妙心寺教会
老尼のお話の部屋

六波羅蜜のお話〔X〕

平成19年9月1日

六波羅密とは梵語で菩薩(悟りを求める人)が涅槃(悟り)の彼岸に至るために修行する六種の行のことです。

【禅定】(禅那波羅密:ぜんなはらみつ) 保つ

 心を一つにして真実を追い求め、煩悩や雑念
に心を乱されず、よくその心を保つこと、また、そ
の状態になる為の修行を言います。一般には座
禅という方法がよく知られてをります。

第二次大戦中、国内には「特高」と呼ばれる人たちがいました。この戦争について人々の思想を秘密に調べ、軍の意に沿わない考えを持つ人は直ちに連行され、むごい仕打ちを受けたそうです。

 昭和15年頃のことです。薄暗くなって、顔もよく見分けられない夕方に男の人が2人、不意に家に入ってきました。母、日祥法尼を鋭い声で問いつめています。教会の書類を手荒く調べ、厳しい調子で詰問しています。私は「ずいぶん威張っているなあ」と思いながら襖のかげから息をひそめてのぞいてゐました。母は、少しも慌てずに何か話をしていました。そして、その人たちが帰った後一言、「特高だよ」と言っただけでした。

また、ある日、男の人が5.6人でざわざわっと入ってきました。創価学会の人たちが折伏に押し寄せたのです。その時も母は少しも騒がず、何か話をして帰しました。
 禅定とは一寸違うかもしれませんが、母の法華経を信ずる一念が確立しているからこそ、あのような振る舞いが出来たのだと思ってをります。

 禅定とは、時に当たって揺れ動かない心境を保てるようになる為の修行ではないでしょうか。