【食法(じきほう)】
 「天の三光に身を暖め、地の五穀に神(たましい)を養う。皆これ本仏の慈悲なり。一滴の水も国恩よらざるなく、一粒(いちりゅう)の米も同胞の辛苦によらざるなし。我等今、菩薩道を行じて安んじてこの飯食を享(う)く。法悦感謝極まりなし。願わくはこれによって慧命(えみょう)を増益し、精進の力を養い、以て信行を成就し、仏恩国恩同胞の恩に報ぜん。」
 ※天の三光→月・日・星  
 ※地の五穀→米・麦・きび・稗・豆
 ※本仏→遙かな昔から仏になられた釈迦牟尼仏。久遠  実成の釈迦牟尼仏。一切のものを在るように在らしめるもの。
経に曰く「是人舌根浄。終不受悪味。其有所食噉。悉皆成甘露。」
 ※この人はどんなものを食べても、その食べたものが口  にさわるとか身にさわるとかいうものはない。食べるものはことごとく変じて甘露となるのである。
 これは「日蓮宗信行要典」の平成2年版に掲載されている「食法」です。この「食法」は、食前に唱えます。
 昔副担任が小学校の教師をして、社会体育で小学生にバレーボールを教えていた時代、当教会で夏合宿を行って
いました。その時に児童にも唱えさせたのです。
 その後何年か経ったある日、女の子が訪ねてきました。合宿に参加した子です。
「合宿の時にいただいた食法を家族全員で唱えています。そのプリントが傷んでしまったので新しいものをいただけま
せんか。」
と言ってきたのです。
 合宿から10年近く経っていると思います。有難い事と思い早速差し上げました。

 今回のお話を機に、「食法」が掲載してある手許の経本を調べてみると、昭和52年発行の「日蓮宗信行要典」が始め
でした。次に平成2年発行の「日蓮宗信行要典」に掲載されていました。そして、現在使用している平成4年発行の「日
蓮宗信行要典」には、もう「食法」は掲載されていませんでした。
 この「食法」はあまりにも長いので、当教会では次のように覚えやすくして唱えております。
「我等今、安んじてこの飯食を享(う)く。皆これ本仏の慈悲なり。願わくはこれによって心身を養い、以て信行を成就し
仏恩国恩同胞の恩に報ぜん。南無妙法蓮華経。」

 「食法」について調べてみて、この世の中が変わってきている事が分かりました。「恩送り」という言葉を知り、そのい
ちぶんかもしれませんが
「当教会の食法は残しておきたい。」
と願っております。

平成28年10月1日
妙心寺教会
老尼のお話の部屋
恩送り (2)