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契約は、近代法における私的自治の最も重要な手段であり、契約の自由を原則としている。契約自由の原則とは、個人はすべてその意思に基づいて自由に契約を締結し、法律関係を形成することができるとする原則とされている。
「近代私法の三大原則@権利能力平等の原則、私的所有権絶対の原則、私的自治の原則」
契約自由の原則の内容としては、@契約締結の自由、A相手方選択の自由、B契約内容の自由、C契約の形式の自由の4つが挙げられる。
しかし、資本主義が高度に発達し、自由競争のもたらす弊害が明らかになってくると、契約自由の原則は、経済的弱者の保護や社会秩序の維持の観点から、多くの制限を受け契約自由の原則は制限を受け修正されている。たとえば、借地借家法、利息制限法、労働基準法など |
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契約締結の自由
契約を締結すこと又はしないことは個人の自由であり、公権力や当事者以外の第三者から強制されるものではない。又、契約によって一般的な身分関係を生ずるものではない。 |
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相手方選択の自由
契約を締結する相手方は、当事者が自由に選択できるし、どんな理由であろうと契約を拒否しても差し支えない。 |
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契約内容の自由
契約の内容は当事者間の自由な交渉で定まる。外部からなんら干渉されることはない。但し、公序良俗(民法90条)強行法規(民法91条)に反する契約は許されない。 |
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契約の形式の自由
契約の要件が当事者間の合意であるから、合意のみで契約は成立する。したがって、その形式は、口頭、書面を問わず、また合意以外の事実を契約成立の要件としない。但し、例外「要物契約」等がある。 |
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契約(法律行為)の3要件
契約自由の原則があるといっても、法律行為の一種であり、契約によって特定人に対して特定の給付をなす債権を発生させることから、以下の3つの要件を民法総則において説かれている。
@適法にして社会的妥当性があること。。
A契約内容が履行可能なこと
B確定する契約であること |
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契約自由の原則の制限
契約自由の原則は、所有権絶対の原則、過失責任の原則とともに、近代私法の三大原則である。しかしながら、わが国の現行法においては、以下のように契約自由の原則を制限している。
@申込の自由の制限(公益性の強い取引、電気・ガスなど)
A承諾の自由の制限(公益的職務執行者は、公証人、医師など)
B形式の自由の制限(宅地建物業法など)
C契約約款にたいする国家の監督
D経済的弱者に対する不利益約款の禁止
E裁判官による契約内容の改訂 |
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契約と信義誠実の原則
契約は当事者相互の信頼を基礎として成り立っている。したがって、契約関係にある当事者は相互に相手方の信頼を裏切らないように誠実に行動するべきである。信義誠実の原則(民法1条2項)は、特に契約法の領域で大きな役割を果たしている。 すなわち、信義則は、契約の締結ないし締結準備の段階でも、契約期間の存続中でも、また契約の終了時においても、さらに終了後の期間でも、契約の前中後を通じての原則であり基準となる指導原理である。 |
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契約締結上の過失責任
契約が締結される過程で当事者の一方に過失があり、これによって相手方に損害を与えた場合、その者は損害賠償責任を負うことを契約締結上の過失責任という。契約の当事者は、契約の縮緬にあたっては、特に注意をして無効な契約を結ぶことにより相手方に不測の損害を与えないようにする信義誠実の原則上の義務を負うことを理由としている。契約締結上の過失の一般的成立要件としては、
@締結された契約の内容が客観的に不能で、契約が原始的に無効である。
A給付をしようとした者が、その不能なことを過失によって知らなかった。
B相手方が善意・無過失であることなど。
損害賠償の範囲は、契約が有効であると信じたことにより生じた損害、すなわち信頼利益に限られ、履行利益は請求できない。 |
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事情変更の原則(事情変更の効果は、@契約解除A契約改訂など)
契約が締結された後に、社会的、経済的事情にり当事者が予想しない急激な変動が生じ、当初の契約を維持することが信義に反し不当である場合、契約内容を変更・修正し、場合によっては解約することをも認める原則を、事情変更の原則という。契約存続中における信義誠実の原則である。
事情変更の原則の要件は、
@契約の基礎となっていた事情に変更があった。
A事情変更が予見できなかった。
B事情変更が当事者の責に帰すべからざる事由に基づく。
C契約通りの履行を強制することが信義則に反する。
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