ケーススタディー1 損害保険の基礎

 生命保険の場合、保険金額は、契約者の任意に設定でき(但し、余りに高額だと、犯罪に関わっていると疑われてしまい、保険を引き受けてくれないかもしれませんが)、損害の度合いに応じた定額が支払われます(例えば、死亡時××円、障害時※※円)。そもそも、人の命に値段は付けられないためです。原則は、保険を引き受ける条件に適合し、それ相応の保険料さえ支払われれば、保険を引き受けてくれ、損害に応じた定額の保険金が支払われます。

 これに対し、損害保険は、実際の損害に応じた、実損払いが原則です。何故実損払いかというと、損害保険では、2つの重要な原則があるためです。
  1.『給付・反対給付均等の原則』
    保険会社に支払う保険料が、実際の危険の度合いに合っていなければならないと言う原則です。
    具体的には、危険の度合い=対象の価値×発生率に対して、保険掛け金が少なくっても、多くてもいけないという事です。

  2.『利得禁止の原則』
    損害保険では、その保険で利益を得てはいけないと言う原則です。
    高額な保険を設定して、実際の損害以上に保険金が支払われてしまうならば、利益を得ようと恣意的な事故(これは犯罪です)を
    誘発するかもしれないからです。

  火災保険は、損害保険の一種です。ですから、家の価額以上の保険を掛けても、実際に保険事故(火災等、保険金が支払われる状態)が
  起きても、家の価額以上に保険金は払われない訳です

                       
ケーススタディー2 損害保険金の比例てん補と実損てん補

損害保険では、被保険物の保険価額と保険金額と発生被害額を考える必要があります。ここで、時価3000万円の家に保険を掛けている3人に登場してもらい、ケーススタディー1の意味を考えて見ましょう。








  @Aさんの場合

    保険金額÷保険価額が80%未満だと、一部保険と言います。
    Aさんは、2000万円÷3000万円=66.6%なので、一部保険です。

    支払われる損害保険金は、比例てん補扱いになりますので、

          損害保険金=600万円×(2000万円÷(3000万円×0.8))=500万円

    ですから、Aさんは、損害の内、100万円は、自己負担しなければなりません。


  ABさんの場合

     Bさんは、3000万円÷3000万円=100% ですから、全部保険です。

     支払われる損害保険金は、損害額の100%(実損てん補)で、600万円になります。


  BCさんの場合

      Cさんは、4000万円÷3000万円=133.3%なので、保険金額が保険価額以上なので、超過保険です。

      支払われる損害保険金は、損害額以上出ませんので、600万円です。しかも、超過分の保険料の返還請求はできません。


ケーススタディー3 損害保険金の価額協定保険特約

 さて、損害保険は、実損害をカバーすると、ケーススタディー1と2でお話しました。が、このままでは、重大な問題が発生します。と言いますのは、自動車の車両保険を掛けた事のある方はご存知だと思いますが、モノの価額は、時間の経過と共に低下します。これを減価償却といい、10年〜20年で価額は0円になってしまいます(骨董価値が出てくると話は変わりますが・・・)。

 つまり、損害保険を引き受けてくれる時価だと、初年度はともかく、数年経過してしまうと、同じ規模の家は、再建できません。かと言って、超過保険では、全く意味を成しません。

 そこで、登場するのは、価額協定保険特約です。これは、家の再調達に必要な額(新価)を、保険価額として特約で保障してもらおうと言うものです。

 当然、時価保険に比べ、保険料は上がってしまいますが、家の再建を保障するには、新価の価額協定保険特約で契約する必要があるのです。 
ここでは、家の再建に必要な損害保険について考えるコーナーです。
少しずつページを充実させて行きます。ご期待ください。                

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ケーススタディー4 火災保険金の重要性

自分の家が、自己の不注意で失火、焼失した場合、自己責任で再建しなければならないのは自明の理です。しかし、隣家の失火で延焼した場合は、果たして、失火した隣人に損害賠償が請求できるでしょうか?

