揚げ雲雀
あ ひ ば り
平成18年6月1日
久しぶりによく晴れた日、朝早く散歩に出かけました。いっぱいに水を張った田圃は、朝日に照らされて、「キラ、キラ」と輝き、そよ風に乗ってその「キラ、キラ」が波のように押し寄せてきました。・・・・
いつか私は、その光に包まれています。
目の前に縁の麦畑がみえます。風邪に吹かれて葉面がしなやかにゆれています。顔の長い小父さんが、竹の鳥籠を手に提げ金歯を光らせ笑いながら近づいてきました。小鳥屋のFさんです。
「ア、今日は揚げ雲雀の日」と解りました。
逆三角形の色の白い小父さんも来てゐます。着流しの姿で手にやはり鳥籠を持ってゐます。Sさんです。笑うとやはり金歯が光ってゐます。
まだゐます。眼鏡をかけた丸顔の小肥りの人です。少しむっかしい顔をしながら手にした鳥籠をのぞいています。続いて何人かの旦那衆が鳥籠をもって集まりました。
「揚げ雲雀」それは飼いならされた自分達の雲雀の囀る声と空に上がった高さを競うのです。
籠から放たれた雲雀は麦畑の上に空高く飛んで澄んだ声で「ヒュル、ヒュル」と囀るのです、鳴き声と空に飛んだ高さが優れた鳥をきめるのです。足元に銀色の小さな「優勝カップ」がおかれてをりました。
今私の歩いてゐる道は豪雨の後で水面からほんのわずか早苗の葉先が見える田圃が連なっています。昔は二毛作で農家の方は稲の収穫の後、麦をまき寒い中、手を腰に当てて一歩づつ横に歩いて麦踏をして麦の収穫をしました。
70年も前の思い出が光る水面から突如として現われたようです。
この季節、色々の小鳥の囀りがきかれます。今は野鳥は飼育してはならないそうですが此の所、雲雀のあの囀りを聞いた覚えはありません、雲雀は何処へ行ったのでしよう・・・・・・
ちなみに雲雀はデンマークの国鳥と書かれてありました。