妙心寺教会
「地鎮祭」とは
老尼のお話の部屋

平成19年12月1日

 「家を建てたいと思うのですが、何かあったら嫌なので地鎮祭をしていただきたい」
 地鎮祭を頼みに来られる方々は、ほとんどがこう言います。そのお話を聞きながら、私の思う地鎮祭の在り方を話し、納得していただいた方に地鎮を行っています。

棟板(裏)

 棟板(表)

(1)「家壊し」のこと
 新しい土地に家を建てる方は割と少なく、今まで住んでいた家を壊して新築する方が多いです。そこで、まず「家壊し」から始まります。
@神棚・仏壇に向かって「今まで住まわせていただきましたが、この度新築をすることに致しました。有り難うございました」と感謝の念を込めてお話しをする。
A建物の柱の一本について考えても、まず生きている木を伐って(命を絶つ)柱が出来ます。
 そして役目を終えた今、廃材となるのです。この様に日常無くてはならぬ「台所・トイレ・風呂場等」も命の一つと考えると、その命を絶つことになるのですから、感謝して御礼の誠を捧げることが大事であるとお話しし、日を決めて御礼を申し上げます。

(2)地鎮祭
 地所は縁あって自分の物となっていますが、土地そのものは「預かり物」と考えています。
 今は蛇口をひねれば水が出る。水道料を払っているのだから当たり前、スイッチを入れれば電気がつくのも当たり前、ガスも水道も電気も料金を払ってゐるのだから当たり前と考えていませんか。水は人間が作った物でしょうか。食べ物を産み育てる土地は誰が作ってくださったのでしょうか。水も木も土も、皆大自然が与えてくださっているのです。在るべき所に在りあらしめる力、それを私は本佛と心得てをります。
 今の私達は文明文化という美名のもとに「生かされてゐる」という感謝の心を忘れています。
 地鎮祭とは縁あって預けられ、与えられた土地に住まわせていただく為の一つの儀式であり、「家」は建てるのではなく、建てさせていただくのだという心を持つべき、とお話し致します。
 その為に、土地の神々に御挨拶をするのが地鎮祭なのです。
 私は易者ではありません。しかし、何千年と伝えられている土地の神々や方位の神々は連綿と伝えられるだけの理由(いわれ)があるはずです。その神々に頼るだけが良いとは思いませんが、古人の幸せを祈る潔い心から伝えられてきたものだと考えて、地鎮祭を致してをります。