平成22年3月1日
守護神(馬頭観世音菩薩)
【守護神とは、一般には国家や地域社会、個人を守る神・諸尊等を言います。】
馬頭観音は、寺院などにはあまり祭祀されていません。多くは農村の田畑の中や路傍などに石仏として、祀られ
ています。また、競馬場にも祀られています。
観音は、梵名を「ハヤグリーヴァ(馬の頭をもつ者)」といいま
す。ヒンドゥー神話によると、インドの聖典「ヴェーダ」を魔神に盗
まれたのを憂慮した梵天が、「ヴィシス」に取り戻すよう要請した
所、「ヴィシス」は馬の頭に変身して、聖典を取り戻したという物
語から生まれたそうです。
馬頭観音は、自らは解脱を求めず、娑婆世界にとどまり、馬
が草をむさぼり喰うように諸悪を駆逐し、衆生のあらゆる苦悩
を断ち切ることを使命としています。その為か、体の色は赤く、
【行田の馬頭観音】
顔は恐ろしい忿怒相で、三面の額には縦の目が付き、牙を出して、髪の毛が逆立っています。
変化した観音の中で忿怒相なのは「馬頭観音」だけであり、「馬頭明王」、「馬頭金剛明王」、「大力持明王」と
も呼ばれています。
日本には天平時代(6〜7世紀)に中国から伝えられました。武家の時代になると、馬は戦闘用として貴重な動
物でもあったので、観音の信仰が盛んになりました。江戸時代に入ると、家畜の守護神として、旅の道中の安全
を守る菩薩として信仰され、路傍や田畑に「石仏馬頭観音」として、祀られるようになりました。また、畜生道の救
い主とみなされるようになり、農耕の盛んな関東地方では、特に馬の守護神として信仰されるようになりました。
このように変遷してきているため、馬頭観音
本来の功徳に基づく信仰は見られないのです。
現在では耕地整理が行われ、村の各所に祀
られてある諸像とともに1カ所に集められていま
す。ですから、路傍や田畑に祀られてあるのを見
ることは、少なくなりました。
【集められた野仏】
馬は、農家にとって大切な労働力です。そのために家の棟の中を仕切り、馬小屋を作って一緒に住んでいまし
た。昔は、身近な存在の馬でしたが、現在では普段見られることはなく、競馬場や牧場まで行かないと、その姿
を見ることはできません。