999), 将来はこれらの系統群も含めて真核生物と古細菌の関係を調べる必要があるでしょう。

LUCA の生存年代については分子系統解析と化石記録を比較することによってある程度個々の分岐年代は推定可能です (Hedges & Kumar, 2003)。これまでの研究では LUCA が 32-38 億年前に存在したとも推定されていましたが(Feng et al., 1997), 最近の推定値では LUCA は 41 億年以上前に存在したと考えられています(Battistuzzi et al., 2004)。

さて,系統樹からはどのようなことが推定できるのでしょうか。まず真核生物は古細菌,あるいは古細菌の姉妹群と真正細菌の融合生物 (あるいはキメラ生物)であり,極度に特殊化していると考えられます。そこで原核生物(真正細菌と古細菌)の方がより LUCA に近い性質を留めていると期待されます。真正細菌と古細菌の系統樹の中で尤もらしいものを調べてみますと, 真正細菌の系統樹としては Shatalkin (2004) の説が,古細菌の系統樹としては Gribaldo & Brochier-Armanet (2006) の説が最も有力であるように見えます。前者は Gupta & Griffiths (2002) や Gupta (2003) による, タンパク質中の挿入欠失を評価した系統樹を土台にしていて,後者はゲノム中の複数のタンパク質を用いた系統解析を土台にしています (ただし異論も多くあり,例えば古細菌については最近,Gao & Gupta, 2007 などが異なる見解を示しています)。

LUCA が好熱菌であったとする仮説はリボソーム RNA 小サブユニット(SSU rRNA)の系統樹に基づいて以前より繰り返し指摘されてきましたが (Stetter, 1998 など),一部の研究者からは反論も出ていました(Galtier et al., 1999; Brochier & Philippe, 2002)。 しかし最新の系統樹を見ますと,真正細菌においても古細菌においても基部付近の系統群は好熱菌からなっているため, LUCA が好熱菌であるとする仮説は改めて支持されているようです(図24)()。

図 24:古細菌・真正細菌の系統樹と好熱性(太線は超好熱菌,好熱菌の枝)

系統樹を元に祖先的な塩基やアミノ酸の配列を推定する手法もあります。LUCA の rRNA の GC 含量(グアニンとシトシン塩基の割合) を推定した研究からは,LUCA は好熱性ではなかったと目されていますが(Galtier et al., 1999), LUCA や真正細菌の共通祖先のタンパク質のアミノ酸配列を推定し, これを再現して熱安定性を調べた研究からは彼らが好熱性であった可能性が支持されています(Miyazaki et al., 2001; 山岸, 2003; Gaucher et al., 2003; Gaucher et al., 2008)()。

LUCA の膜脂質や細胞壁については謎に包まれています。というのも真正細菌と古細菌では細胞膜の脂質や細胞壁の成分がまるで異なっているためです。 真正細菌(や真核生物)の膜脂質は主として sn-グリセロール-3-リン酸の脂肪酸エステルであるのに対して, 古細菌の膜脂質は sn-グリセロール-1-リン酸のイソプレノイドエーテルです(図 25)。特に光学異性体の違い (リン酸がグリセロールの 1 位につくか,3 位につくか)は古細菌と真正細菌で例外なく異なっていることが知られていて, 合成経路も異なっています(Peretó et al., 2004)。このことから細胞膜の出現自体が LUCA より後である, つまり LUCA は細胞膜を持っていなかった,との仮説も出ていますが(Martin & Russel, 2002; Koonin & Martin, 2005), ゲノムの比較からは細胞膜のタンパク質が LUCA に存在したとも推定されています。また膜脂質の合成酵素のドメインについては LUCA に遡ると言われており,併せて考えますと,LUCA は細胞膜を持っていたと思われますが(Wächtershäuser, 2003; Peretó et al., 2004; Jékely, 2006; Ranea, et al., 2006), その脂質の具体的な構造については特定するのは難しいでしょう。単一の脂質であったのか, あるいは 2 種類の光学異性体があったのかについても議論のあるところです(Wächtershäuser, 2003; Peretó et al., 2004)。 一応,光学異性を抜きにすれば,古細菌にも脂肪酸とその合成系が広く存在することから,脂肪酸エステルが祖先的であると言われています (Peretó et al., 2004)。

図 25:古細菌と真正細菌の脂質構造

細胞壁の構造も古細菌と真正細菌で異なっており,中には細胞壁を持たない古細菌(Thermoplasma など) や真正細菌(Mycoplasma など)も知られています。真正細菌の典型的な細胞壁はムレインと呼ばれる糖鎖とペプチドの結合したペプチドグリカンです。 一方で古細菌の細胞壁は系統群ごとに大きく異なっていて,系統群ごとに独立に進化したと見られています(Kandler & König, 1998)。 この場合も細胞壁の生合成に関わる酵素のドメイン構造が LUCA に遡ることが指摘されており(Ranea, et al., 2006), LUCA が何らかの細胞壁を持っていた可能性はあります。しかしその成分を推定することは難しいでしょう。

