春の息吹

 庭に何本かある早咲きの桜がほんのり紅い花を咲かせてをります。この桜は枝垂れ桜の根元に脇芽で生まれたのを育てたものです。去年は数えるほど、今年は小さい一重の花が枝一杯に咲きました。親木である枝垂れ桜も美しく咲いてくれました。
 先日、たまたま「徹子の部屋」を見てゐると元スパイダースの井上順が出演していました。その中で次のように話していました。「草や木にも人の心が解るんです。本当に可愛がるとそれに応えてくれるんですよ。僕は今鉢植えのサボテンが家族です。朝は『お早う』『ただいま』夜は『おやすみ』と言ってその鉢を抱きしめるのです。この家族は素晴しい。本当なんですよ。折れた茎が癒えて立ち上がったんです・・・・・・」と
 3年ほど前にいただいた「ハナキリン」を今大事に育ててゐます。今年の寒さで葉が急に全部落ちてしまいました。大急ぎで部屋に入れ「枯れないでね。枯れないで」と何時も呼びかけました。トゲトゲの茎は力がなく駄目かしらと幾度も思いました。ところが半月程たった時その茎の先端にほんの少し緑らしき物が見えました。それが目に見えない程ですが日ごとに大きくなるのです。その積み重ねの日が続き今はその頂上に3ミリほどの小さな可愛い花をつけてくれました。

 ある朝勤行をしてをりました。と、お供えしてある花が水が足りないと言うのです。花瓶の所へ行き指を入れました。水に触れません。早速に係の人に水を足してもらいました。こんな事が何度かあり、季節や花の種類によって必要な水の量も違い、組み合わせる花も考えなくてはならない事を教えてもらいました。
 春になると色とりどりの花木が私達の目を楽しませてくれます。その息吹を感じながら穏やかな心で日常を過ごせたらどんなに良いことかと思いながら日毎に大きくなる牡丹の莟や芍薬の伸びる茎を見て咲いた姿を思い浮かべる今日この頃なのです。
 

妙心寺教会
老尼のお話の部屋