妙心寺教会
守護神(仁王尊)
老尼のお話の部屋
平成22年12月1日
【守護神とは、一般には国家や地域社会、個人を守る神・諸尊等を言います。】
仁王尊は、私たちがお寺にお参りに行くと、まるで門番のように
祀られている像の事です。

 山門に立ち、仁王立ちしている尊像は、仏の法を求めてゆこう
とする人々の心の中にある欲望や名誉心、利己心などの「煩悩」
を打ち砕いて、「教えに従いなさいと言っているのだ」と伝えられて
います。

 像は一対で祀られていますが、本来は一体(執金剛神)だった
そうです。

 向かって左の尊像は、「密迹(みつじゃく)金剛力士」と呼ばれ、
古代インドの武器「金剛杵(こんごうしょ)」を持ち、口を開けていま
す。「阿(あ:開始)」と言い、菩提心を堅固に持ち、あらゆる「煩悩」
を打ち砕く姿を現したと言われています。
 右は、「那羅延(ならえん)金剛力士」と言い、口をギュッと結ん
で智徳を備えた姿を現していると言われております。
この「吽(うん:終わり)」と「阿」で「阿吽(あうん)」になります。


 日本で一番古く祀られたのは、文武天皇2年(698)に長谷寺
の法華説相図に裸形の仁王像が彫られてあるのが初めとされて
います。


 また、日本一大きい仁王像は東大寺南大門に祀られており、
8メートル以上もあります。運慶・快慶の作で、僅か二ヶ月で造った
そうです。


 昔の修行者は、「念持仏」を帯していました。「念持仏」とは、
自身の理想とする姿を示すもので、観音様を持つ人は観音のよ
うな優しい心に、不動尊は不動の強い心を理想としていました。
 
「日本霊異記」の中には、三月堂の秘仏である仁王尊は、東大
寺の開山(前は金鐘寺)良弁の「念持仏」であり、仏法を守り、怨
敵を調伏するための尊像であると言われています。
法隆寺中門金剛力士(阿形)
法隆寺中門金剛力士(吽形)
 金剛力士(仁王尊)が祀られている有名な寺院は、台東区浅草寺、身延山久遠寺など、三十寺ほどがあるそうです。
 埼玉県秩父の妙圓寺(みょうえんじ)には、立派な仁王尊が祀られ、古くから近隣の人々に信仰されています。
 また、仁王尊にはよく草鞋(わらじ)が奉納されています。それは、「健康で無事でいられますように」との願いを込め
てお供えしているのだそうです。