平成24年8月1日
仏教とは(19) 菩提寺
今月からは、知っておきたい「寺との関わり方」についてお話いたします。
【菩提寺(檀家寺・檀那寺)】
この制度は日本独特のものです。仏教の教義に基づいてできたもの
ではありません。
江戸時代に、徳川幕府が宗教に対する政策の一つとしてつくり出した
ものです。「戸籍係」の役目を寺にまかせたのです。
寺にとっては、自由な布教活動が出来なくなり、大衆の側からは信仰
の自由が奪われる結果になりました。たとえば「娘が嫁に行くとすれば、
同じ宗派の家に嫁ぐこと」と言うような制度であったといわれています。
その制度が400年も経つと、いつの間にか宗教的なつながりとなり、
「先祖代々の宗派」という観念になってしまいました。
寺院の多くは、菩提寺が一ヶ寺で独立していません。菩提寺の信仰の
中心に本山があります。その本山から各菩提寺に、そしてそこから各家
庭の檀家へとつながっているのです。ですから、本山へ壇信徒と一緒に
参詣するのは、各菩提寺が信仰の源として本山につながっているからで
す。
※「菩提」とは梵語の音を充てたもので、「智」・「道」・「覚」と解釈します。仏の智慧のことです。
仏の菩提(智慧)は究極で、これに勝るものはないので「阿耨多羅三藐三菩提(あのくたら三みゃく三菩提)」
・「無上菩提」を言います。
我が国では祖先などの菩提を増進する、すなわち成仏を祈り、冥福を修することをを「菩提を弔う」と言って
います。 【仏事のこころえ(菅野啓淳)参照】
では「檀家」とはどのような人を指すのでしょうか。
それは、寺から御本尊をいただき、信仰に入り、行事等に参加し、教えの
通りに生きる努力をする方が、皆「檀家」なのです。
「家の代々の宗派だから」と言って、仏事がなければ寺に行かないという
形式上の「檀家」が、現代では多いように思われます。
しかし、これからは「家の代々の宗派だから」という考えは改め、「信仰の
対象としての菩提寺」を考えるべきではないでしょうか。
一部の方々には、「菩提寺の墓地を使わせてもらっているから檀家」という考えを持っている方がいますが、
この考え方は一寸違います。
例えば名古屋市では、「墓地は全て平和公園」という所もあります。また、自分の家の裏山に墓地があったり
部落一同で協力して造成した墓地もあります。
ですから、墓地の場所の寺が菩提寺とは限らないわけです。