当工房で製作したモデルや作業のご紹介です。
4. キャブレターの取り付け
キャブレター、インテークマニホールドハウジングもHispano Suiza製とWolseley "viper"製
では形状・冷却水配管に違いがあります。長谷川のキットはWolseley "viper"製のエンジンがモデル
で、キットでは表現されていませんが、シリンダブロックからの冷却水がインテークマニホールド
ハウジング後部に接続されているタイプだと思われます。
HispanoSuiza8A製でも冷却水配管があるものもありますが、とりあえず冷却水配管が無いタイプ
で作ります(冷却水配管があるタイプも後で作る予定です)。
シリンダブロックのインテーク配管部に後回しにしていた接続口をジグを使ってはんだ付けします。
キャブレターとインテークマニホールドハウジングは左右のシリンダブロック間に懸架する形で
取り付けます。
インテークマニホールドハウジング部分は5mmの真鍮板で両端のインテーク配管接続部分を作成し、
それをガイドに本体を0.3mmの真鍮板を楕円形に曲げ加工し作成します。突起部など細かいディテール
は板金部品や引き物などを後からハンダ付けし、表現しました。
キャブレターはマウス入り口部分を0.3mm真鍮板を内径12mmで丸め、マウス後部を銅版から打ち出し
たものを結合し、キャブレター本体の下部にハンダ付けします。キャブレター本体は0.3mmの真鍮板を
箱曲げします。 マウス後部のの打ち出しのために木型を作成しました。
ネジを利用した位置決めジグ
↓
←マニホールド
の接続口
↑キャブレターの
マウス入り口部分
←キャブレター
本体
マニホールド
ハウジング →
キャブレター
前端部→
マニホールド
ハウジング→
マニホールドハウジングに冷却水配管が
あるタイプのキャブレター、インテーク
マニホールドハウジングアッセンブリ
キャブレターマウス→
キャブレター、インテークマニホールド
ハウジングアッセンブリの部品構成
ハセガワのSE5aキットに搭載するエンジン用に冷却水配管があるタイプのキャブレター
アッセンブリを作りました。
これもWolseley "viper"製でなく、Hispano Suiza製です。図面はありませんで
したので、ネットなどの写真などから構造を推定し作りました。従って
キャブレターの底面などは実際とは違っているかもしれません。
5. マグネトーアッセンブリの取り付け
最初にマグネトーとオイルスカベンジポンプが取り付くベースとなるギアハウジングを作ります。
このギアハウジングはクランクシャフトの回転をそのままオイルスカベンジポンプに伝える部分と
回転方向を変えてマグネトーを駆動する部分から構成されています。
ギアハウジングの形状はクランクシャフトと同軸のフランジにはさまれたベースの円筒形と
そこからマグネトー側に回転方向を変えるギアユニットが収まっている円筒状の部分(マグネトーの
ギアハウジング)からなっています。
ベースのフランジ部分は真鍮材(廃材のユニオンナットを流用)をリング状に加工し、そこに
0.3mm厚の真鍮板を円筒状に曲げ加工したものをハンダ付けします。
マグネトーのギアハウジングは真鍮丸棒を直径8mmに削り、端面をミーリング加工でベースの
円筒状の曲面に摺り合わせます。
この摺り合わせた曲面を基準にマグネトーへのシャフト(ケーシングで5mmのパイプを使用)の
位置を決め、穴あけします。シャフトの穴があいたら、穴を基準にギアハウジングの両端にケーシ
ングのつば部分を加工したものをハンダ付けします。
↑
冷却水配管がある
タイプのキャブレター
↑
「Scale Aircraft Drawings
volume 1」の図面による
キャブレター
マグネトーアセンブリの取り付け
マグネトーアセンブリはベース部でエンジンの後部にアングル状の金具で取り付いています。
まず、エンジン後端に接するアングルの垂直部分のプレートをマグネトーアッセンブリのベースに
ハンダ付けした後で、マグネトーユニットが取り付けられるアングルの水平部分をベースの形状に
合わせながらハンダ付けします。アングルはエンジン後端にM1.4のネジx2で固定されます。
↑ マグネトードライブシャフトハウジング
ハンダ付けの際の角度確認用
↑ オイルスカベンジポンプ
が取り付くベース本体
ワーク保持用 →
後で切断
シャフトのつば →
マグネトー用の
ギアハウジング ↓
マグネトーアセンブリのベース部
次にオイルスカベンジポンプを作ります。
ポンプハウジング(ケーシング)は前後が異径のフランジで、かつ中心がずれた偏心形状です。
偏心形状の前後の異径フランジを真鍮丸棒から削り出し、中心をずらしハンダ付け後ヤスリで
削り出します。ポンプケーシングはベース本体にM2のネジ止めで取り付きます。
オイルスカベンジポンプの後端のオイルの接続口が付くポンプヘッド部分も真鍮丸棒から削り
