『ハニーハニーのすてきな冒険』は、1960年代に『りぼん』で連載された水野英子の同名のコミカル・ラブ・アドベンチャーともいうべき作品のアニメ化。アニメ化された1981年当時は、すでに集英社版は絶版で、単行本は全二巻でサンコミックスから発行(現在は絶版)されていた。ちなみに、アニメ化に際しては表紙カバーをアニメ版に改訂している。
製作は、前番組の『めちゃんこドタコン』同様に国際映画社だが、シリーズ構成に辻真先、チーフディレクターとメイン作監にしらとたけし(白土武)という東映動画系のスタッフが現場を担当している。
キャラクターデザインは『宇宙戦艦ヤマト』(パート1)や『ふしぎなメルモ』で主力原画マンとして活躍した正延宏三。原作の気持ち手塚マンガのりのキャラクターを、東映動画少女アニメ型のラインにまとめている。
ハニーハニーを演じたのは松島みのりで、本作では全編を通して弓さやかバリの元気いっぱいなハツラツとした演技を披露してくれている。相手役となる怪盗フェニックスは井上真樹夫であり、くしくも『キャンディキャンディ』でも同じような関係だったコンビだ。ハニーとキャンディの境遇や時代設定など、実は酷似している(別に盗作云々とかいう揚げ足取りではない。念のため)ことから、「狙ったのでは?」と勘ぐりたくなるようなキャスティングである。
ハニーのライバル役となるフローレル姫はチャコこと白石冬美が担当。『伝説巨神イデオン』のカーシャ以上にヒステリックで、よりエキセントリックな好演をみせている。さらに(クレジットされていないが)チャコさんは、リリーの声も担当していたようだ。
『ハニーハニー』はラブコメの王道である、「最初は嫌なヤツだが気がつくと頼れる人になっていた」というシチュエーションと追っ手に追われるヒロインというアドベンチャーとしての要素を巧みにリンクした内容に、破天荒でスラップスティックなストーリー展開、加えてラストでハニーとフローレル姫との関係の明らかにされる、どんでん返しの大団円、プロローグと呼応した幕切れなど、テンポもよく原作版はまさにケッサク。
アニメ版でもその味わいを生かした演出が心がけられていた。しかしながら、全体的にはもう一歩、原作の「なんでもアリ」的なエキセントリックさに乏しいのはいなめない。
本作の製作は、『うる星やつら』の1・2クール目や『ミンキーモモ』のスタート時期と重なっており、80年代の新しいコミカルなヒロインアニメの胎動の時期に位置する。ベクトル的には『ハニーハニー』も同一なのだが、あまりに(良くも悪くも)トラディッショナル過ぎたのが惜しまれるところだ。