傷だらけの天使
1974年10月4日〜1975年3月29日放映(日本テレビ)

DVD-BOX特典映像内容
登場人物紹介

第一話:宝石泥棒に子守唄を

監督:深作欣二 脚本:柴英三郎
ゲスト:西村晃、金子信雄、船戸順、真屋順子、坂上忍

第二話:悪女にトラック一杯の幸せを
監督:恩地日出男 脚本:永原秀一、峯尾甚三
ゲスト:緑魔子、江原達怡 、上野山功一、北村総一郎

第三話:ヌードダンサーに愛の炎を
監督:深作欣二 脚本:市川森一
ゲスト:中山麻里、室田日出男、都家かつ江白石菜緒美

第四話:港町に男涙のブルースを
監督:神代辰巳 脚本:大野靖子
ゲスト:池部良、荒砂ゆき、潤ますみ、山中貞則、中野エリ

第五話:殺人者に怒りの雷光を
監督:工藤栄一 脚本:市川森一

ゲスト:松山省二、加藤喜、檜よしえ、森みつる
第六話
草原に黒い十字架を

監督:神代辰巳 脚本:山本邦彦
ゲスト:瀬島充貴、船戸順、高木均、苅谷俊介、石田徹

第七話
自動車泥棒にラブソングを

監督:恩地日出男 脚本:市川森一
ゲスト:川口晶、西村晃、蟹江敬三、高橋昌也、奥村公延

第八話
偽札造りに逢いのメロディを

監督:工藤栄一 脚本:柴英三郎
ゲスト:有島一郎、田辺節子、近藤宏、杉義一、沢りつ男

第九話
ピエロに結婚行進曲を

監督:児玉進 脚本:市川森一
ゲスト:志摩みずえ、滝田裕介、水上竜子、奥山正勝

第十話
金庫破りに赤いバラを

監督:鈴木英夫 脚本:渡辺由自
ゲスト:小松政夫、加納典明、川崎あかね、浜田寅彦、松下達夫

第十一話
シンデレラの死に母の歌を

監督:土屋統吾郎 脚本:渡辺由自
ゲスト:平田昭彦、服部妙子、川村真樹

第十二話
非情の街に狼の歌を

監督:児玉進 脚本:鎌田敏夫
ゲスト:土屋嘉男、水原麻記、清川新吾、高橋ひとみ、佐野京一

第十三話
可愛い女に愛の別れを

監督:土屋統五郎 脚本:高畠久、山本邦彦
ゲスト:吉田日出子、船戸順、加茂さくら、田口計

第十四話
母のない子に浜千鳥を

監督:恩地日出男 脚本:市川森一
ゲスト:桃井かおり、丘ゆりこ、石山雄太、浅野進治郎
第十五話
つよがり女に涙酒を

監督:恩地日出男 脚本:篠崎好
ゲスト:松尾和子、
渡辺文雄、稲葉義男、熊谷俊哉、奥野健明
第十六話
愛の情熱に別れの接吻を

監督:鈴木英夫 脚本:鎌田敏夫
ゲスト:高橋洋子、右京ちあき、加賀ちかこ、山下洵一郎

第十七話
回転木馬に熱いさよならを

監督:鈴木英夫 脚本:高畠久、山本邦彦
ゲスト:江夏夕子、中原早苗、橋本功、福田豊士、遠藤剛

第十八話
リングサイドに花一輪を

監督:児玉進 脚本:柏原寛司
ゲスト:中谷一郎、ファイティング原田、今井健二、浅倉隆

第十九話
街の灯に桜貝の夢を

監督:恩地日出男 脚本:市川森一
ゲスト:関根恵子、阿藤海、大口ひろし、山田貴光、森幹太

第二十話
兄妹に十日町小唄を

監督:児玉進 脚本:篠崎好
ゲスト:渡辺篤史、伊藤めぐみ、島田多江、犬塚弘、太田美緒

第二十一話
欲ぼけおやじにネムの木を

監督:工藤栄一 脚本:宮内婦貴子
ゲスト:内田朝雄、亀淵友香、根岸一正、笠原うらら、武藤章生

第二十二話
くちなしの花に別れのバラードを

監督:児玉進 脚本:篠崎好
ゲスト:篠ヒロコ、久保明、家弓家正、浅倉一、川口節子

第二十三話
母の胸に悲しみの眠りを

監督:工藤栄一 脚本:田上雄
ゲスト:下條アトム、西尾三枝子、根上淳、本山可久子

 
第二十四話
渡辺綱に小指の思い出を

監督:児玉進 脚本:市川森一
ゲスト:坂口良子、前田吟、真山知子、天本英世、富田仲次郎

第二十五話
虫けらどもに寂しい春を

監督:工藤栄一 脚本:宮内婦貴子
ゲスト:本田みちこ、中川三穂子、小松方正、根岸明美

最終話
祭りのあとにさすらいの日々を

監督:工藤栄一 脚本:市川森一
ゲスト:西村晃、柴田美穂子、下川辰平、森本レオ、石田太郎
       
  2004年の2月、例によって恒例のツタヤヘいった私は、その数日前からどうしても見るのだと意気込んでいた、「傷だらけの天使」を借りてきたのでした。

 その頃はテレビ離れをしていて、連続ドラマは尚見ない生活を送っていましたが、年の初め、元々、水谷さんは好きなので昼間にやっていた「相棒」の再放送を見ることにしたのです。 物凄くハマったので、じゃ、自分の生まれたころの伝説のドラマも見てみようと、「傷だらけの天使」。
 いつかは見たい、とは思ってもいたのでしたが。

