木暮 修(こぐれおさむ)(萩原健一)
25歳、獅子座。綾部探偵事務所の下働き。
代々木西口にある、綾部貴子が持っているエンジェル・ビルのペントハウスに住んでいる。
綾部貴子のように悪人にはなりきれないため、年中貧乏ぐらいをしている。
故郷は千葉で、幼い頃に両親と死別。一度結婚したが、妻の菊江は病死。
3歳になる一人息子・健太を溺愛している。
現在、健太は彼の親戚筋に預けられている。
漢字に弱い。
酒は何でも飲むが、ペントハウスでは日本酒の”剣菱”を飲んでいた。
煙草はハイライトを吸っている。
(以上はDVDの解説より。以下、私的な感想の混ざった人物紹介)
どうしようもない男なのだけれども、素敵。亨ちゃんほどべったりになるには、ちょっとろくでなし感溢れる人ですが人間が悪いわけでは決してないのが木暮修。
時に思わぬことで、ひたすら兄貴を慕っている亨に理不尽な暴力を振るうので、私は二人を共依存の夫婦みたいに思ってしまうんですけれどもね。保護者チックでもあります。
なんとなく一方通行風味に、亨がゲイっぽく兄貴を愛しているようでありながら、兄貴にとってもまた亨は特別な存在なのでしょう。
というか、普通、亨ほどの勢いで自分を慕う存在というものを持っている人はそうそういないはずで、非常に不安定な生活や、妻を病気で亡くしていたり子供と一緒に暮らせなかったりという心の中にある寂しさを、埋めてくれる存在なのかもしれません。
兄貴、と呼ばれているだけのことはあって、社会的には生活破綻者でも、亨よりは行動に、大人のルールが適用されているようです。
ただし激情しやすいので、大人のルールといっても社会的に良いことばかりではないですが。
亨が自分から離れて行くことや自分よりもいい働きをしたことに対しては、あまり喜んであげない兄貴。とはいえ亨がヘコんでいるときにはとても優しいし、亨が変なことになっている時には、体を張ってでも守ろうとします。傷つけたくない、守りたい、本当に弟のような存在ではあるのでしょう。
亨が自分から独立するシチュエーションでは、亨がヒモをやっていた女性と結婚すると言い出した時だけが、まともに喜んだ場面だったと思うんですが、通常、亨のほうから兄貴との距離を置くことに対しては、とても不機嫌になります。
基本的には優しい性格で、こと子供に関しては他人の子供に対してでも優しさを発揮します。そう考えれば、亨は修にとって、歳は近いけれども子供なのかもしれません。
警察に追われている時でさえ、子供に対しては優しいです。自分の子供を預けていることには負い目を感じているので、子供がらみの事件に対しては保守的になってしまうことも。でも、自分の子供の存在を棚上げにしても、その罪の意識は棚上げできずにいる辺りも、修のいいところなんでしょう。
ちなみに息子の名前である健太は、高倉健の健と菅原文太の太を取って名づけていて、これを人に語る時の兄貴は、嬉し恥ずかしな具合で可愛らしいです(実際には深作欣司監督のお子さんの名前だそうです)。
第14話には、健太くんも出てきます。
この息子、公式な解説では修の親戚に預けられていると書かれていますが、第14話の数ヶ月前までは、確実に奥さんの実家に預けられておりました。
さて、自らの息子と舎弟分の亨の保護者のような彼ではありますが、時々、自分も兄貴分が欲しくなるようで、頼れるオヤジ的存在に、まるで亨のようにくっついて回ることもあったりします。
このあたりの、兄貴も実のところ成熟した大人ではないあたりがまた、この話のいいところのような気がします。
最終学歴は中学校。一回、赤羽少年院、という台詞もありますんで、少年院にも行っていたんでしょうか。
漢字の苦手ぶりは、あの部屋の本棚には一体、どのような本が入っているのだろうと思うほどなんですけれども。小説は漢字が多くて失礼だ、とまで言っているし。
女は、綺麗系ならなんでも良さそうでありながら、たぶん兄貴の好みは、中味が素朴な女です。ユニコーンの「スターな男」という曲を思い出す私。菊江さんがどのような女性かという描写はありませんが、性格は素朴な女性だっただろうと勝手に思っています。
不思議なことに格好の悪いことになってしまった時にすら、格好良いです。これはショーケンさんのマカロニ刑事に通じるものがあるのでしょうけれど。
乾 亨(いぬいあきら)(水谷豊)
24歳。修の弟分。
修とは、ある種のホモ関係。
一方では女性にも惚れやすく、何度も女のために体を張るが、毎回フラれてばかり。
女とベッドに入るシチュエーションは幾度かあるものの、終生童貞だったらしい。
自動車修理工として働いているが、修とともに綾部探偵事務所の下働きもしている。
クラシック音楽を好むなど、芸術嗜好の面も。
東京近郊の漁師町に親戚がいる。
修と健太と3人で田舎で暮らすことを夢見るが、風邪をこじらせて肺炎で死亡。
(以上はDVDの解説より。以下、私的な感想の混ざった人物紹介)
公式なものとはいえ、この年齢設定ってどうなんだ?と思うんですが。
