明けまして おめでとうございます。

(1)皆様と共に新しい年を迎えることのできましたこと有り難く、又新しい生命(いのち)をいただいたと思い感謝いたしてをります。
 さて皆さん「お正月」が参りますと門松につけられた注連(しめ飾り)、神社などからいただく御幣束等ふだんあまり見たり手にふれたりすることの無いものに気づかれるかと思います。
 大昔、人は大自然と共に生活をしてをりました。陽が落ちて夜になると物の判別がつかなくなり、暗闇で野獣などに襲われたりするので人々は闇を恐れました。そのうちに落雷などによって火を知り夜の闇を照らす灯火を生みだし又焚き火によって食物を調理することを覚えました。そのような生活をするうちに火を崇め、火に魂があると考え、やがて火を神様≠ニしてお祀りするようになっていったと伝えられてをります。
 また水辺に居住することが、生活をするのに便利であることを知りました。しかし大水や日照り(渇水)などで農耕による収穫が不能になった時など水の大切さとその力の凄まじさ等を知って畏敬の念が生まれ、水にも魂が宿ると考え川辺に水神を祀り敬いました。
 男は山に行き狩猟をしたり、木を伐採したりして生活を守りました。そして山にも山の神があるとして怪我や火難等にあわないようにその魂を祀り畏敬の念を抱くと共に無事を祈りました。
 これらのように大自然に畏敬の念をもち又感謝をする古代の日本人の心が受け継がれたのが現在の幣束の源ではないかと私は考えます。
 今世情を見るにそのような素朴な感謝の心が失われつつあると思います。せめて、お正月等にわずかに残されてゐる日本の風習とその心を伝えることが出来たなら世を騒がせてゐる種々の問題(環境、人命軽視等)の解決の糸口がつかめるのではないかと私は考えています。

(2)幣束は、昔から神様の乗り物又は神の心が乗り移るものとされてゐます。
 これを大別すると「幣串のあるもの」と「幣串の無いもの」とに別れますが大部分は前者に入ります。そして幣を開いた形が人の衣帯(装束)をつけた姿に似てゐることから幣束と言われてゐるようです。幣串の無いものの部には(イ)道場の荘厳(ロ)邪気を防ぐための注連幣(シメ)が大半を占めてゐます。また夏祭りなどに各家庭に注連縄を張り注連をつけたり、神輿につけるなどして用いられます。

御幣束の話-1

御幣束の話-2

 御幣束には、智泉流・積善坊流等たくさんの流派があります。当教会には昔から伝わってをります「お正月にお迎えする御幣束」がありますので簡単にお話致します。
 
 
 (イ) 歳神(としがみ)・・・・・・「歳徳神」「お正月様」とも称され一年の間万物を生ずる徳のある方位の神様とされ年の始めに祀ります。この神の座する場所は「あきの方」とも言い万事吉方とされます。



 (ロ) 天照大神・・・・・・昔から家を建てると必ずといってよい程「神棚」が造られ日本人の大先祖として各家に祭祀されてをリます。俗に「大神宮様」と言われ尊ばれています。




 
(ハ) 大黒天神・・・・・・福を授ける神様として祀られ古くから信仰の対照となり甲子(きのえね)大黒天神講等があって民間に流布してをります。



 (ニ) 守護神・・・・・・稲荷様は五穀豊穣・商売繁昌等を守る神様として祀られ初午祭が行われてゐます。また「氏神」として八幡様を祀ってある家もあり屋敷鎮守・子孫繁栄を守護してをります。



 (ホ) 荒神(こうじん)・・・・・・当家では、火(赤)・水(青)・土(黄)の三色を用い人が生命を保つための源である食事を作る台所に主に祀ります。また「火伏せ-火難除け」の神様としても祀られてをります。



 (ヘ) 佛幣(ぶっぺい)・・・・・・正月に佛壇に安置し感謝の心を込めて給仕をします。



 (ト) 厠神(かわやじん)・・・・・・烏樞瑟摩明王(うずさまみょうおう)のことで、この明王は臭穢(しゅうえ)を除くことを司るとされてをります。現今では厠神として祀られてをります。又厠-トイレは、使用する場合一番気持ちのゆるむ処ですので邪気の入らぬ為にも祀られます。



 その他 三宝尊(さんぼうそん)・水神・祓幣(はらいべい)等があります。いずれも法味(ほうみ)-御経をお唱えし家内安全・身体健全を祈願し授与します。又この他、地鎮祭・方位除に用いる御幣束など種々あり、時に応じて安置します。

(イ)歳神

(ロ)天照大神

(ハ)大黒天神

(ニ)守護神

(ホ)荒神

(ヘ)佛幣

(ト)厠神

老尼のお話の部屋
妙心寺教会