 常識的には、他人の財産に過失で損害を与えた場合、加害者は被害者に損害賠償するのが、民法上の『不法行為責任』により損害賠償に応じる義務があります。しかし、著しい過失が無い場合、火元の加害者は、隣家の延焼の責任を負わない事が、『失火法』に明記されています。つまり、隣家の失火の延焼の場合も、自己責任で家を再建しなければなりません。

 では、賃貸物件の場合は、どう判断されるのでしょうか。答えは、借家人の過失で失火し、賃貸物件が焼失した場合は、賃貸人の安全に賃貸物件を使用するという債務の不履行になりますから、『債務不履行責任』として、焼失前の状況に戻して、家主に返さなければなりません。ですから、借家人賠償責任保険、損害賠償責任に答えられる保険に入っておく事が重要です。

 爆発事故ではどうか。爆発による火災が起きた場合は、『失火法の適用が無い』ため、隣家の延焼にも損害賠償の責任が発生します。

以上の各ケースをご覧の通りで、かなりの確率で火災により家が焼失した場合は、自己責任で、自分の家を再建しなければなりません。そのためにも、火災保険に加入してリスク回避しておく事が重要です。

 尚、単独の火災保険だけでは、家屋の火災しかカバーできません。そこで、家財を含めた広範囲を保障する、『住宅総合火災保険』『店舗総合火災保険』『団地総合火災保険』等があります。皆さん個々のケースで必要な保障が得られる保険を選択する事が重要です。


ケーススタディー5 火災保険金と地震保険

家の損害に対するリスク回避で、もう一つ忘れてはならないのが、火災保険と地震保険の関係です。地震国日本では、いつ大地震が起きても不思議ではありません。阪神大震災や新潟中越地震で被災した方々を支援するため、仮設住宅が建てられました。また、これらの地震後、国や県により自宅を被災された方々に、『瓦礫の撤去や家財道具の再調達の為の支援金』は支給されるようになりました。しかし、政府・自民党は、『自宅の再建は、自己責任
で』
との姿勢を変えておらず、未だに、被災された方々に経済的負担を強いているのが現状です。※家屋という私有財産の再建に対し、国税を投入する是非は、確かにあります。

では、火災保険に加入していれば、地震で発生した火災でも保障されるのでしょうか?実は、火災保険単独では、地震起因の火災でも保険金が降りません。そこで、火災保険契約時に地震保険にセットで加入する事を勧められます。

 ここで重要なのは、地震保険単独での加入は出来ません。また、主保険である火災保険の保険金の30〜50%の金額しか保険が掛けられない事と、家屋で5000万円、家財で1000万円の上限があると言う事です。

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ケース8 巧妙化するオレオレ詐欺

おれおれ詐欺に注意!

最近のオレオレ詐欺は益々巧妙化しています。各家庭においても、おれおれ詐欺に十分注意するようにしてください。

<おれおれ詐欺の手口事例>
警察を名乗る者が、旦那さんが妊婦を車で跳ねた、大変なことになったと話しご主人にかわる(まず相手をパニックに落し入れる)
 ↓
旦那さんは泣いていて話が出来ない(本人と判別しにくい状況)
 ↓
跳ねられた妊婦さんの旦那さんを名乗る者が話してくる(自分にとってははじめての子供、どうしてくれる!と脅す)
 ↓
次に保険会社の者を名乗る者にかわり、緊急手術が必要なので至急300万円を振り込むように話してくる(私が解決するので安心して・・・・)

注;個人情報が漏れている場合、本名をフルネームで言って来ます。

ここに気を付けて

 ・示談金は直ぐに決まらない!損害の確定は色々な損害額の見積もりや治療が完了してからなので、時間が掛かります。
 ・保釈金も直ぐには決まらない!警察の捜査→拘留→保釈の手続きには時間が掛かります。
 ・警察官は示談の仲介をしません
 ・弁護士や保険会社が事故直後に示談金の振込みを勧めることはありません。

この手の詐欺から身を守る正しい対処方法

  ・理由をつけて、一旦電話を切ってください。→冷静さを取り戻すため
  ・家族や近所の人に相談して見ましょう。冷静さを取り戻すため
  ・交番に届けるのも良い方法です。→事故が本当か直ぐに分かります。
  ・多額の現金は、複数の金融機関に分散して、一度に沢山のお金を下ろせない様にしとくのも有効です。

また、普段から、家族の皆さんと以下の点について、話し合っておきましょう。
 ・保険状況を話し合っておきましょう。自動車事故の場合、保険に入っていれば、保険会社が対応してくれます。
 ・借金とかも、正直に話し合いましょう。経済状況を知っていれば、急な電話でも驚きません。


上記のように不審電話があった場合は、冷静に対応してください。必ず本人に確認をする。確認が取れるまで振り込まない等の対応をして、おれおれ詐欺の被害に合わないように注意して下さい。

ここでは、身近に起きる法律問題を考えるコーナーです。
実務法律家『行政書士の卵』として、少しずつページを
充実させて行きます。ご期待ください。  

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保険価額(時価)   保険金額    発生被害金額 
Aさん   3000万円   2000万円    600万円
Bさん   3000万円   3000万円    600万円
Cさん   3000万円   4000万円    600万円
ここでは、家の再建に必要な損害保険について考えるコーナーです。
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