「あれ、どうしたのその顔」とAさんが言いました
 「ほんとだ、顔の真中が三角に黒くなっている」
 今から40年も前の話です。行脚中は頭巾をしているので顔の正面は三角になって日が当たるのです。ですから、夏の日盛りに行脚をすると顔の真中だけ逆三角形に日焼けしてしまうのです。
夏の日の思い出
平成18年9月1日
撃鼓行脚頭陀行
 その頃私は東京都中野区に住んでいました。そして月に3回泊りがけで埼玉県東松山市の妙昌寺へ修行に通ってゐました。その修行の一つに「撃鼓行脚頭陀行」というのがあります。修行を始めた次の月から師匠にその修行をするように話され1人で始めました。
 一年目は、中野〜新宿〜所沢〜飯能〜明覚〜妙昌寺の往復、2年目は明覚から嵐山を廻り師匠の修行仲間のK寺で唱題修行をさせていただいてから妙昌寺へ参りました。
 こんな事がありました。あまりに暑いので傍の「新田神社」で一息入れていました。と神社で遊んでゐた子供達が近くによって来ました。
「小母さん、何でこんな事しているの」
「今の世の中はどこかで何時も戦争や、大水、飢饉等が起きていて安心できないよね。それは人々の心が荒れてゐて皆欲張りになってゐるからだと思うの、私はそのような人の心が少しでも清らかになってもらいたいと思ってこうしてゐるのよ・・・・」
「フーン、じゃあ頑張ってね」
私が出かけると少しの間あとについてお題目を唱えてくれました。
 40年も前のことなのに世の中は少しも変ってゐるように思えません。いいえ、もっとひどくなってゐるのではと思っています。何とかしなくてはと考えます。でも私の出来ることは、ささやかなもので人様の相談に応じて人としての生き方を話したり、力づけたりすることです。
 人として生まれるのは、その人に応じて役目があるといわれてをります。ですから私はその役目を果たせるように精一杯生き続けることを目的としてをります。皆さんもどうか自分の役目を見出して生きられることを願っております。世の中で必要でない人は居ないと思ってをります。
40年前の私です。
妙心寺教会
老尼のお話の部屋