第3話 

 あの戦いから一晩が過ぎた。
翌日、奏一はソフィアからこの世界の状況を教えてもらった。
「つまり、あのデカイ虫をすべて駆除すればいいわけだな」
「簡単に言えば、そういう事ですね」
ソフィアがうなずく。
「確かに、絶対奏甲の力があれば、あんな虫ぐらい楽勝だな」
奏一は昨日の戦いで確かな手ごたえを感じていた。
「あ、ソウイチさん、これからどうします?」
ソフィアが奏一にたずねた。
「そうだな・・・まだ装備も整ってないし、奏甲の破損も酷いようだし・・・」
「それなら、格納庫のほうへ行きませんか?」
「あそこへ行って、奏甲の様子を診てみましょう」
「そうだな、行ってみるか」
かくして、奏一とソフィアは、黄金の工房の格納庫へと向かった。

格納庫ではまだ、昨日の戦いの傷跡が色濃く残っており、
工房の技術者と思われる少女たちが忙しく動いていた。
「あの、ソウイチさんの奏甲はどうですか?」
ソフィアが技術者の一人に尋ねた。
「あの機体は直そうと思えば直るけど、新しい機体に乗り換えたほうが早いわよ」
ソフィアと技術者がそんな会話をしている間、
奏一は分厚い一つの扉を見つけた。
「ここは何の部屋だ?」
少年は恐る恐る、扉の奥へ進んだ
「何、これ?」
その部屋の中には数多くの巨大な機関がぶら下がっていた。
「ゴオオオォォォォ!!!!!」
その機関はもの凄い轟音をたてながら空気を排出した。
「うわ!!」
奏一はその風に押されて、吹き飛ばされてしまった。
「イテテテ・・・なんだよ、これ?」
立ち上がろうとすると、奥から足音が聞こえてくる。
「そこにいるのは誰!!」
奥から、一人の女性がやって来た。
「ここは立ち入り禁止って書いてあったでしょう!」
「え、あ、すいません、あの字が読めなかったので・・・」
奏一はとりあえず謝る事にした。
「あら、あなた機奏英雄ね」
その女性は、少年を見て思い出したかのように言った。
「じゃあ昨日、蟲を退治したって言う英雄はあなたね。」
「は、はい・・・あなたは?」
その女性は倒れていた奏一に手を差し伸べるとこう言った。
「私は赤銅の歌姫。この黄金の工房の最高責任者よ」
奏一は起き上がると、赤銅の歌姫に質問した。
「これは一体、なんですか?」
「これはアークドライブユニット。絶対装甲の心臓部と言っても過言ではない機関よ」
赤銅の歌姫は説明を続けた。
「このアークドライブはアーカイアの空気に含まれる〈幻糸〉を取り込んでエネルギーに変換する装置なのよ」
「へ、へえ・・・」
奏一は今の説明が理解できていなかった。
「ここはこのアークドライブの幻糸の取り込みや排出を実験、計測する部屋なのよ」
「だからこの部屋には、大量の幻糸が充満していて、さっきの排出した空気にも
幻糸が混ざっているわよ」
「ハハハ・・・なんか、体に悪そうですね」
奏一はこの話もあまり理解していなかった。
「それじゃあ、俺はこれで・・・」
奏一が立ち去ろうとした時、
「ちょっと待って」
赤銅の歌姫が少年を引き止めた。
「今、人を集めているんだけど、よかったら手伝ってくれない?」
奏一は少し考えた後、こう答えた。
「俺はまだこの世界の事を知りたいんで、色々回ってみます」
「そう、わかったわ」
彼女は少し残念そうな顔をして言った。
しかし、奏一の世界を見て周りたいと言うのは彼女に味方しない為の口実であった。
少年は赤銅の歌姫に対していい印象を持っていなかったのだ。
(この人は何かを隠している・・・)
奏一は直感でそう思った。
赤銅の歌姫は話を続けた。
「でも、ここを守ってくれた御礼はさせて」
そう言うと、赤銅の歌姫は奏一を連れて格納庫に向かった。

格納庫へ戻ると、赤銅の歌姫は技術者たちを集め、話をしだした。
「何があったんですか、ソウイチさん?」
「赤銅の歌姫が俺にお礼したいんだって」
一人の技術者が奏一とソフィアのもとに駆け寄ってきた。
「アレをお受け取りください」
その女性は一体の装甲を指差した。
その装甲はひときわ漆黒に輝いていた。
「あの機体はシャルラッハロートVS。新型量産機を改造した特別機です」
確かに周りのシャルラッハロートVとは顔や肩の形が違う。
「いいのか、もらっちゃって」
「はい、どうぞ」
技術者の少女は笑って答えた。
「良かったですね、ソウイチさん」
「あ、それと・・・・」
技術者の女性がまた何かを話し出した。
「この先にティリス様と言う歌姫がいまして、その方が蟲の女王を倒すために
英雄を集めているそうですよ」
「蟲の女王・・・」
「行ってみましょう、ソウイチさん」
「そうだな」
奏一は絶対装甲に乗り込むと、ソフィアを肩に乗せ歩き出した。
そして、見送る赤銅の歌姫達に手を振りながら叫んだ。
「ありがとう、またいつか!」
                                     つづく