第二回 摩耶ちゃんのお薬

  文 チョコナ

  原作 策吉







  朝。

  いつもならそろそろお兄ちゃんを起こしてギリギリで学校にいくはず…なのに…。

 「どうしたんだい、まどか?速く学校へ行かないと遅れてしまうよ?」

 「あ…うん!わかってるよ」

 「まどか、ぼ〜っとしてるけど熱でもあるのかい?」

  そう言って心配そうな顔をするお兄ちゃん。
 
 「だ、大丈夫だよ。」

 「そうか…ならいいけど、あんまり無理はするなよ」

 「うん、ありがと」

  …なぜお兄ちゃんがこんなにも爽やかで好青年で某妹姫の『お兄ちゃん』みたいになっている
  のかと言うとそれは数日前に遡る…。










  数日前の放課後…

 「はぁ〜…」

  どうにかできないかなぁ…。

 「あれ?まどかちゃん溜息なんかついてどうしたの?」

 「あ…すずちゃん…」

 「わたしでよかったら相談にのるよ?」

 「相談とかそこまで大した問題じゃないんだけど…」

 「けど話すと楽になるよ?」

 「…実はね…」

 「うん」

 「最近…まったくお兄ちゃんのまともな姿を見た事がないのよ!!」

 「…う、う〜ん。それはどうにもできないなぁ…」

 「いつもいつも!ふざけてたり!意味不明な言葉を口走ったり!」

 「まぁまぁ、まどかちゃん落ち着いて!」

 「ご、ごめんね。けどホントにどうにかできないのかなぁ…?」

ちょっと興奮しちゃったみたい。

 「摩耶ちゃんに聞いてみる?きっとなんとかしてくれるよ!」

 「う〜ん、確かになんとかはしてくれそうだけど…」

  ほんとにどうなるかわからないしなぁ…。

 「…どうにかしてあげましょうか…?」

  「「きゃっ!!」」

 「ま…摩耶ちゃん、いつの間に!?」

 「…クスッ…私はいつもすずちゃんの近くにいるわよ…?」

 「摩耶ちゃん、どうにかってどうするの?」
 
 「あんまり動じてないね…まどかちゃん…」
 

 「うん、もう大分馴れたからね」

 「そ、そう…」

  戸惑うすずちゃんを尻目に話を続けるわたし。

 「…まどかちゃんはあのお兄様を真面目にしたいんでしょ…?」

 「う、うん」

  真面目なお兄ちゃん…想像できないなぁ。

 「…それなら簡単よ…この薬を飲めば真面目になるわ…」

  そう言って摩耶ちゃんは小さいビンを取り出した。よ〜く見ると小さくドクロマークがついて
  いる…。

 「ねぇ摩耶ちゃん…そのビンにドクロマークが…」

 「…あら、いけないいけない…」

  いくらなんでも殺しちゃまずいよ…。

 「…ほんとはこっちよ…けしてわざと間違えた訳じゃないから……安心してね…ウフフ…」

  そう言って今度は12人の女の子に囲まれた青年の絵がプリントしてある小瓶をとりだした。

 「じゃ、じゃあ!この薬を使えばお兄ちゃんは一般人になれるんだね!!」

 「い、一般人はひどいよ…。まどかちゃんてば…」

 「…この薬は飲んだ者を品行方正…才色兼備…おまけに精力増強に…性能は普段の三倍よ…。…
  しかも一日成人約二錠で健康にもなれるわ…!」

 「す…すごいよ!赤なんだね!緑じゃなくて!摩耶ちゃんまさにそれを求めていたんだよ!」

  さすが摩耶ちゃん!頼りになる!

 「あんまりいらない効果も含まれてるよ、まどかちゃん…、しかも赤とか緑ってなに…?」

 「そ、それで気になるお値段は!!?」

 「…普通なら二本で一万円よ…しかし今回はお試し期間でケーキ2つで手をうつわ…」

 「そ!そんなに安くていいの!?」

 「ああ、まどかちゃんが怪しい通販にはまりかけてるよ…」

  さっきからぶつぶつ言ってるすずちゃんはほっといて。

 「け、けど簡単に飲んでくれるかな?」

 「…御飯にまぜるとかはどうかしら…?」

 「う〜ん…だけどお兄ちゃんは変なところで勘がいいからな〜…」

 「…まどかちゃんでは態度にでちゃうわね…」

  …確かに。わたしはそういう時顔に出ちゃうからなぁ…。

 「う〜ん、お兄ちゃんが疑わない人…かぁ」

  摩耶ちゃんは……だめだろうなぁ…。

 「…私は無理でしょうね…となると…」

  摩耶ちゃんとふたりですずちゃんをみる。

 「えっ!わ、わたしー!?」

 「お願い!協力して!すずちゃん!すずちゃんならお兄ちゃんはみじんも疑わないわ!」

 「人を騙すのはやだよー!」

 「…すずちゃん…これはお兄様のためなの…」

 「うっ、うう…」

  よし!もう一押し!

