第三回 その者、酒乱につき

  文 チョコナ
  原作 策吉








  朝焼けの中、ベッドの上で二人で一緒にモーニングコーヒーを飲みたい男校内ランキング第一
  位(脳内)のおれは今日も暇な授業を抜け出して屋上で一人、流れる雲を見ていた。

 「最近おもしろい事がないなぁ…」

  つい先日、おれは摩耶ちゃんの変な薬で性格を変えられたらしいがおもしろいのは周りであっ
  ておれではない…。

 「…そーいや小学生がこの学園にいるってまどかが言ってたな」

  かわいい子だといいが…これで男とかだったりしちゃったりなんかしたら本気でそいつに怒り
  をぶつけかねない…。

 「名前…なんだっけ?せ…芹乃宮…だっけか?」

  しかしまだ会った事はないのでおれの暇は紛らわせないし…。

 「な〜んかおもしろい企画でも練るか…」

  どっちにしろまどかはもう常にからかってるからおもしろみに欠けるし…。

 「…そういや、摩耶ちゃんの驚いた顔を見た事がない…」

  しっかしあの子に小細工は通用しないし…なにより後が怖いし。

 「ん〜…じゃあすずちゃんか…」

  あの子はなんかからかうと楽しそうだし、いじめて光線出してるからからかいたいんだけど…
  やっぱ摩耶ちゃんが邪魔するよなぁ…。

 「となると寺岡か…」

  あいつとはいつも会話の様な流れで漫才してるからな…今更って感じだし…。

 「すずちゃんを使っておもしろい事をしながら摩耶ちゃんに報復されない方法か…」

  …そうだ!あれだ!あれしかない!

 「そうと決まったら早速手回ししなければ!」

  おれは授業中なのをいい事に家に帰り、いろいろと準備をし始めた…。






  そして昼休み…




  協力者が必要だ…だれか、あれに強くてしかも打たれ強い奴が…!そこにちょうど寺岡という
  名のおれ用使いっパシリがいた。

 「よぉ、今日はバイトか?」

  頼む…!暇であってくれ!

 「いんや、今日はなんも予定がないから暇してたとこだ」

  よっしゃ!なんて都合のいい奴!!

 「なぁ…ちょっと話があるんだけど…」

  そういっておれは寺岡に耳打ちする。

 「………おもしろそうじゃん!いいぜ!協力してやるよ!」

  ふぅ…なんて扱いやすいんだ…。

  だがこれで大体の手筈は整った…あとは実行あるのみ!!…その前にとりあえずメンバーそろ
  えないと…。

  とりあえずはまどか・すずちゃん・摩耶ちゃん・寺岡…う〜ん、少ないなぁ…もうちょっと男
  が欲しいところだ…。

  そうだ!戒先輩と進先輩でも呼ぼうかな?

  だけど進先輩は冗談が通用しなさそうだしなぁ。

  まぁ今回は呼ばなくていいか…。

 「よし、みんなを集めますか!」

  とりあえず…まどかから行くかな。










  うぅ…相変わらず違う学年の階は居づらい…。そうしてまどかの教室に着いた。

  そしてまたまた近くにいる女の子に声をかける。

 「あ、ごめん。まどかいるかな?」

 「あっ!まどかのお兄さんじゃないですか〜」

 「あれっ?どこかで会った事あったっけ?」

 「やだな〜!先輩がお弁当忘れてた時にまどかを呼んでくれって頼んだのがわたしですよ〜」

 「ああ!あの時の!」

 「先輩ったら若年健忘症ですか〜?」

 「ちゃいますってば。けどなんか性格軽くなってない?」

 「あ〜、あの時は初対面だし先輩だったからですよ〜」

 「じゃあこれが地?」

 「そ〜ですよ〜。ちなみに三谷千恵っていいます!」

 「うぃ、よろしくね千恵ちゃん」

 「はいはい〜」

 「千恵〜?誰と喋ってるの〜?」

  ん?まどかか。

 「あっ!ちょうどいいところに。お兄さんがきてるよ〜」

 「よう!我が愛しのマイシス「げっ!お兄ちゃん!」…なんだよ、その反応…くすん」

  いくらなんでもそりゃないだろ。

 「わ!ごめん!条件反射だったんだよ!」

 「余計悪いわ!!」

 「あはははは!」

  隣で千恵ちゃんが大笑いしてるので周りに注目されてる…。

 「ま、まぁなんだ。そう!今日はちょっとしたパーティみたいでパーティじゃない様な事をする
  からすずちゃんと摩耶ちゃんをうちに呼んどいてくれ」

 「なんかいやにあやふやだね…」

  うっ!必要以上に疑われてしまった…。

 「まぁいいや。わかったよ、うちに呼べばいいの?」

 「うむ!よろしく頼むマイシスター!」

  そうだ!千恵ちゃんも呼ぶかな?