だします。この部分もポンプケーシングに、実際のボルト止め部分を平径1.7mmの六角棒(これは
タミヤのミニ四駆のシャフトを利用)で表現し、3箇所はM1,4ネジ止めで、他の3箇所は
飾りネジとして六角の頭だけの表現で固定します。
ポンプのベース部にはオイルスカベンジポンプの取り付けボルトの為のリブ(肉盛り部分)を
取り付けます。
マグネトーアッセンブリのベース部と
オイルスカベンジポンプの部品構成
組み上がった
マグネトーアセンブリ
↓ マグネトー用のギアハウジング
↓ オイルスカベンジポンプ
ポンプハウジング
↓
ポンプヘッド
↓
ベース ↑
ベース ↑
キャブレター(前側から)
キャブレター(斜め後側から)
キャブレター(前側から)
塗装後
↑
オイルスカベンジポンプ
←オイル配管口(toタンク)
←オイル配管口(toエンジン)
← マグネトードライブシャフトハウジング
次にマグネトーを作ります。
マグネトー点火装置には、コイルを回転させるシャトル式と、逆に磁石を回転させるインダクタ式が
あるということです。作成しているマグネトーがどちらかなのかはわかりませんが、マグネトーは
冗長性から2系統になっていて(すなわち1シリンダに対し点火プラグが2個)左右にお弁当箱の
ような形状のものが付いていますが、エンジンのモデルにより形状は様々な様です。
マグネトー部分はハセガワのキットのプラパーツをそのままコピーして取り付ける予定でしたが、
「Scale Aircraft Drawingsvolume 1」の図面のマグネトーに比べて形状は似ていますが、
寸法的にはずいぶん小さく、上の写真のマグネトーアッセンブリと組み合わせるのに軸間の距離や
プロポーションに不都合があり、図面に合致した少し大きめのサイズで作成することにしました。
材料は真鍮板です。
ハセガワのキットでは表現されていませんが、マグネトーはマグネトーアッセンブリのアングルに
ボルトナット止めでマグネトー下部のベース板部分で取り付けられています。※図面にはアングルの
取り付け穴は1/4"のネジ穴でかつボルトナット止めしてあるように描かれています。
まずこのベース板をアングルの幅にあわせて作成します。ダミーですが、ボルト頭を表現します。
ベース板は2mmと0,3mmの板材を組み合わせました。ボルト部分はタミヤのミニ四駆のシャフトです。
ベース板の奥行きに合わせてマグネトーの胴体部分の幅が決まりますので、その幅に合わせ
お弁当箱の両端を作成します。
両端のプレートは2.5mmの厚板に幅8mm厚さ0,5mmの帯板を巻いて作成します。お弁当箱の両端の
プレートは異型になっていますが、図面の形状を採用しました。外側のプレートの円筒形の細かい
形状(コンタクトブレーカ?)は図面では不明瞭なので、ハセガワのキットを参考しました。
次に両端のプレートに挟まれるお弁当箱の胴体部分を0.3mmの板をU形に曲げ作成します。
この胴体部分は両端のプレートの内側にはめ込まれます。
両端のプレートを固定していると思われるボルトのブラケットを作成し胴体部分切れ込みを
入れに取り付けます。内側のブラケットはプラグコードのコンジット(保護管)のサドルも
兼ねていて、コンジットがバンドで取り付けられます。ボルト部分はタミヤのミニ四駆の
シャフトです。
マグネトーアッセンブリ
マグネトーの図面
「Scale Aircraft Drawings volume 1」より
マグネトーの部品構成
マグネトー(左側)
マグネトーアッセンブリにスパークコントロールとプラグコードのコンジット(保護管)を取り付け
ます。
スパークコントロールはマグネトーアッセンブリのギアハウジングのキャブレター側から突き出た
ブラケットに付いています。図面からは実際の形が判りにくいですが、円筒の左右に耳が付いた、
断面が菱型の形状をしていて、上部にコントロール用のレバーが付いています。
※スパークコントロールレバーがマグネトーに付いているタイプのエンジンもあります。
円筒部は7mmの真鍮パイプ、上下の菱型部分は2.5mmの真鍮厚板、耳の部分は0.2mmの真鍮板の曲げ加工、
を組み合わせました。
組み立ては、円筒部分に上下の菱型部分をハンダ付けし、ある程度形を整えたら、そこに耳部分を
ハンダ付けします。レバーは1mmの洋白板から切り出し両端に2mmの真鍮丸棒を輪切りにしたものを
ハンダ付けします。レバーはスパークコントロール上部にピンで固定(可動)します。
ブラケットへの取り付けは3mmの真鍮丸棒で支柱を表現し、ブラケットの裏からネジ止めで固定します。
プラグコードのコンジットはマグネトーの内側のブラケットの上にバンドで固定されています。
コンジットの片方はマグネトーアッセンブリのギアハウジングにT型に接続されています。
コンジット部分は材料の都合で4mmの銅パイプをギアハウジングに接続するT型の部分は真鍮の引き物
で作成します。バンド部分はマグネトー側にハンダ付けし、コンジットを差し込む形にしました。