さて,代謝についてはどうでしょうか()。まず基本的な代謝の経路として解糖系やクエン酸回路(TCA 回路) は古細菌と真正細菌の双方に知られています。そしてこれらの経路は現在とは酵素に多少の違いはあったとしても LUCA にも存在したと考えられています (Mirkin et al., 2003; Ranea, et al., 2006)。 膜貫通型の酸化還元酵素も LUCA に遡ると推定されるものが幾つか指摘されており,電子伝達系が LUCA に存在したことを示唆しています (Baymann et al., 2003; Ranea, et al., 2006)。このことはプロトン(H+)の濃度勾配を利用して ATP 合成を行う ATP 合成酵素が LUCA に存在したと予想されていることと一致します(Gogarten et al., 1989; Iwabe et al., 1989)。

解糖系やクエン酸回路を備えていたとすれば,LUCA は少なくとも従属栄養的に生きることはできたと予想されます。 独立栄養的な生活については考察の余地があります。カルビン回路の存在が LUCA に予想されていることから(Ranea, et al., 2006) LUCA が炭酸固定を行っていた可能性は十分に考えられますが,そのエネルギー源についてはよくわかりません。 例えば光合成については真正細菌の中で進化したと考えられています(例えば Mulkidjanian et al., 2006)。 とすると化学合成独立栄養が想定されますが,これは様々なタイプのものが真正細菌・古細菌の双方で知られていることから (Martin & Russell, 2003),LUCA どのような反応経路を持っていたのかを推定するのは難しそうです。

この他,タンパク質のドメイン構造をゲノム間で比較した研究から,糖,塩基,アミノ酸の代謝経路や DNA の複製・転写・翻訳の機構など, 生物が自律的に生きていくために必要なタンパク質はほぼ一通り揃っていたと推定されています(Mirkin et al., 2003; Ranea, et al., 2006)。 ただし Woese (2002) が指摘するように,LUCA は一つの細胞であったというより,相互に頻繁に水平遺伝子移動を行う集団であった可能性は考えられます。 この場合,当時の複数の集団の中に炭酸同化を行って独立栄養的に生きているものと,従属栄養的に生きるものが混在していたとも考えられます。 Woese (2002) は相当頻繁な水平遺伝子移動を考えているようですが,古細菌や真正細菌の根元付近で起こった水平遺伝子移動を検出することは不可能に近く, 低頻度で起こっていたとしても LUCA の推定に大きな影響を与えているかもしれません。

このように,LUCA から古細菌や真正細菌の初期分岐までの生物は,既に現在の生物と近い姿をしていたことが推定されています (Mirkin et al., 2003; Ranea, et al., 2006)。そしてここから先の進化は,それぞれ古細菌の進化, 真正細菌の進化として語られるべき話でしょう。現在でも LUCA の形質を推定する研究は日進月歩の状況です。また, 原核生物の中には純粋培養に成功していない系統が多数残されていて,最初期の分岐がさらに追加されれば LUCA の形質推定にも影響を及ぼすかもしれません。


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おわりに

この文章の前身となるレポートを書いたのは 2003 年のことでした。さらにその以前にも生命の起源について書かれた本を集めて, 自分なりにまとめた要約を執筆していました。この間に生命の起源研究の分野においても,また私自身の知識の集積という意味でも著しい進歩があり, 文章を全面的に執筆し直すことにしたのが本原稿「生物の起源」です。「生物の起源」を執筆している最中にも記述を覆す, あるいはこれに疑問を呈するような研究が出版され,やむを得ず追加情報として別記してきました。 今回の完成原稿では,これまで追加情報とされていたものを本文に組み入れ,全文に渡って必要な修正を行いました。 それでも幅広い研究者を擁する生命の起源研究を網羅するには至らないことをここに強調しておきたいと思います。

本原稿で紹介できなかった説や議論としては,創造説を巡る議論,火星生命の有無や検出にまつわる議論, あるいは細かいところではタンパク質合成の誕生から LUCA に至るまでの進化に関する様々な考察(特に遺伝暗号の起源と進化など)や, LUCA が DNA ゲノムを持っていたのか RNA ゲノムを持っていたのか,という論争などがあり (),興味深い話題はまだまだ存在します。

しかし本原稿ではまず,生命が無生物的な化学反応から如何にして現在の細胞の姿に至ったのか, その過程を一本のストーリーの上につなげることを目指しました。まだまだこのストーリーは途切れ途切れであり, 多くの部分にはいずれ誤りが示されることもあるでしょう。それでも本原稿によって,生物の誕生が決して人間の理解を超えた神秘でもなく, また研究が不可能な非科学的なテーマでもないことがご理解いただけたのではないでしょうか。

本原稿が生物の起源について関心を持っている方の学習・研究の一助となれば幸いです。今後は見落としてきた情報や省いてきた研究, そして新たに発表された研究などを追加情報に,あるいは改訂版として取り入れていきたいと思います。


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追加情報


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