 「なぁ千恵ちゃんも来ない?」

 「やだ!先輩ナンパ〜?たしかにわたしは今フリーだけどいきなりお家は早いですよ〜」

  とかなんとか言って自分の肩を抱きながらうりんうりんとしてる。…なるほど。こーゆー子か…。

 「千恵!だめだよ!よりにもよってこんなのに騙されるなんて!」

  うわぁ…最近のまどかはおれに対しての扱いがひどい…。

  千恵ちゃんは千恵ちゃんでお友達からなんて言ってるし…。

 「じゃ、じゃあすずちゃんと摩耶ちゃんを誘っといてな〜」

 「あ、こら逃げるな!」

  逃げるが勝ちよ!!

 「ふはははは〜!さらばだ!!」





  ふぅ〜注目をあびるのは苦手だ…。

  さて!準備は整った!あとは放課後を待つだけだ!

  よし、屋上でまったりしてくるか!












  屋上でまたボーッとしてるけど…もしかしておれ授業まったく出てねぇじゃん!

 「あれ?お兄さんじゃないですか」

  ふぇ?だれだろ?

 「ああ、すずちゃん。どうしたん?屋上なんかに来て、もしかしてサボり?」

 「やだな〜!お兄さんと一緒にしないで下さいよ〜」

  あれ?いまさらりとけなされちゃいました?ぼく。

 「…すずちゃん、ひどい…」

 「え?なにがです?」

  き、気付いてない!?天然だ…。

 「いや、なんでもないんだ。いいよいいよ」

 「ええっ!気になるじゃないですかっ!」

 「ま、それはともかくどしたの?まだ授業中でしょ?」

 「…もう放課後ですよ、お兄さん」

 「うそっ!!?」

  ほ、本気で言ってんですかこの子は!?

 「はぁ…まどかちゃんが言った通りだった…」

 「ま、まどかはなんて?」

 「え〜とですね、多分お兄ちゃんは保健室か屋上でサボってると思うって言ってましたよ〜」

  う〜ん…おれの行動パターンはまどかに読まれてるなぁ。

 「で、どしたの?」

 「えっ?今日はまどかちゃんのお家でパーティーみたいな事をやるんじゃないんですか?」

  …そういやそうだった…。早く買い出しに行かないと!

 「すずちゃん!悪いけどまどかと一緒に料理とか作ってて!」

  そう言い残し飛び出すおれ。

 「えっ?お兄さ〜ん!!」

  ふっ…さよならは言わないぜ…。

 「お金は〜!?」

  …キコエナイキコエナイ。

  まったく…おれも罪作りな男だぜ…(違









  ハァ…ハァ…ハァ…

  …別に興奮している訳でないのであしからず。おれは忘れてしまっていたあれの調達に来たのだ。
  まぁもうわかるかもしれんが酒だ。

  まごうことなきに酒だ。果てなしく酒だ。

  完膚なきまでに酒だ。

  まぁしつこいのでそろそろやめておこう。

 「おい!政貴!遅ぇぞ!?」

  そんなくだらない事を考えていたらしっかりと先に酒屋に着いていた寺岡が話し掛けてきた。

 「おまえこんな量をおれ一人に運ばせる気か!!」

 「え…違うの?」

  政貴は上目使い+涙目という最強コンボで寺岡を見つめた!

 「う…しょうがないなぁ」

  寺岡は陥落した!

 「…って!んなわけあるかっ!!」

 「やっぱりか…」

 「当たり前だ!」

 「お兄ちゃん…ってのが足りなかったか…」

  ちっ…あとちょっとだったのか…。


 「んなもん付けてもおまえなんかに落とされてたまるかっ!!」

 「なにっ!?おまえが妹キャラが好きってのは公然の事実だぞ!?」

  ちなみに最近母親に妹が欲しいと頼んだらしい。

 「妹キャラが好きなんじゃなくておれは純粋に妹が欲しいんだよ!!」

 「馬鹿言え!妹が欲しいと言う奴の95%くらいは純粋な気持ちなんか持ってねぇ!!」

  きっと偏見じゃない…はずだ。

 「うっさい!じゃあ他のやつにやれ!おまえは変に女顔だからやる相手によってはおちるぞ!」

 「………」

 「…な、なんだよ…?」

 「…おまえそういう目でおれを見てたのか…」

 「違う!あー、もう!とりあえず酒を選ぶぞ!」

 「…そうだな」

  とりあえずジュースみたいな感じで飲めるチューハイで酔わせてだんだん強い酒を出していく
  か…。

  う〜ん…なんだか犯罪者みたいだなぁ…。

 「なぁ…政貴、おれらって某大学の日本語に直訳すると超自由ってなるサークルと似た様な事し
  てないか…?」

  言うな。なにも言わないでくれ…。

 「男にはやらなくてはいけない時があるのだ…」

 「ほんと変な事にはやる気出すよな」

 「おまえもだろ?」

 「まぁな」

  そういってニヤリ、と笑い合う。

  ま、とりあえずこんなもんでいいだろ!