 「お願い!すずちゃん!わたしのためにも!」

 「まどかちゃんのため…?」

 「…そうよ…すずちゃん…これはまどかちゃんのためなの…」

 「……わかったよ!わたしがんばる!」

 「ありがとう!すずちゃん!」

  なんかすずちゃんを騙してるみたいだなぁ…。(注 騙してます

 「じゃあ作戦決行は明日の夕方ってことで…いいかな?」

 「…ええ…問題ないわ…」

 「まどかちゃん!わたしがんばるから!」

 「う、うん。がんばってね!」

  なんか予想以上にやる気が出てるな…すずちゃん…。のせられやすいタイプかな?

 「……ちょうど新しい薬を試したかったのよね…」

 「ん?摩耶ちゃん何か言った〜?」

 「…なんでもないわよ…すずちゃん…」




  そしてコロッとお兄ちゃんはすずちゃんの手料理に騙され今に至る…。






  久しぶりだな…歩いて登校するのは…。

 「なぁまどか…今日はいい天気だな」

  さわやかすぎるお兄ちゃん…なんか怖い。

 「こんな日は遠くに出掛けたいな」

 「そ、そうだね〜」

  ちなみに今日はすずちゃんは朝練で摩耶ちゃんはすずちゃんがいないと来ないので今日はい
  ない。…つまり二人っきりの登校なのだ。

 「ねぇお兄ちゃん、なんか違和感とかない?」

 「違和感?別にないけど…どうしてそんな事を聞くんだい?」

 「い!いや!別に大した事じゃないから!」

 「ははっ、変なまどかだな!」
  す…凄い!凄すぎるよ!摩耶ちゃん!ちょっとさわやかすぎるけどこれが普通の人だよ!

 「ところで今日はすずちゃんと摩耶様はいないのかい?」

  ………はい?

 「…摩耶様?」

 「ん?なにかおかしいかい?」

 「お兄ちゃん…摩耶様って言った?」

 「え…ああ言ったよ。それがどうかしたのかい?」

 「…いつもお兄ちゃんは摩耶ちゃんって呼んでなかった?」

 「そんな恐れおおい事なんてできないよ、まどか!」

  …きっとこれも薬の効果だ…。

  摩耶ちゃんに絶対服従だったりするんだろうなぁ…。

 「ねぇ…お兄ちゃん、まさかとは思うけど…摩耶ちゃんの言う事は絶対だったりしないよね…?」

 「なにを言ってるんだい?」

  よかったぁ〜…年下の女の子に服従してるお兄ちゃんなんてやだもん。
  それじゃあただのM男だよ…。

 「当たり前じゃないか」

 「…へ?」

 「摩耶様のおっしゃる事は絶対さ!!摩耶様が言うなら例え火の中水の中はもちろん満員電車の
  中コミケの中さ!」

  …駄目だ…お兄ちゃんが前より酷くなってる気がする…。いや!確実になってる!!

 「と、とりあえず学校に行こうか?」

 「そうだね、摩耶様にもお会いできるし」

  摩耶ちゃん…必ずどこかでオチを作るな…。確信犯だろうなぁ…。









  そして学校…




 「じゃあまどか、摩耶様によろしく。ついでに気を付けろよ」

 「う、うん」

  ついにわたしの存在がついでになった…。

  お兄ちゃんクラスで驚かれるだろうなぁ。








 「お〜っす!政貴!珍しく早いじゃねぇか!」

 「ん、ああお早う。寺岡君」

 「………」

 「どうしたんだい?具合でも悪いのかい?」

 「き…」
 
 「き?」

 「きも…」

 「きも?砂肝?」

 「違うっ!気持ち悪いわ〜っ!!」

 「えっ!それは大変だ!保健室に行こう!さぁ肩を!」

 「おまえっ!ボケだおす気か!」

 「なんだい!?ボケだおすって?」

  …まずい、寺岡君は言語障害を起こしてる!問題は…脳か!

 「まずい!寺岡君!早く脳を診てもらわなきゃ!」

 「余計なお世話だ!まずおまえが診てもらえ!」

  まずいぞ!興奮のあまりに前後不覚に陥ってる!

