【神様、もっと便利になって】
 昔、何人かの人を連れて七面山に登りました。七面山には、大きな御利益がいただけるという神様が祀ってあり
ます。
 メンバーのWさんは、登るのが大変そうです。息を切らせながら
「先生、七面山には立派な神様が祀ってあって、人々を助けてくれるということですが、そんなに立派な神様ならこ
んなに苦労しなくても参詣ができるよう街中にいてくれれば良いのに。」
と言ったので、私は少し笑いながら
「苦労して登るからこそ、その神様にお会いできるのよ。」
と答えたのです。


 90年間を生きた私には、今の便利さ、特にカーナビ・携帯電話・家庭電気器具等の進歩は有難く感じています。
昔は、手押しポンプでタライに水を汲み、洗濯板でゴシゴシ洗い、すすいで絞り乾かしました。洗濯機が発売されて
何度も進化し、今はスイッチ一つで乾燥までできます。
 その他、数え切れない便利さの中で生活しています。しかし、先日将棋や囲碁の名人がコンピューターと勝負して
負けてしまったという事を知りました。今の私は「便利さの行き着くところはどこなのか」と思い、一抹の不安が残って
おります。

【エネルギーや時間に限界】
 「便利」というのは、「効率が良い」ことを言う場合が多い。「効率が良い」とは、あることをする時により苦労が少なかったり、時間が掛からなかったりすることだ。だから、人が便利さを求めるのは楽をしたいからだけではないと思う。人には寿命があり、すべてのことに全力を使うには時間が足りないからなんだ。
【楽しい不便もある】
 私たちは、くだらないことやつまらない事を早く済ませて、大切なことに時間をさきたいから便利さを求めるんだ。
でも、何がつまらなくて何が大切かな。あなたが大切と思う事は、他人にとってはくだらないことかもしれない。
 たとえば、山でキャンプをして時間をかけてご飯を作るのが好き。自分で飲む水を自分で汲んできて、自分の食
べるご飯を自分で作ること以上に大切なことってあるかなって思うんだ。

平成29年5月1日
妙心寺教会
老尼のお話の部屋
人はなぜ便利さを求めるのか
【つまらないときに求める】
 人間はそんなに便利さばかり求めているかな?私はそうでもないと思う。自然の中で生活するのは本当は大変なのにわざわざ山奥でキャンプをする人、お店で買った方が早く食べられて美味しいのに苦労してケーキを焼く人もいる。パソコンの部品を買って組み立てる人もいる。
 なぜそんなことをするかと言うと、面白いからだよね。人間が求めているのは便利さじゃなくて面白さだよ。でも、時々何もかも便利にしちゃって退屈している人もいるけどね。
 「人はなぜ便利さを求めるのか」という疑問について、毎日新聞の子供向けの記事に興味深いものがありました。