  てか学生服を着ているやつに普通に酒を売り渡すこの店って…。

 「…で、どうやって運ぶんだ?これ」

  目の前には軽トラック一台分くらいの酒がある。金はどうしたって?

  そんな事言う人嫌いです!

 「ふっふっふっ!甘いな!寺岡君!私は車が運転できるのだよ!」

 「な、なにぃ!!」

 「驚いたかね!!」

 「…いやいや、よくかんがえりゃ違法やん」

  まったくもってその通り。運転はできるが免許は持ってないし。ていうかとれる年齢じゃないし。

 「やだ!おれは絶対おまえが運転する車なんかに乗りたくねぇ!」

  往生際の悪いやつめ…。

 「まぁまぁ毒を食らわば皿までって言うじゃん♪」

 「なんでご機嫌なんだよ…」

 「だって久しぶりの運転だし〜」

 「余計不安じゃ!」

 「あ〜もう!ぐだぐだうっさいなぁ!」

 「おまえの場合バイクと車を間違えてそ…!」

 「うっさい、はよ乗れ」

  そう言って寺岡を車内に蹴り入れるおれ。

  頭を強く打つ音が聞こえたがまったく気にしない。

 「じゃ〜店長、車貸りるからね」

 「ああ、ちゃんと返せよ」

  店長との会話もほどほどに油圧・ガソリンを確認し、キーを差し込みセルを回し他にもなんた
  らかんたらして車を発進させた…。








 「…ハッ!!」

 「おー、起きたか?」

 「着いた…のか?」

 「もうとっくに。おまえも早く酒を降ろすの手伝え〜」

 「あ…ああ」

  釈然としない寺岡をよそに、酒を我が家に運び込もうと玄関を開けた途端アルコール独特のむ
  わっとした匂いが広がった。

 「な、なんだ?」

 「どーしたー?…うわっ!酒くさっ!」

  呆然としていたおれ達の前に見知った女の子が現れた…。

  トローンとした目付き、朱がさした顔、危なげな足取り…今までに見た事のない姿のまどかが
  そこには…いた。

 「……?」

 「ど、どーしたまどか!?」

 「…おにーちゃん?」

  首を傾げながら上目使いに聞いてくる…うわ、激かわいい…!

  寺岡なんて悶絶してる。

 「一体どーしたんだ?」

  優しく、子供に話し掛ける様に聞いてみる。

 「…おにーちゃん……す…」

  目に涙を溜めながらこちらを見上げてくる…。

 「す…なんだい?」

 「す…す…、すずちゃんがまどかのこと巨乳巨乳っていじめるのーっ!」

 「…はい?」

  そう言っておれに抱き着いて来るまどか。

  それと同時に襲い来るフニャッとした感覚…うう、まどか…おまえいつの間にか育ったなぁ〜
  …いや!違う違う!なんでまどかがこんな一部の人に大ウケ!な幼児化してるんだ!?

 「まどか…酒飲んだろ?」

 「まどかお酒なんて飲んでないもんっ!」

  ぷいっという擬音が聞こえてきそうなしぐさをする。

  あ、寺岡が悶絶死した。

 「とりあえず中に入るか…」

 「あっ、まってよー!おにーちゃーん」

  あっ寺岡が踏まれた…まぁいいか、なんか嬉しそうだし。

  とりあえずご近所に勘違いされると困るので寺岡を玄関に運び入れる。





  なんだかリビングに近づけば近づく程に酒の匂いがきつくなってくる…。

 「まどか…すずちゃんと摩耶ちゃんは?」

 「すずちゃんなんかしらないもんっ!」

  ああ、そうですか。

  だめだ…かわいいがまったく使えない…。

  意を決して入りますか!


  ガチャ


 「おらおらー!!もっといい声で鳴いてみろや〜!」

 「いい…すずちゃん…もっと…」


  パタン


  えーっと…状況的にはすずちゃんがやたら男っぽい口調になっていて、摩耶ちゃんを罵りなが
  ら蹴っている…と。

  そんでもって摩耶ちゃんは恍惚とした表情ですずちゃんの体罰?と罵りをよろこんで受けてい
  る…。

  なんだそりゃ!!意味わかんね!なんで冷静に状況整理してんだおれ!?

  ていうか絶対この中に入りたくねぇ!

 「おい!そこにいるのはわかってんだよ!フニャ○ン野郎!!」

  げ…ばれてる。

  これでみんなの酒が抜けるまで逃げるという策が使えなくなった…。入るしかない…か。


  ガチャ


 「や、やぁ早かったんだね?」

 「けっ!てめぇがノロマなだけだよ!」

  ひぃ…!こ、こわっ!すずちゃんがありえない事になってる!なんなんだ一体!

