守護神(地蔵菩薩)
平成22年4月1日
【守護神とは、一般には国家や地域社会、個人を守る神・諸尊等を言います。】
今月は、皆さんに一番親しみがあると思われる「地蔵菩薩、お地蔵様」の話です。
釈尊の滅後、弥勒菩薩が次の仏として、世に出現すると言われています。この弥勒菩薩が出現するまでの間
、仏のない時代が続くので、その間、人々を救済するために地蔵菩薩が現れました。
「地蔵」とは、梵名では「クリティ(大地)」・「ガルバ(子宮)」を意味しており、大地が全ての命を育む力を蔵する
ように、「我が名を唱える人を、苦から救う」という誓願をたてられたので、「地蔵」と名付けられたそうです。
地蔵菩薩の起源は、昔、二人の王がいて、その一人は「自ら悟った後、衆生を救おう」と考え、もう一人の王は
「まず、衆生を悟らせてから、自らも悟ろう」と考えました。
前者は、「一切智成就如来」となり、後者は、「地蔵菩薩」となりました。
日本における地蔵信仰については、平安時代を過ぎ、
鎌倉時代に入ると、浄土教が民間に広がり、地蔵信仰を
否定する動きがおこりました。しかし、地蔵菩薩の御利益
が身近であり、現世利益的な面が好まれて、民間に信奉
されるようになったのです。
浄土に住まず、人々の間にあって、大悲を以て人々の
苦を代わりに受ける地蔵様は、「身代り地蔵」としての信
仰に発展しました。
武士の間では、向かう所敵なしという「勝軍(将軍)地
蔵」や、地蔵が戦場に現れて危急を救う「矢取地蔵」などが
生まれました。
「極楽往生の叶わない人は、必ず地獄へ堕ちるもの」と
いう信仰の中で、「地蔵様が地獄の責め苦に苦しむ人々
を救済してくださる」という人々の願いが、地蔵信仰になっ
たのです。
【吹上の妙徳地蔵尊】
この地蔵信仰が日本の風土に根付く過程で、さまざまな民間信仰と習合して、地蔵信仰は多彩な伝説などを生
みだしました。今日では百近くの名を持つ地蔵尊が全国に祀られています。
お地蔵様が右手に持っている杖を錫杖といいます。錫杖は、修行僧が杖の頭につけた金輪を鳴らして金属音を
出し、僧が来たことを知らせるように、澄んだ金属音を出します。またこれが鳴ることによって、地下の虫たちが逃
げるので、殺生の罪を免れるともいわれ、時には猛犬や野獣から身を守る護身用にも使われました。
左手に持つ珠は、「如意宝珠」と言います。
思いのままに願いが叶えられる珠と言われています。
来月は、「六地蔵」・「恐山の地蔵」・「賽の河原」のお話をいたします。