 最終回だけは、「懐かしのドラマ名場面」というような番組で小学生の頃から知っていて、子供心には結構なショックで、悲しくてイヤかもしれないというのをずっと引きずって、以前に友人が見たという話を聞いた時にも見ようと思ったのに、見ないままで過ごしていました。

 で、見たらいきなりハマりました。
 ツボを突かれたので、ツタヤで借りたのは最初の5本くらいまで、どうにか乏しい貯金と折り合いを付けてボックスセットを買いこんだのでした。いえ、ローンなのですけれどもね(笑)。

 主人公はショーケンこと萩原健一さんの演じる木暮修。その舎弟分で修を兄貴と呼んで慕う乾亨を水谷豊さんが演じています。このあたりは登場人物紹介を読んで頂くとして、この二人の関係が、時に共依存の夫婦的に見えるものの、どこか羨ましいのです。

 製作者たち公認の「ある種のホモ関係」な二人ですが、あくまでもプラトニックなのだろうと思います。いえ、二人はとても格好良い&可愛いし、二人とどうこうなるわけでもないし別段ゲイに偏見もないので、私的には別段ホモでも構わない感じですが、しかしいわゆるゲイカップルではないからこそ、関係性が羨ましいのではないかとも思います。

 あまりにも兄貴命な亨を見ているとちょっと切なくて、男と女だったら良かったのにね、と思わずにはいられなかったりするものの、あの微妙な関係が良いのだろうという具合。
 亨のあまりにもいじらしい様子をみていると、私が兄貴になって常に優しくして上げたいぐらいだ、と思いますが、しかしあの関係というのは、やっぱりあの関係だからこそ魅力を放つのでしょう。

 決して対等な関係ではなく、しかし心の底から大切だと思える存在同士なのだろうというのは、同性同士の方がシンプルで分かり易いし、生活臭の中にある忍の字にも、男女で生活を営んでいくより楽しげなものがあるような気がして、二人が恋人でないからこそ良いのだという感想。
 というか、男女だったらああいう関係性はそもそも築けないでしょう。

 亨が兄貴を慕う感覚は、孤児院育ちの亨にとっては家族を持つという感覚なのだろうし、修が、時に理不尽なことを亨にしたところで、こちらも自らも抱える一種の孤独が相手の孤独を察しての優しさなのだろう、と思うわけです。だから共依存の夫婦めいたものを感じるのかもしれません。暴力振るうし、振るわれても戻ってくるし(笑)。

 二人は貧乏です。貧乏というよりは、どちらかといえば好きなことに金を使って、困窮しているのではなかろうかと思えなくもないんですけれども(衣装持ちだし、風俗行くし。まあ本当に何ヶ月も仕事がなかったりするらしいですが)、塩を買う金にまで困る生活を送っています。
 本当に幸せなのかどうかはよく分からないけれども、二人と、修の子供と三人で、亨が思い描いていたように、空気のきれいな田舎でずっと一緒に暮らしていけたら良かったのにと、最終回を見る頃にはのめり込み度に勢いがついていたので、最終回を見たあと3日ぐらいは本気でヘコんでました。

 起こること自体はかなり有り得ない話なのですけれども、それでいて主人公の二人は、ちょっと世の中の基準からは外れているお兄ちゃんながらとても自然にその世界に生きているので、一回のめりこむと、かなりの勢いでめりこめるんではないかと思います。
 
 にしても、私が産まれた頃といったら結構な昔なのに、これだけのドラマがあったんだなぁということに、ちょっと驚かされたものでした。軽快な音楽や70年代の雰囲気も含めて傑作。

 全体として、弱者は弱者でしかなく、強いものに利用をされ、という世界です。あまり甘さというものはありません。
 それでいながらとても好きなのは、主人公二人がとても良く出来上がっているキャラクターだからなのでしょう。時々、ああ、こういうのが70年代なのかなぁと思わせるような、ちょっと前後が繋がらないような展開さえあることもありますが、それでも面白いドラマ。

 と言うわけで、結構、どの話も印象的なのですけれども、弱者として描かれる側から特に誰かを取り上げるならば、第3話の恵子(緑魔子)の強気なのに可愛らしい、でもかなり可哀想な感じや、第6話に出てくる盗癖のある女の子、第13話の昭子(吉田日出子)の不思議ちゃんっぷりと寂しい感じ、修と亨とまるで兄弟のように過ごす感じなんかが印象的です。

 印象的といえば、これは敵側で出てきたのですが、第10話にあの写真家の加納典明がオカマの殺し屋役で出てきました(笑)。二代目水戸黄門の西村晃が刑事だったり、他にも沢山、あ!と思う人が出ています。

  お話自体がテンポよく、コミカルな部分とシリアスな部分が自然に流れていて、ラストは切ない系が多いものの、ただ切ないというのともなんとなく違う感じ。二人が、生活破綻者のようでいながら物凄く優しい、それが不幸の原因かもしれないというくらいに実はいい人間で、でも駄目な部分もたくさんあって、とにかく切ないです。

 切ないを連呼しておりますが、切ないだけの話でもないので、男女問わずにお薦めのドラマ。