 「だれか!救急車を!」

 「呼ぶな!!」

  くっ…!病院を嫌うタイプか!どうすれば…!

 「…しょうがない……わかったよ。寺岡君…」

 「あ?なにがだよ」

 「おまえは少ない余生をしっかりと楽しんでくれ…」

 「言ってる事がさっきから意味わかんねーんだよ!」

 「ついにそこまで…、おれはおまえの事を忘れないからな…」

 「もうやだ〜っ!」

  ガラッ、どだだだだ〜!

 「ゆっくり余生を過ごせよ…」

 「席についてくださーい」

  一人感慨にふけっていたところにアースト先生が来た。

  さて今日もがんばろう!

  あ、寺岡君の事は…いいか…そっとしておいてあげよう…。






  キーンコーンカーンコーン


 「…あれ?いつの間に寝てたんだ?」

  一時間目から寝てしまうとは…、疲れてるのかな?

  そして時計を見る。

 「ええっ!もう四時間目が終わってるじゃないか!」

  いつもならこんなことにはならないのに…ん、待てよ?いつも?あれ?おかしいな思い出せな
  い…。なんでだ?

 「おい、どうした?政貴」

 「あ、寺岡君…」

  頭が痛いし体が熱い…まさか!

 「まだそんなボケ続けてるのか?」

  ぐっ…やはりこれは…恋!?(違

 「おいおい大丈夫か?」

 「う…うん大丈夫だよ。ちょっと屋上に行って来るよ」

 「ん、ああ」









 「摩耶ちゃん!」

  わたしは摩耶ちゃんを問い詰めることに決めた。

 「…あら?…どうしたの…?かわいい顔が台無しよ…」

 「あ…ありがと…」

  …じゃなくて!

 「あの薬!摩耶ちゃんの信者が増えるだけだよ!!」

 「…信者?…どんな効果が出たのかしら…?」 

  興味深そうに聞いてくる摩耶ちゃん。

  とりあえずことのいきさつを説明する…。

 「…そんなおもしろい…いえ、そんな変な効果が出たの…」

  摩耶ちゃんの言動が不穏だけど、まぁ置いといて。

 「ねぇ、摩耶ちゃん?あの薬って効果はいつまで続くの?」

 「…ああ、あれはね…」

 「うんうん」

 「…自分で自我を取り戻すか…」

 「あとは?」

 「…溜まったものをだしてあげることよ…」

 へぇ〜…溜まったものを…溜まったもの〜!!?
 
 「ね、ねぇ!摩耶ちゃん!溜まったものって…」

 「…?…言葉通りよ?」

  うう…そんなのはさすがに無理だよ…。

 「…まどかちゃんはお兄様をもとに戻したいの…?」

 「うん…さすがにあれはちょっと、ねぇ…」

  摩耶ちゃんを摩耶様なんて呼ぶし…。

 「…心配しなくても私が戻してあげるわ…」

 「えっ?また薬を使うの?」

 「…違うわ、さっき言ったとおり…溜まったものをだしてあげればいいのよ…」

  と、いうことは…摩耶ちゃんがお兄ちゃんと…。

 「わ〜!だめだめ!」

  そんなこと摩耶ちゃんにさせられないよ!

 「…なぜ?」

 「なぜって…そ、そんなこと摩耶ちゃんにさせられないもん!」

 「…?私は別に平気よ…?」

  へ…平気って、まさか摩耶ちゃん…お兄ちゃんのことを…?

 「と、とりあえずお兄ちゃんを探してくるね!」

 「…そう。お兄様なら今屋上にいるわ…」

  …なんでわかるのかなぁ…。

 「わかった!ありがとー摩耶ちゃん!」





 「…くすくす…それにしても薬の効果は上々だったようね…」

  …それにしてもまどかちゃんは<溜まったもの>をなにと勘違いしたのかしら…まぁ想像はつ
  くけど…。

 「あ〜!摩耶ちゃん!やっと見つけた〜!探したんだよ〜!」

 「…ごめんねすずちゃん…」

 「うん!いいよ、ところでまどかちゃんは?」

 「…まどかちゃんなら屋上よ…」

 「屋上?なにしにいったのかな?」

 「…わからないけど…ついでだから今日は屋上でごはんを食べましょうか…」

 「あっ!うん!いいね!」

  …おもしろくなりそうね…くすっ。

 「ごっはん〜ごっはん〜♪」

  …すずちゃん…かわいい…(はぁと)











 「うっ、寒いけど、風が気持ちいいな…」

  よく考えたら恋な訳ないじゃないか。熱かな?

 「…ああ!お兄ちゃん!」

  この声は?