第3話では、二十ニだと自分で言っているし、10話目では兄貴に、おまえは3つ年下だから、と言われているのです。
生まれた時から両親がいない初めから孤児院暮らしの彼に、親戚がいる(第7話)のも少し不思義ですけれど、脚本家さんが色々なので、そういうこともあるのでしょう。そんなことはどうでもいい具合に可愛いです。
頭の弱い子設定ですが、あくまでも微笑ましく、「まぁ、おバカさんねぇ」というような可愛い具合。
おバカさんでも、とっても優しい子です。優し過ぎて、でも頭は回らないので、やけに切ないです。
優しいもののちょっぴり感覚がおかしいらしく、自分がヒモをしている女に売春させてしまえるし(女が乗り気だったのではありますが)、しばしば、女の人はいいことしてお金になるんだから羨ましいと言い、自らも、売春行為ではないものの、最終的にお金が必要になった時にはゲイバーでアトラクションボーイなるものをやってしまうので、どこか欠落していることは確かなのでしょう。
兄貴への「ある種のホモ」な感情は、きっと女の人を好きだという本能的な性衝動を伴う感情よりも深い、肉親への愛情に近いのだろうと思います。
兄貴に、お父さんとお母さんとお兄ちゃん、それに友達という役割を、全て託している、とでもいうのでしょうか。普通、もうこの人とは別れようと決心してもよさそうな場面でも、そうはならない彼。
どうして男は子供を産めないのかな、なんて言い出して、兄貴に「貧しいおかま」と罵られる彼ですが、両親を知らない彼にとって、兄貴は自分の空洞を満たしてくれるという点で、誰よりも愛する人なのでしょう。
兄貴を助けるためにだったら死ねるとか、兄貴が人を殺していたとしてもついていけるとか、おじさんや幼女が兄貴にまとわりつく様にすら強烈に嫉妬するので、やっぱり少し、ホモっぽいのかも。
いや、子供っぽいのかな。
女が大好きなのですけれどもね。
普通の若者らしい、一般的な性癖の持ち主で、最後のほうの予告では「ポルノ狂い」とまで言われてます。
え、それも守備範囲なの? という女性まで好きな場合すらあったりします。
にもかかわらず、裸の女が横にいる状況で、どうすればいいか分からない、なんて場面も。
さらに、どうもその状況になってから出来なくなってしまったらしい場面までもあります。そこはかとなく自覚のないゲイっぽい。そういえば、おかまの友達がいたりするようです。
たぶん彼は、「男同士ではどうにもならない」という壁さえ越えてしまえば、兄貴の恋人やお嫁さんにになりたいほどですが、結構、兄貴とは関係のない独立した生活も持っているようです。
なのに兄貴がいないことは他の何が無いことよりも耐え難い、というほどの慕いっぷりです。
なんというか、変な意味ではなく、大きな意味で心の底からまるごと愛されたいんだろうな、という子です。愛情に飢えた生い立ちだからというのもあるんでしょうけれど、自分の全てを受け入れて貰いたい勢いで、兄貴を好きなのでしょう、きっと。
付いて来るなと言われているのにもかかわらず、兄貴のあとを付きまとう亨に、「おまえ、「女の操」唄え!」と兄貴は言いますが(たぶん、「女の道」ではないかと思います。ググったら「女の操」というのは見付からなかったので。当事流行したらしいです)、「♪あなたの、けしてお邪魔はしないから、お側に置いて欲しいのよ、お別れするより死にたいわ」というような歌詞は、確かに亨っぽいです。
水谷さんの容姿が、チンピラのような格好をしていても可愛らしいので、余計に、兄貴を慕う様が切ないのでした。
だから最終回で兄貴のことを、「結局は赤の他人だ」と言ってしまう亨ちゃんは、なんだか悲しかったです。
二人が出会ったのは物語の始まりよりそう遠い昔ではないようで、ということは中学中退後から働いていたのであろう彼は、兄貴がいなくても立派に生きてはいたわけで、肺炎で死ななかったら、一人で生き抜く力は普通に持ち合わせてはいたのでしょうね。
ちなみに、クラシックを聞きたがるだけではなく、シェークスピア劇の一節を暗唱したり、洋楽をギターで歌ったりもします。おバカさんのようでいながら賢い面も持っているので、生い立ちがさらに不憫かも。
ただし彼も漢字に弱く、天照大神を「てんてるだいじん」などと読んだり、最終的に、高とか波なんていう字すら、読めなかったりしますけど。
ちなみにお裁縫が得意(第10話)。
生涯童貞という設定も、最後のほうでは女のヒモになったり、すでに純潔ではない(川崎のトルコ[念のために書いておきますが、今のソープランド]で卒業したらしい)と言っていたりするので、どうなんでしょう? トルコで最後までは無しということはあっても、ヒモで最後まで無しなんて、ないでしょ、普通。
童貞だったら逆に驚きますが、まさかヒモをしていた女性に対しても、兄貴に対するようなものを求めていて、寝ていなかったりするのでしょうか。いや、単に出来なかったのかしら。そんなことも有り得なくない気にさせられる亨ちゃん。
