仏像法話　福を分け与える三面大黒天　

　５月２１日の読売新聞に、アメリカ、シリコンバレ－（カリフォルニア州サンノゼ）でホ－ムレスが増えているという記事がありました。あれえ？　好景気が続くアメリカでなぜと思って読んでみますと、好景気と情報産業の集中、ハイテク技術者の高額報酬で土地が値上がり家賃を払えなく、しかたなく、住み慣れた家を手放す人が増えているらしい。また、インタ－ネットなどインフォメ－ションテクノロジ－の急速な発展により、その恩恵を受けている２割の米国人が国民８割以上分の収入を得、貧富の差が大きくなっているということです。FRB議長は「所得格差はアメリカ社会にとって重大な脅威になる可能性がある」と警告しているとのこと。昔は庶民みんあが貧乏だったので格差はなかったようです。
　比叡山延暦寺に伝わる伝説では大黒天が伝教大師の前に現れ、「吾を供養してくれれば、貧乏な僧侶１０００人を養える福を授けて寺を守護してやる」と言ったので、伝教大師は「この比叡山には３０００人の僧侶がいるから、どうかこの僧侶たちを面倒見てくれ」とたのんだそうです。大黒天がこれを受け入れたので、大師は比叡山の三カ所に三面大黒天像を祀ったといいます。この神様には八万四千のご眷属がいらっしゃるから出来ることですね。
　　この世に、一つとして、「わがもの」というものはない。全て、ただ因縁によって人の所に来たもので、しばらくの間そこに留まっているだけの話し。もし富が集まってきたら自分一人のものと考えず、出来る限り国家、社会、貧しい人々、今必要としている人々に分け与えなければいけません。（仏教聖典六方礼経引用）この分け与えてくださる方こそ、三面大黒天であり、円徳院大国殿には秀吉の守り本尊と伝えられる三面の大黒さまが祀ってあります。「絵本太閤記」には、秀吉が弘法大師作とされる、この大黒天像を拾って祀ったところ、足軽からとんとん拍子に出世をしてついに天下を取ったことが描かれています。