「慈悲」という言葉は、読むことはあっても使う事は滅多にない言葉だと思います。「大岡越前」や「水戸黄門」など時代劇の中では「刑を軽くする」という意味で「どうかお慈悲を」とか「お上にも慈悲はあるぞ」などと使われることがあります。
また、終戦後に時々見かけた「おこもさん(乞食)」は
「どうぞ、お慈悲に何か恵んでください。」
と言ってお椀を差し出し、食べ物や金品を求めて家々を廻っていました。
「慈悲」とは、仏教用語です。本来の意味は「抜苦与楽(ばっくよらく)」と言って「すべての人々の苦を抜いて人々が幸せになる事」です。
キリスト教は「愛」を、仏教は「慈悲」を根本とした教えと言われています。その教えを説かれた釈尊の御心を表す言葉に「四無量心(慈悲喜捨)」という仏教語があります。
(1)慈とは、すべての人を慈しんで安穏の楽を与えること。
(2)悲とは、衆生の種々の因縁による苦しみを抜くこと。
(3)喜とは、衆生の楽(ねがい)に従えて歓喜を得せしむること。
(4)捨とは、衆生の愛憎の念を除くこと。
この4つは釈尊の徳行(功徳と行法)であり、衆生救済の行法(修行の方法)なのです。
(本化聖典大辞典より)
【当教会の釈尊像】
日本の宗教は仏教と言われ、世界の三大宗教の一つに数えられています。
「あなたのお家の宗教は何ですか。」
と聞かれた時に
「仏教です。」
と答える方が多いと思います。
ですから、仏教の教えの根本を知ることが大事であると思うのです。
そして、仏教の根本である「慈悲喜捨」の教えが日常に浸透し、行じられた時に世の中に真の平和が訪れ、「人と
して生きた」と言えるのではないかと思っております。
「仏教って、一口に言うと何ですか。」
と問われることがあります。
そんな時、私は
「釈迦牟尼仏(お釈迦様)の説かれた教えの事です。」
と答えております。
その教えを弟子達が記録したものが「経本」です。その「経本」が中国で漢字になり、「仏の教え」として日本に伝
わってきたので「仏教」と呼ばれているのです。
お釈迦様の教えの根本にあるのが「慈悲」であり、人間の平等を説かれています。ですから、僧侶は「人としての
生き方の教え」を説いて皆さんの幸せを願うのです。
平成29年10月1日
慈悲