【妙法の妙は不可思議の妙】
第三十回 平成16年11月12.13日 「屋代駅」から信越線「長野駅」 約26km
平成27年1月1日
日蓮聖人を偲んで 私達の行脚の旅(6)
今回の旅では、もう一つ不思議な体験をしました。
翌日、出発前の朝に
「少し遠回りになるけれども、川中島の古戦場跡を回って長野駅へ
行こうか。」
という話が出ました。
ところが、地図で調べてみるとかなり遠回りになることが判ったの
で、やはり予定した道を行くことにしました。
宿を出てしばらく進むと、道を間違えたことに気がつきました。間違
えて歩いてるこの道が、川中島へ続く道だったのです。
「今朝の話の通りになったね。」
「きっと呼ばれているんだよ。」
などと話し合い、そのままこの道を進むことに決めました。
古戦場跡はとても綺麗な公園になっていて、当時を偲ばせるもの
はなかなか見つかりません。
ようやく隅の方に小さな神社を見つけました。そこに首塚がありまし
たので、心をこめてお題目を唱えさせていただきました。
「妙法の妙は不可思議の妙」、またひとつ、忘れない思い出が増え
たのです。
以前、実相寺(群馬)のI上人から、「長野県のどこかに日蓮聖人
が入られた温泉があるらしい」とのお話を伺っていました。その場
所がどうやら「松代温泉」らしいという事がわかってきたせいもあり
出発前から特別の思いを抱いてこの日を迎えました。
午前中降り続いた雨も止み、いよいよ松代の街へと足を踏み入
れ、目的の「蓮乗寺」には3時過ぎに到着しました。
本堂の前にてお題目を三唱、その後で境内を拝見させていただ
いていると私たちを呼ぶ声が聞こえました。振り向くと、手には中啓
を持ち、衣・袈裟をつけたお上人が本堂の前に立っていられます。
なんと、わざわざ正装に着替えてから出迎えてくださったのです。
お上人に招かれて本堂に座ると、すぐにお経が始まりました。
そして
「良い太鼓を持っているのだから、一緒に叩きなさい。」
と言われて、唱題が始まりました。
精一杯に太鼓を叩きながら唱えていますと、背後から日の光が
射してきたのです。まるで、私たちのお題目を太陽が聞きに来たか
のように明るくなり、雨上がりで暗かった御宝前が、キラキラと輝き
だしたのです。感激して御宝前を見つめていると
「私たちは前世からのご縁があったようですね。」
とお上人から話しかけられて、びっくりしてしまいました。
「どちらからですか。」
と聞かれたので
「埼玉県の行田市です。」
と答えると
「行田と言えば、渡辺さんだなあ。」
と、なんと先代の妙祥尼の話が出てきたのです。
お上人は50年前に身延にいらしたそうで、そこに妙祥尼が繁く通って足袋を納めていた事を、良く覚えておいて
でした。
「私の祖母にあたるのです。」
と答えながら、この不思議なご縁と祖母の信仰の深さ、その功徳の素晴らしさに胸が一杯になりました。
折しも、今日12日という日は先代の月命日にあたります。「先代がこの行脚を見守ってくれているのだ」と深く
感じずにはいられませんでした。
お上人もとても喜んでくださり、お寺の事、松代の街の事などを色々話してくださいました。そして私たちが松代
温泉の「松代荘」に泊まる事を告げると、
「おお、まさしく大聖人がお入りになられたお湯です。」
ときっぱり言われたのです!
こうして、興奮と感激の1日目が終わりました。