5月26日の新聞によると、借金苦から自己破産する人が急増している。99年度は前年比18%増の約12万人3千人、自殺者も98,99と2年連続3万人を突破する勢いで、自殺の原因が「生活、経済」が一番で99年は98年の6.2%から18.4%へと増えている。 長引く不況の影響、突然のリストラ、給与やボ-ナスの目減りに加え、クレジットカ-ドで簡単にサラ金から、返済能力を越えるお金を借りられる事が、更に離婚や家庭崩壊という不幸をもたらしている。公的機関や消費者金融業界の対応は功を奏していないのではと思います。 3万もの人が最後の選択である自殺に陥るということは実際には100倍の300万人位の自殺予備軍(いつ自殺しても不思議でない人々)がいるのではと推測しております。もともと実体のないお金のために、大切な人生を失うのは悲しいことであり、通帳の残高に「0」の字が幾つついているかで、多くの人が喜び、また、苦しみ悩んでいるのは、「お金」という物差しで全てを計ろうとする貨幣社会の実態であります。
人ははからいから、富に執着し、お金に、名誉に、命にまで執着する。大空に東西の差別はないのに東だ西だと大騒ぎし、お金の量に多少の差別はないのに通帳の「0」の字を見て満足したり悲しんだりしている。もともと、人類が誕生したとき、こうした差別の偏見はなかったはず、人間の身勝手な欲から勝手に作られた宗教、価値観であります。
「法句経」に、まだこない未来に期待したり、心配してはならない。過ぎ去った過去を追って悔いていてもいけない、全てのものは小川の泡のように現れては消えながら、流れていく。未来と過去に取り越し苦労していたら、いずれは刈り取られた葦のように痩せしぼむ。 過去は追ってはならない、未来は待ってはならない。ただ現在の一瞬だけを、火生三昧の中で強く立つ不動明王のように強く生きなければならない。ものみな移り変わり、現れては滅びる。生滅に煩わされなくなって、静かさ安らかさは生まれる。信仰を持ちなさい信仰はこの世の最高の友、富、糧。 不動明王は大日経疏(だいにちきょうしょ)には、如来の使者で、右手に剣を持ち左手に羂索(けんじゃく)を持つ。頭髪は長く左の肩に垂れる(辮髪(べんぱつ)。細く左目を閉じきわめて恐ろしい忿怒形(ふんぬぎょう)で童子の姿をしていると説かれる。 また、岩座、又は瑟々座(しつしつざ)に乗り、迦楼羅焔(かるらえん)という火焔光の光背を背にする。 弘法大師空海は、「不動尊効能」の中で火生三昧(かしょうざんまい)にあって智火を成し肥満の童子形の不動明王像は仏に仕える姿であると説かれています。
まさしく現代人に「全ての執着を離れ火生三昧のように強くあれ」と不動明王の行き方を示してくださっているようです。
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