よく晴れた日曜日
インディーズバンド「十六夜」はライブイベントの直前だった。
しかし、肝心のギターとボーカル担当の奏一が来ていないのだった。
「おいおい、またあいつ遅刻かよ」
ベースの裕太がぼやく。
「今日は奏一に飯でもおごってもらおう」
ドラムの敏男も頭にきている様だ。
そんな会話をしていると、むこうからギターケースを抱えた奏一が息を切らせて走ってきた。
「悪い、悪い、ちょっと遅刻」
奏一は反省の様子を見せていない。
「いいから、さっさとチューニングしろ!!」
二人は完全にキレている。
「お前は人の話は聞かないわ、遅刻はするわ・・・」
裕太はぶつぶつと文句を言っている。
「ハイハイ、わかってますよ」
奏一が裕太の話を聞き流しながら、ギターを取り出そうとした
その瞬間
奏一は見たことのない部屋に立っていた。
「え、どこだよ、ここ・・・」
奏一が戸惑っていると、慌ただしく女性たちが駆け寄ってきた。
「最後の英雄が、今到着しました」
一人の女性がそう叫んだ。
「え、英雄?」
奏一は訳の分からないまま、手を引かれ連れて行かれた。
移動の最中、女性たちは、奏一に対して何かを説明していた。
アーカイア、ノイズ、ゼッタイソウコウ、何を言っているのかさっぱり理解できなかった。
唯一わかったのは、自分には自分の半身とも言える運命の人、「歌姫」がいる。
そして、その少女を探し出さなければいけないと言うことだけだった。
やがて奏一は大きな格納庫の様な所に連れて来られた。
その奥には、巨大な鎧の様なロボットが数機ならんでいた。
「これは対ノイズ用に造られた、我々の最後の希望、絶対装甲です」
少女の一人がそう言った。
「絶対・・・・装甲・・・・」
さっきの話に出てきた言葉を奏一は思い出した。
「今はもう、このシャルラッハロートしか残っていませんが、とりあえず出発してください!」
奏一は無理やり、紅い機体に押し込められた。
「お、おい、一体、俺はどこにどう行けばいいんだ?」
「行く場所は貴方が決めてください。決まりましたら私たちが歌術、翼の門で送り出します」
「じゃあ、歌姫にはどうすれば会えるんだ?」
「歌姫と英雄は宿命で繋がっています。そのうち会えるはずです」
なんともいい加減な説明のように奏一には聞こえた。
「う〜ん・・・・、じゃあ、ここ!」
奏一が指差したのは、赤銅の工房だった。
「わかりました、それではご無事を・・・」
そう言うと周りの女性たちは一斉に歌いだした。
その歌はとても高らかで、とても美しい音色を奏でた。
そして奏一は、自分が光のようになっていくのを感じていた。
つづく