平成22年1月1日
守護神(観世音菩薩・聖観音)
【守護神とは、一般には国家や地域社会、個人を守る神・諸尊等を言います。】
日本で私たちの身近にあって、最も信仰されているのは
「観世音菩薩」と思われます。
菩薩への信仰が日本に伝わったのは、6世紀から7世紀
とされています。
この菩薩の名を称えると、その音を観じて願いを成就させ
るという功徳を説く「観音経」は法華経に含まれた一章です。
正しくは「観世音菩薩普門品第二十五」といいます。
また、観音菩薩が救うべき相手に応じて、天界・人界の
三十三の姿に変身して、その苦悩に応じて、慈悲の心で衆
生を救うとされます。変身する前の元の観音の姿は、「聖観音」
と呼ばれています。「聖観音」は、手に水瓶や蓮華を持った
立像が一般的です。
【聖観世音菩薩】
また浄土経典は、観音が現世だけでなく、来世の救済にも利益があることを示したので、特に信奉されるようになり、霊験在る観音像を本尊とする寺院への参詣が盛んになりました。
そのため、各地に観音霊場がつくられ、霊場を結ぶ巡礼が始まったのです。観音の33身にちなんだ西国33ヶ所霊場は12世紀に、13世紀には板東33ヶ所、15世紀に秩父33ヶ所が成立しました。後に秩父に1ヶ所増えて、100ヶ所巡礼となり、現在でも続いています。
観音信仰の起源については、善財童子が求法の旅を続け、28番目に会った善知識(修行を指導する人)が、観世音菩薩でした。そして、この観世音菩薩から「生きとし生ける物全てがつ怖畏の念から、解放されることを学んだ」と言われています。
観音経には観音の救いを得るために、「名を唱える」、「名を呼ぶ」、「名を保持する」という言葉がしばしば用いられています。何故「名」が強調されるのでしょうか。
古代インドにおいては、「名」は単なる名称や呼び名ではなく、「名」とは、それを持っている物の本質を意味していました。したがって、観世音菩薩の名を呼び、名を保持することは、その名を呼ぶことによって、観世音菩薩の本質に迫ろうとする努力も意味していると考えられるからです。
観世音菩薩の本質とは、苦悩に応じて、慈悲の心で衆生を救うことであります。
私たちも、観音の心を求め、それを行ずる努力をすることによって、観音の救いを得ることになるのではないでしょうか。
【参考文献】
▼ 神と仏の原郷 (榊品一郎 著)
▼ 日本の仏様 (速見侑 著)
▼ 仏像イコノグラフィ (岩波書店)
▼日本の仏教 仏と菩薩 (石上善応 著)
▼ 日蓮宗事典 (日蓮宗)
▼ 佛像圖彙 (紀秀信 著)