最終学歴は、中学中退。本人は卒業したかったようです。
でも何で中退したのかは不明。やっぱりなんだか不憫。
全くちなみにですが、うちのハーボットの名前は彼から貰ったのでした。
辰巳 五郎(たつみごろう)(岸田森)
綾部貴子の忠実な部下。
異常に計算高く、金のためなら修を危険な目に合わせることも平気。
反面、貴子の目を盗んで小金を稼ぐセコイところも。
クールを装いながらも実は女好きだったりする。
胃下垂で年中胃薬を服用し、食事もメロンなどのフルーツ系を好む。
猫嫌いであったり、実はカツラであったりと、隠された裏面が多々あるユニークなキャラクター。
途中からは喜劇的な面を押し出し、修・亨とトリオのようなキャラクターになった。
最後に貴子を助けるために、海津警部に捕まった。
(以上はDVDの解説より。以下、私的な感想の混ざった人物紹介)
一・ニ話目では、クールなインテリ男性にしか見えなかった辰巳さん。
ところが三話目・四話目には、ストリッパーやヌードモデルの裸に、変態な勢いで釘付けです。というか、四話目ではすでに、ちょっぴり壊れた人らしさが押し出されてきています。
驚くほど冷たいところがあるものの、完全に冷たくはなくて、本当には悪になりきれない人物。
ずるいこともしますが、仕事熱心なのだなぁと思ったのは、せっかく半裸の女とベッドインしそうになったというのに、手掛けている仕事に対して重要なヒントを女が口走ったら、それまでの勢いはどこへやらで、きちんと仕事人間に立ち返ったところ。
それにしても、塩も買えぬほど貧乏な修と亨からピンハネする、ヒドイ人。でも、端でみているぶんには面白い人。時々、普段からは考えられぬほど異様なハジけぶりで、そこが素敵。
公園で亨を待ちながら、楽しそうに滑り台で遊んでいたりも。
かなりウケました。
スケベでケチでズルイ上に、驚いたことに女の家に泊まった修の話を羨んで、亨にまでエッチなことをしていましたが、どこか愛らしさのある人です。
密かに綾部さんを片思いしています。
綾部 貴子(あやべたかこ)(岸田今日子)
修を雇っている綾部探偵事務所の社長。
常に黒づくめの服を愛用し、その冷静な振舞いは、本物の悪女を感じさせる。
修たちを甘い言葉で巧みに操り、道具のように使う。
過去は一切謎のままだが、財政界や裏の世界に顔が利く。
昔、いくつものアブナイ橋を渡ってきたらしい。
朝食はイギリス流のBLT、酒はブランデー、煙草は葉巻と、なんでも一流の高級品を好む。
最後には、好敵手でもあった海津警部の目を逃れるために船で渡欧。
その後の消息は不明。
(以上はDVDの解説より。以下、私的な感想の混ざった人物紹介)
本当に謎の人。
洋風の素敵な館には、シャンソン(?)が常にかかっています。どうもお父さんが立派な軍人だったようです。肖像画がそんなふうだったので、多分、そうなんだろうと思っただけですけど。
途中で恋愛エピソードも(第9話)出てきますが、あたし的には趣味を疑ってしまいました(爆)。でも本当、「マジなの、綾部さん!?」と思ったのですが、昭和時代の中年の男前は、あのような感じなのだろうか?予告でも男前みたいに言われているし・・・。
修のことを特別な部下だと思っているようでありながら、飢えている彼に、飢えているほうが似合うというようなことを言ったり、案外、酷いことをします。
っつーか、お金は飽きたと年中言っているのだから、もう少し給料を出してやっておくれよ、と思うんですけれども。金をやりすぎて離れられても困るからでしょうか。
人にものを食べているところを見られるのが、セックスを見られるよりも恥ずかしい、という女性。
したたかな悪女。
浅川 京子(あさかわきょうこ)(ホーン・ユキ)
綾部探偵事務所の女秘書。
その見事な胸は常に男たちの視線を浴びているが、本人はいたってクール。
綾部貴子を目標にしていて、日々教養を磨いている。英語を多用するため日系二世の感じもあるが、故郷は長崎で、そこにフィアンセもいるとか。
(以上はDVDの解説より。以下、私的な感想の混ざった人物紹介)
彼女の存在が特に目立つのはは最終回、田舎に帰る場面でしょうか。女の私には、他にはそれほど印象に残るわけでもない人物。多分、昭和四十年代のグラビアアイドル的な人なのでしょう。
普段は事務所でタイプライターを打ってます。
同じく綾部さんに雇われている身ではあるものの、修たちとは違うという意識で働いているようです。まあ、そうでしょうね。だって漢字もろくに読めない彼らに対して、彼女は英語が出来るのですから。 でも、すごく冷たいとかいうのでもないです。
綾部さんに憧れていたようですが、クールな悪女にはなれなかった女性。
なので、それほど印象に残る場面はないものの、彼女の視点で書かれた小説なんかを読んだら、きっと彼女には感情移入し易いだろうなあという人物。
普通ではない面々の中で、自分もそうあろうとしたものの、普通の女性だという点で。