 「まどかかい?」

 「どうしたの…?こんなところで…」

 「いや、ちょっと体が熱かったからさ」

 「ふ、ふ〜ん」

  体が熱いってことは…やっぱり…。

 「まどかはどうしたんだい?」

 「え、え〜っと。そ、そう!外の空気を吸いに来たの!」

 「そっか」

  お、男の人が興奮したときは確か…。

 「まどか?どこ見てるんだい?」

 「え!あのっ!その!ズボンにしみがついてるな〜って!」

 「? そうかな?」

  う〜っ…苦しかったかな…?それにしても恥ずかしいよ〜!

  …でもわたしがした事だし、責任をもたなきゃ!

 「顔が赤いぞ?まどか」

 「そ、そうかな〜。あはっあはは!」

 「さて、そろそろ戻るかな?」

  …いまこのチャンスを逃したらだめよ、まどか!こんな寒い日にはだれも屋上には来ないし!
  よし!言うぞ!

 「あっ!あの!お兄ちゃん!」

 「ん?どうした?」

 「あの…その…」

 「どうした?言ってごらん?」

  う…優しい分いつもよりかっこよく見えてきた…。

 「じ…実は私にお兄ちゃんの溜まったものをはきだして欲し「まどかちゃんいる〜?」

  す…すずちゃん!?なんでこんなしばれる(寒い)日にこげなとこに!

  まさか今の聞かれてないよね!

 「すっ!すずちゃん!」「まっ!摩耶様!」

 「いまのは違うの!言葉のあやと言うか!ほら!あれだよ!ついうっかりと言うか!」
 
 「? なにが〜?」

  き…聞こえてなかったんだ…よかった。

 「いや!なんでもないから気にしないで!」

 「?う…うん」

 「…まどかちゃん…お兄様は治ったかしら…?」

 「ま、摩耶ちゃん…い、いま言おうと…」

 「…そう…それなら私がやってあげるわよ」

 「え〜っ!!」

 「…大丈夫よ…」

  だ、大丈夫って…。

 「だ、だって摩耶ちゃんはじめてなんでしょ!?」

  そしたらかわいそうだよ!

 「…いいえ…過去何度か経験してるわ…」

 「え〜っ!!」

  そ、そうだったんだ…摩耶ちゃん…。

  あ、相手はだれだろ?

 「ま、摩耶ちゃんだれと…?」

 「…最初は…お父様かしら…?」

  え、え〜っ!それって近親…。

 「ねぇねぇ!なんの話〜?」

 「なんでもないよ!すずちゃん!」

  純粋なすずちゃんにこんな話できないよ…。

 「…じゃあ…見てて」

 「えっ!見てるの!?そんなことできないよ!」

  人がするのを見るなんて…。

 「…いいから…」    

 「う、うん」

 「…お兄様…」

 「なっ!なんですか!?摩耶様!」

 「…あなたの…いえ、あなたの中で溜まってるものはなに…?」

  ま、摩耶ちゃん…色っぽい…。

 「お、おれの溜まってるものは…」

 「ものは…?」

 「べ…」

 「べ…?」

 「小さい頃だし忘れて今も溜めてるベルマークだぁ!!」

 「…ほえ?」

 「…そう…」

 「…ん、なんでおれこんなとこにいんだ?寒っ!早く教室かえろーっと」

  たったったっ…ガチャン

 「ね…ねぇ摩耶ちゃん…」

 「…なに?まどかちゃん…」

 「いまのどゆこと?」

 「…あれはね…本人がずっと心の奥で気に掛けてるものを言わせてあげると…薬の効果がきれる
  の…」

 「…そういうことだったんだ…」

 「…くすくすっ。…まどかちゃんはなにと勘違いしてたのかしら…?」

 「え…え〜っ!か、勘違いなんかしてないよ!」

 「…くすっ。…今日はそういうことにしておいてあげるわ…」

  ま、摩耶ちゃん今日はいじわるだよぉ…。

  はずかしい一日だったなぁ…。まぁお兄ちゃんが戻ったからよしとしよう…。

 「まどかちゃーん!お腹へったよぉ〜」

 「わ!ごめんねすずちゃん!」

 「摩耶ちゃんも〜」

 「…ええ」


 「…さて、今度はどんな薬を作ろうかしら…」


  摩耶ちゃんのお薬作りは止まらない☆








  あとがき
  すいませんすいませんm(__)m
  ヤオイ話でした。…いや、そういう意味じゃなくてヤマなしオチなしイミなしな話です。
  つまらない話ですがよろしければ掲示板の方に感想をお願いしますm(__)m
  ではまた(^O^)/







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