コロッケさんは、中学生の時に「真珠腫性中耳炎」にかかり、右耳が聞こえなくなったそうです。

 
「目で聞き、耳で見るのが僕の感覚なんです。耳をふさぎ目だけで見て、どんな音か、どんな声かを想像する。目を閉じて神経を集中させ、耳だけで聞くと、映像が頭に浮かびます。想像すると物事がさらに理解出来る。聞こえなくなった事で得た感覚です。たから、年をとって耳が遠くなったり、目が見えなくなったりしても悲観する事はありません。失う事で磨かれる能力は、きっとあるはずです。」

 この文を読んだ時
「コロッケさんは人としての生き方の一つを悟った方なのだ。」
と思いました。
 この言葉は、簡単に出てきたものではないでしょう。何故ならば、彼が自分の右耳が聞こえない事を公表したのは、僅か9年前の事だからです。

 「目は口ほどに物を言う」という言葉があります。「ことわざ事典」によれば
「何も言わなくとも、目は口で言うのと同じくらい相手に気持ちを伝える事が出来るという事。言葉では誤魔化していても、目を見れば真偽のほどは分かってしまうという事。」
とあります。
 人と対面していて目を合わせると、言葉だけでは伝えきれない思いを聞く事が出来ます。私は人の悩みを聞く事が多いので、
「目で聞くという事は、心の声を聞く事だ。」
と解釈しました。

御宝前に向かって何人かの人と唱題修行をしている時に、後ろに座って唱えている人たちの声を聞くだけで、それらの人の姿が見えるように感じる事があります。そして、その中の一人だけに思いを馳せると、その人の声だけが身近に聞こえてきて、その姿が見えてくるように感じるのです。
「ああ、この人は今、両手を上げて唱題する喜びを感じている。」
「この人は礼拝している。」
という姿が想像できるのです。
「耳で見る」とはこのような事なのでしょう。

 「目で聞き、耳で見る」というコロッケさんの言葉は本当だと思います。皆さんの生活の中でも、このような感覚を持った事があるのではないでしょうか。
 「このような感覚を知ると、生きる世界がもう一つ深く広くなるのでは。」
と考えております。

平成30年8月1日
妙心寺教会
老尼のお話の部屋
目で聞き、耳で見る
 「目で聞き、耳で見る」は、ものまね芸で有名なコロッケさんの言葉です。