数珠(念珠・数珠)のお話

妙心寺教会
老尼のお話の部屋

平成19年3月1日

 佛典中に初めて数珠のことが出てくるのは「木木患子経」(ぼくげんじきょう)です。難陀国(なんだこく)の波琉璃王(はりるおう)が「民衆を苦悩から救うために、我々にも出来る修行法を教えてください」と釈尊に願いました。釈尊は「もし、煩悩・業苦を滅し去ろうと欲するなら、ムクロジの実、百八個を貫き通して輪を作り、それを常に持って行住坐臥に渡って一心に佛法僧三宝の名を唱えてムクロジの実を一つ繰り、また唱えて実を一つ繰るということを繰り返しなさい。そのようにするならば、煩悩・業苦が消滅し功徳が得られるであろう」と説かれました。このことから、佛教においては「数珠は身を守る」とされ、用いられるようになりました。

 日本には佛教伝来と共に伝わり、聖徳太子・聖武天皇が使用したといわれる数珠が正倉院に二連残ってゐるそうです。
 また、数珠が僧侶以外の一般の人々に使われるようになったのは鎌倉時代以降とされてをります。

(注)木木患子とは羽子板の羽根の玉に用いられ
   るムクロジの実のことです。

(1)数珠の素材
  @木 材: 黒檀、紫檀、白檀、つげ、梅など
  A木の実: 菩提樹の実
  B石の珠: 水晶、メノウ、メノウなど
(2)数珠の形式
  

   宗派によって多少の違いがありますが、親玉2個、主玉108個、主玉の間に入れる小粒の珠4個
  (四天王・四菩薩)があるものが正式とされ、本連(ほんれん)数珠、二輪(ふたわ)数珠といいます。
  また、略式に珠の数を減らして用いられる数珠は片手数珠、一輪(ひとわ)数珠といいます。現代で
  は腕輪数珠や房なしのブレスレット型が出来ました。
(3)数珠の房の種類
   梵天(ぼんてん)房: 房の先端が丸く刈り込んである。
   装束(しょうぞく)房: 僧侶が使用する長房のもの。
   紐(ひも)房:      打紐がそのまま房のようになるもの。
(4)数珠の扱い方
   お経を唱えたり、佛さまを礼拝したり、故人の供養などに使う道具です。丁重に扱いましょう。数珠を
   掌の中に入れて揉んで音を出したり、床や畳の上に直接置くことのないよう気をつけます。
                                     参考資料: 佛事の豆知識、佛事行事集

 以上、簡単にお話いたしましたが、私の教会では信者の方の信心が決定したと思われた時「信心の心で結ばれた仲間になりました。長く一緒に心を磨きましょう」と、話をして数珠を授与してをります。
 話は変わりますが、私が子供の頃は「じゅずくだま(図鑑ではじゅずだま)」の実を採って糸を通し、首飾りや腕輪にしたり、数珠のように揉んで遊んだりしました。固い白灰色の実を実(珠)どうしで揉むと良い音が出て、それを楽しんだものでした。今考えると、家の中で数珠が使われてをり、それを見ている子供達が真似たものだと思われます。昔は佛事が日常の生活に根付いてゐたのです。現代は何を子供達に伝えられるのでしょうか。文化、文明、栄耀、栄華ではなく、人として大切な「感謝の心と生き方」をぜひとも伝えていただきたいと念ぜずにはいられない今日この頃です。
                                                         合掌

   導師数珠        装束数珠         梵天数珠         装束数珠        祈祷数珠       腕輪数珠
    (石)            (白檀)           (黒檀)         (菩提樹の実)       (木と石)          (石)