↓ スパークコントロール
プラグコードコンジット
↓
キャブレター側から
6. プロペラスピンドル、フランジの取り付け
プロペラスピンドルはテーパ状で、そこにプロペラ装着のためのフランジが付いたバレルが
挿入されます。スピンドルにはキー溝が彫られ、バレルはキーにより固定されます。
プロペラは9枚程度のラミネート構造になっていますが、バレルに挿入されたプロペラの
軸部分を前後のフランジで挟み、8本のボルトで固定されます。
ハセガワのキットではフランジ部分がソフトメタルで表現されていて、残念なことにプロペラも
ラミネートでなく、一本物(木製)です。
せっかくの”ミュージアムモデル”なのでプロペラはラミネート構造で作り直す予定なので、
長谷川のパーツは使わず、フルスクラッチで作成することにします。
7. 配線(プラグコード)、冷却水、オイル配管の取り付け
マグネトーとプラグ間の配線回しは色々ですが、「Scale Aircraft Drawingsvolume 1」
の図面に従いました。Reduction型ですが、RodenのHispano-Suiza8Abの作例も同様です。
プラグコードの色は黒が多いようですが、図面の指示にある赤にしてみました。使用した
電線はAWG30に近い線径を使用しました。プラグコードのソケット部は1.4mmと1.2mmの真鍮
パイプをハンダ付けし作成しました。シリンダブロック周りでプラグコードがコンジットに
通してある作例もありますが、今回は図面どおりクランプで束ねる形にしました。
ちなみに、Wolseleyの実機写真にはコンジットがついていました。
プロペラスピンドルは25mm長で、前面が直径6mm 後面が
直径7mmのテーパ状に真鍮棒材から削り出します。
バレル部分は12mmの真鍮パイプにスピンドルの
テーパに合ったスリーブを前後面に挿入し、
スピンドルと嵌めあいます。(後面にキーを挿入し
てあります。スピンドルはエンジン側からのシャフト
に2mmのイモネジで固定します。
スピンドルの前面にはダミーで、ブッシングナット、
ロックナットとキャップを取り付けます。前面の
キャップはバレルをスピンドルに固定するネジも
兼ねています。
プロペラスピンドルの部品構成
バレルは外形に合わせ旋盤で溝を加工します。
フランジ部分は1.5mm厚の真鍮板から糸ノコで切り出し、直径28mmに整形し、ボルト穴など
穴あけをし、後側のフランジはバレルにハンダ付けします。
プロペラを固定するボルトは2mmの真鍮パイプの先端に2mmの雄ネジをハンダ付けし作成
します(ボルトの頭部分は2mmのナットをハンダ付け)。
バレル部分は未取り付け
← バレル
スピンドル
↓
パッキン →
スピンドル ↓
ロックナット
(ダミー) ↓
キャップネジ↑
パッキン
↓
キャップ
↓
↑
ブッシング
ロックナット
↓
※プロペラ軸の厚みは長谷川のキットに
比べ今回の図面の方が厚くなっています。
とりあえず、図面通りの寸法にしてあります。
冷却水とオイルの配管は図面ではサイズの記述がありませんが、図面から冷却水配管が
3/4インチ、オイル配管が3/8インチ程度と推定し、ここでは材料の都合もあり、其々2mmと
3mm(3.2mm)の銅パイプを使用することにしましたが、少しアンダースケールのようです。
冷却水配管は金属配管をホースとクランプで接続してあるようで、Wolseleyの写真には
銅パイプが使われていました。ここではホースをゴムチューブで、ホースバンドを真鍮パイプ
を輪切りにしたもので表現しました。
キャブレター上部の冷却水配管の経路には@左右のシリンダブロック前部から直接ラジエターに
接続するもの(マニホールドハウジングに冷却水が流れない)、A左右のシリンダブロック前部
からマニホールドハウジングを経由してラジエターに流れるもの、B後部のシリンダブロック
からマニホールドハウジングを経由してラジエターに流れるものなど様々なパターンがあり、
どのタイプにするか悩みましたが、RODEN(プラモデル)の作例を参考に後部入口側は2箇所、
前部出口側が1箇所のパターンにしました。接続金具も溶接フランジ風だったりユニオン風、
ホースニップル風だったり色々ですが、Wolseleyの写真でホースニップルを使っていたので
ホースニップルということにしました。
前部出口側の冷却水配管は左右のシリンダブロックからの冷却水配管と一緒になり
ラジエターの上部タンクに接続します。ゴムホースは4mmのものを使いましたが、シリンダ内側の
冷却水配管にはサイズ感から少し小さめの自転車の虫ゴムを使用しました。ホースバンドは
0.3mmの真鍮板を1mm幅に切り出し、4,1mm径で丸めハンダ付けしました。
オイルの配管には途中でユニオンが使われているものがあり、そこも表現しました。
↑
オイル配管
冷却水配管 →
↑
オイル配管
← 冷却水配管
オイル配管 →
これでエンジン編は
完成です。