 「おう、ぼーっと突っ立ってないでなんか持って来いや!つまみとかよぉ!」

 「はっはい!」

  …なんか横に摩耶ちゃんをはべらしてる今のすずちゃんはどっかのギャングのボスみたいだ…。

  それほどに威圧感がある。




  えーとつまみは何を持って行けばいいかな?無難にチーズとかをもってくか…。

 「持って来ました」

  戻ってくるとまどかがすずちゃんにいじめられていた。

 「おい!そこの巨乳!」

 「む〜っ!巨乳じゃないもん!」

 「なにいってんだかこんな大きいくせして」

  そう言ってまどかの胸を揉むすずちゃん。

 「ひゃん!」

 「でっかいくせに感度はいいじゃん!」

 「うぇ〜ん!…ヒクッ…グスッ…ちがうもん、まどかは普通だもん…」

 「…すずちゃん…私にも…」

  うわ、なんかエロいなぁ。

 「あ!おにーちゃん!」

 「ん?やっと来たか、ご苦労」

  ふぅ、どうしたもんかな…?

 「おい!新入り!!」

 「はっ、はい!」

  普通に敬語を使ってる自分が嫌いだ…。てーか新入りってなにさ?

 「…なんだ?これは?」

 「え…チーズですけど…。あ、もしかして知らないんですか?プッ!」

 「馬鹿にしくさってからに〜!」

  ドガッ
  ゴスッ

 「す…すびばぜん…」

 「チーズくらい知ってんにきまってるだろが!おれが言いたいのはつまみっつったらキャビアだ
  ろってこった!」

 「…んなもん、ふつーの家にあるもんかい…」

 「…ああ!?」

 「なっ、なんでもないです!」

  こ、恐い…普段おとなしい子ほど酔うと大胆になるって本当だったんだ…。

  なんかもう膝が笑いを通り越して大爆笑してる。

  とりあえずしばらくは言いなりになっておこう…。そのうち酒もぬけるだろう…。

 「おい!肩揉め!」

 「はい!」

 「酒つげ!」

 「はい!」

 「おもしろい事しろ!」

 「はい!」






  そんなこんなで一時間ほどたってやっとすずちゃんは寝てくれた…。

  まどかと一緒にソファに寝かせる。

 「さて…と」

  ガシッ

 「きゃ…」

  逃げようとしていた摩耶ちゃんを捕まえて正面に座らせる。

  ほんのりと頬が朱いところを見ると摩耶ちゃんも軽く酔っているのだろう。

 「ま〜や〜ちゃ〜ん?説明してもらえるかなぁ〜?」

 「…なにを…かしら…?」

 「まぁいろいろと突っ込みたいところはあるんだが…」

 「あら…やだ。突っ込みたいなんて…三つあるけれど、どこがい」

  言い終わる前に摩耶ちゃんにデコピンして黙らせる。

 「…痛い…」

 「当たり前だ、痛くしたからな」

 「…ひどい…」

  無視して…と。

 「まぁいいから話せ。今度はなにをした?」

 「…元気になれる不思議なお水を…ちょっぴり…」

 「それはお酒って言うんじゃ〜っ!!」

 「…お兄様もするつもりだったんでしょう?」

  う…筒抜け…なぜだ??

 「ま、まぁそれはそうだがターゲットは摩耶ちゃんだったんだ!」

 「…そう…酔わせてナニをするつもりだったの?」

 「ナニも何もせん!」

  まぁこれ以上やったってしょうがないので今日のところは不問にしよう…おれにも後ろめたい
  とこがあるし。

 「とりあえず今日は泊まってっていいから」

  明日は休みだしいいか…それに帰れる状況でもないし。

  明日学校があったら確実に二人は休みだろう…あとの一人は平気そうだが。

 「…すずちゃんと同じ部屋で一晩…うふふ…」

  ごめん、すずちゃんなんとか貞操を守ってくれ…。

  邪魔したらあとが怖いし。

 「じゃまどかとすずちゃんを部屋に運ぶから手伝って」

 「…わかったわ…」

  あ…買ってきた酒どうしよう。

  まぁ明日からちょくちょく飲むしかないか。さておれも寝よう…。












  あっ!寺岡玄関に放置したままだ!
  …まぁいいか。


  こうしておれのドタバタした一日は今日も終わる












  おまけ

 「うっ…うっ…」

 「ん?どーしたの?すずちゃん」

 「摩耶ちゃんが…摩耶ちゃんが…」

 「………ドンマイ」





  後書き
 ども!最近近くに住んでる小学生に「変態!」と罵られた(実話)チョコナです!

 今回はすずメイン…だったはずです。

 こんなはずでは…。







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