妙心寺教会
老尼のお話の部屋

六波羅蜜のお話〔U〕

平成19年7月1日

六波羅密とは梵語で菩薩(悟りを求める人)が涅槃(悟り)の彼岸に至るために修行する六種の行のことです。

【持戒】(尸羅波羅密:しらはらみつ)     守る

 持戒とは戒律を受持し、守ることを言います。この戒を守ることによって、よく悪業を制して、心身清浄となり、悟りの彼岸に至るとされ「六波羅密」の修行の第二にあげられてをります。
戒の種類はたくさんありますが基本的なものと言われる「五戒」について簡単に説明します。

(1)不殺生戒  生き物を殺してはならない。

(2)不倫盗戒  物を盗んでははならない。

(3)不邪淫戒  よこしまな性的関係を結んではならない。

(4)不妄語戒  うそをついてはならない。

(5)不飲酒戒  酒を飲むことによって他に迷惑をかけること
           があるので、そのような酒を飲んではならない。

 小乗戒・大乗戒などいろいろありますが、「戒」とは人としての生き方の根本的なあり方を説いたものです。
 日蓮大聖人は、持戒について末法の現在では「唯だ法華経を持つ(たもつ)ことを持戒となす」と謂われ、「ひたすら法華経を信じ持つ(たもつ)ことが何よりの戒である」と説かれています。
 また、「受くるは易く、持つ(たもつ)は難し、去る間成佛とは持つ(たもつ)にあり」と仰せられてをります。

法華経を持つ(たもつ)ことにより、「五戒」が自然に持たれるのです。

六波羅蜜のお話〔V〕

【忍辱】(せん提波羅密:せんだいはらみつ) 耐える

六波羅密とは梵語で菩薩(悟りを求める人)が涅槃(悟り)の彼岸に至るために修行する六種の行のことです。

忍辱とは忍耐、耐え忍ぶことを言います。慈悲の心を持ち、困難や怨害(おんがい:人を憎み難儀をかける)を耐え忍ぶことであり、菩薩の一切忍(いっさいにん:全ての事を忍び堪える)として次のことを修行します。

(1)在家・出家に対しては他の怨害より生じた衆苦を堪忍する。

(2)菩提(ぼだい:悟りの道、正覚)を求めるために一切の苦難
  を忍受する。

(3)一切法(いっさいほう:全ての仏道)において勝れた覚慧(か
  くえ:真理を識別する心の目)を持つために修行して安立(あ
  んりゅう:安心立命)の地に住する。

日蓮大聖人御遺文「諸願成就抄」に
 「せん提波羅密と言うは是れ天竺の語なり。唐には忍という」と説かれ、忍辱仙人の故事をあげています。
 昔、仙人が訶利大王に身体中を切り落とされても瞋らず(いからず)衆生済度の第一に王の利益(りやく)を誓願した。
 忍辱仙人とは釈迦菩薩の前世であり、一切の怨害や苦難を耐え、慈悲の心を持って利他(りた:他人を幸福にすることを自分の最善の行為とする)を誓願することを「せん提波羅密」の行とされています。

 卑近な話ですが、私は小学生の頃「拝み屋の子」といわれ「ドンツク、ドンツク、ドンドンツクツク」と友達に囃されました。それは、とても恥ずかしく、嫌で悲しかった思い出です。
 傘寿を越えた今でも、時には「拝み屋さん」とか「あの先生はとてもよく当たるという話を聞いたので相談に参りました」といって来られる方もあります。
 今の私は、このお題目を弘めると誓ったことを信じているので、なんと言われても心が騒がなくなりました。この当たり前のことを、「本当にそう信じています」と言い切れるようになったときは、数十年の月日が経ってをりました。

法華経を持つ(たもつ)ことにより、「五戒」が自然に持たれるのです。