「お布施を差し上げたいのですが、自転車番の仕事で来て
いるので、お金を持っていないのです。」
と言ってから
「あっ。」
と小さな声をたててから、小走りで自転車小屋の中に入って
いきました。
そして、ビニール袋を手にして出てくると、
「これをどうぞ。ちょうど5個残っていました。(^-^)」
とにっこりされました。
 袋の中にはオレンジが5個。食べやすいように切れ目が
入っています。
「わぁー。」
と歓声があがり
「いただきます。」
と早速いただきました。
 そのオレンジの美味しかった事。七月の海辺を歩いてき
た乾いた体に、よく冷えた甘酸っぱい汁が染み渡っていき
ます。
 あっという間に全員が食べ終えました。すっかり元気が出
て、お礼を言って歩き出しました。
 ふと後ろを振り返ると、まだその女の方が合掌して見送っ
て下さっているのです。
「あっ、これが清信士女を遣わして守って下さるという事な
のだ。おぼつかない私たちを見守って下さっているのだ。」
と解ったのです。
 改めて感謝の気持ちを込めて合掌し、先へと進みました。
次のトンネルはレンガ造りで窓もあったので、じっくりと中を
見ながら歩きました。この道は昔の線路の跡でした。
 その後、いくつかのトンネルや小さな海岸、がけ崩れの道
を歩き、夕方無事に先生方と合流する事が出来ました。
平成27年3月1日
妙心寺教会
日蓮聖人を偲んで 私達の行脚の旅(9)
老尼のお話の部屋
【佛様のお使い】 

第三十五回  平成18年7月26.27日 「米山駅」から「柏崎海岸」  約14km
【まぶしい日本海】
 翌日には「番神堂」から「妙行寺」まで行脚、その後に車で北上し、出雲崎の「善勝寺」、角田浜の「妙光寺」
をお参りさせていただききました。
【上が少しだけ空いています】
埋まっているけど、上の方から入れる。電気もつかないけど、俺も通ってきたんだ。服が汚れるけどね。」
と教えてくれました。
 御礼を言ってからそのトンネルに行くと、確かに土砂で入り口が塞がれています。しかし、上の方が少
しだけ空いているのです。
 登って中を覗くと、奥は真っ暗です。入り口からのわずかな光だけが射しています。その光を水たまり
が反射して、所々がキラッと光っているだけでした。

※この時の出来事を、平成18年8月のホームページ「老尼のお話」で、「妙縁」という題名で中野先生が書か
れています。


http://www2.tba.t-com.ne.jp/myoushin-ji/rouninoheya/18.8myouenn.htm
【無事に合流出来ました】
 何故か強い気持ちが湧いてきて
「進みまーーす!」
と大きな声をあげました。
 少し離れるとお互いの姿が見えなくなるので、間を詰め
て歩き出しました。足を踏み出すと、黒かった地面が
「ザザーッ。」
と両脇に分かれて道を空けてくれました。遅れた黒い点
の様なものが
「ツツーッ。」
と暗闇に走っていきます。
なんと、大量のフナムシが地面をびっちりと埋め尽くして
いたのです。
「うわーっ。」
と声が出そうになりましたが、我慢してしばらく進むと床の
コンクリートが見え、足元がぼんやりと見えるようになっ
てきました。
 ようやく出口の光が見えたときには、もう走り出してい
ました。外に出ると、左手に真っ青な日本海が広がってい
ます。
「海だぁーー。」
緊張していた心が一気にほどけ、皆が安心したのが伝わっ
てきます。
 そしてまた恐怖のトンネル・・・。
 このトンネルを抜けると、海岸沿いの細い道に出ました。
大きな題目碑が建っています。手を合わせていると女
の人が来て

 今回は、中野先生たちと夕方に合流する予定です。
 「米山駅」に昼頃に着き、「鉢崎関所跡」を過ぎました。
ここから米山峠越えです。気持ちを引き締めて歩き出す
と、道端にぽつんと座っていた男の人に呼び止められま
した。
「この先は、この前の大雨で土砂崩れがあって通行止め
だよ。」
私たちが困った顔をしていると
「でも大丈夫。峠の向こうへ行ける道があるんだよ。海岸
に降りると古いトンネルがある。それをいくつか抜けて行
けば出られる。土地の者が使う道だよ。入り口が土砂で


【大きな題目碑】
【出口が見えた時は走り出していました】