赤い星が落ちた日II
〜le myosotis 勿忘草〜
Spring breeze 3
(春風)
冷たい洞窟よりも冷たい輝きを発する赤い目をもつ少女、マリタ・シーターに志季は近付くやいなや、彼女の両手を掴みとる。
「君が、マリタの記憶を持っていなくてもマリタには変わりない。今度は俺がマリタ、君達を守る番だ」
「気安く触るな!」
マリタ・シーターは志季の熱い手を振り払う。
「おまえの考えが分からない!掴めない!嫌だ!嫌いだ!そして・・・」
マリタの視線は貴緒に移された。
「そして、おまえは何者なんだ?おまえはどうしてわたしと同じ“もの”をもっているんだ?」
マリタは貴緒に歩み寄ると、彼の両肩を掴んだ。
「おまえからは、オリジナルのマリタと同じ匂いがする。どうしてだ?おまえはこの星の人間ではないのか?」
貴緒はマリタよりも自分から遠い場所にいる志季を見つめた。
「ぼくはこの星で生まれ育った。間違いなくね。でも・・・ぼくは一度、死んだ・・・その時、ぼくにもう一度、生きるチャンスをくれたのが・・・マリタという赤い髪の少女だったんだよ。志季・・・」
二人の少年の間を隔てた空気が一瞬止まる。
「志季・・・今まで黙っていてごめん。ぼくはマリタに貰った生命の力でこうやって生きている。そして、マリタと同じ超能力も得た。今、こうしてマリタと再会することも知っいた。そして、ぼくの細胞の中のマリタが“地球を守って”と訴えている・・・。そのために、一人の人間が死んだことも知っている。ぼくらを研究材料にしようとした男だよ。ぼくは、彼に再び来る危機から地球を守るために協力をして欲しかったのに、彼はその“使命”の“重み”に耐えられなくなり・・・自ら生命を絶った。人を一人、死に追いやりながらぼくは何の痛みすら感じない。志季、ぼくはもう人間ではないのかもしれない」
赤い髪の少女を一瞥してから貴緒は言葉を続ける。
「ぼくもマリタのように自分が誰だか分からないんだ。自分以外の誰かの声に従って動いている・・・それが正しいのかどうかも分からないまま」
「貴緒。貴緒は貴緒だよ。出会った時のままの貴緒だ。ほら、おれ・・・貴緒が変わってしまっていたなんて、今までそんなこと気づかなかったし。もし、本当に貴緒が貴緒でなくなっていたら、おれは絶対に気づいているから。おれが気づかなかったてことは、貴緒は貴緒のままなんだ」
微笑む志季の顔に貴緒は悲しげに言う。
「ありがとう・・・志季。ぼくは、マリタからもらった力にかけて地球を守るよ。マリタがくれた生命で、マリタが一番、好きなきみを守る」
一瞬の出来事であった。
志季の目の前から、貴緒とマリタの姿消えたのだ。
「貴緒!」
気づくと志季は、眩しいばかりの星の下にいた。
「こ、ここは・・・」
志季はライオンズ・ゲイトブリッジの上にいたのである。
「ばかやろぅ!!貴緒!!なんでおまえが!!」
志季は満天の星空に向かって叫ぶ。
(志季・・・志季だよね)
懐かしい声が志季の胸に響く。
(あぁ。志季・・・会いたかった)
志季は“声”がする方を振り返るが誰一人姿は見えない。
「誰?どこにいるんだ?」
声の主が悲しげに首を横に振る仕草が志季には、その気配だけで感じられた。
(わたしは、マリタ。あの子達の母体・・・)
「マ、マリタ・・・」