いつだかわからない時代の、
どこだかわからない場所でのお話。


梧桐には角が生えていました。
角が生えているのは村中でも梧桐だけでした。
村のしきたりでは角の生えた子供が生まれるとその子は、
海の上に聳え立つ誰もいないお城にいけにえとして捧げられる事になっており、
今年は梧桐がお城に連れて行かれる年でした。

13歳の誕生日、3人の神官に連れられお城へ向かう馬の上でも
梧桐は暴れたりしませんでした。
自分がこれからどうなるのかは大体分かっていたけれど、
それは自分にとって当然のことと思っていたからです。
お城に入ると中は暗くてちょっと寂しくなったけど、
それでも梧桐は我慢していました。

やがて、お城の奥の部屋にある沢山のカプセルのひとつに入れられ、
カプセルのふたが閉ざされ、神官の足音が聞えなくなり、
梧桐はいよいよ一人きりでした。
梧桐は静かに目を閉じました。
すごく短かったかもしれないし、すごく長かったかもしれない時間が過ぎ、突然部屋がゆれ始めました。

梧桐を入れたカプセルは台座から転げ落ち、梧桐は部屋のど真ん中に投げ出されました。
床にたたきつけられた衝撃で気を失った梧桐は、
悪魔と出会い、自分が影に飲み込まれる暗くて怖い夢を見ました。

やがて夢から覚め、自分が広いお城の中に一人自由の身でいることに気が付いた梧桐は、
何処へ向かうともなく歩き出しました。

こうして梧桐の小さな冒険が始まったのです。




「村の為だ。」
そんな言葉で、大人はオレを冷たい石の中に閉じ込めた。
オレは「いけにえ」という存在らしい。
閉じ込められたまま餓え死ぬ運命を受け入れようかと目を閉じた時、
城は揺れ、その石は床に落ち、砕けた。

夢を見た。
鳥篭の様な牢の中、黒い闇。
液体のようにその闇は床にぽたぽたと落ち、その床は闇に染まる。
黒い闇は時折、人のような形を成す。
オレは、その不気味な姿から、それが悪魔だと思った。
その悪魔から目を逸らせずにいると、凭れていた壁までもが闇に染まり。
吸い込まれる。
黒く冷たい闇の中。
その感触を、オレは死よりも恐ろしく感じた。

目を覚ますと、オレは自由の身だった。
オレの身体は生まれながらに常人より丈夫であった為、
打った頭は多少痛むが、動けないほどの痛みは何処からも感じなかった。
立ち上がり、静まり返った城の中を見回す。
人の気配はない。
薄暗く、冷たい場所。
オレは、何処へ行けば良いのだろう。
死を迎える運命であったオレに、何故突然自由が与えられたのか。
オレは何故、生まれてきたのだろう。
村を守る為。
命を捧げる為。
死ぬために、オレは生まれたのか?

冷たい石の階段。
外の明るさを求めて、オレは塔の頂上へと上っていく。
頂上が見えたその時、その塔の頂上から吊り下げられたものに気が付く。
鳥篭のような、鉄の牢屋。
夢で見たそれと同じ形状。
ただ、その中には悪魔ではなく。
人がいた。
あの悪魔とは正反対の、薄暗い城の中で浮き上がって見えるほどの白い肌。
白い服に、銀色の髪。
細く折れそうな身体と、立ち上がることも出来ない様子に。
オレがここへ閉じ込められるずっと前から捕らわれているのだろうと想像された。



この城で、オレ以外の唯一の人間。
オレと同じ境遇。
助けてやらなければ。
そう、思った。


壁に仕掛けられた装置に気が付き、レバーを下ろすと、
その牢を吊っていた鉄の鎖が派手な音と共に牢を降ろす。
出会った人。
何故このように捕らわれていたのかと、問い掛けると。
理解できない音が返ってくる。
聞いた事のない言語。
きっと、オレの話す言葉も、相手には伝わっていないのだろう。
近くで見ると、その身体は想像以上に細かった。
このままでは、この人間はまた簡単に捕らわれてしまう。
助けてやりたい。
この色のない表情。
弱々しい声。
助けてやらなければ、きっと息絶えてしまう。
何故そう思ったのかは分からないが、オレには「助け出さなければ」という、
使命感のような感情が湧いた。
立ち上がることも辛そうなその人に手を差し伸べると、少し戸惑ったような様子の後、
その白く細い腕が伸ばされる。

初めて触れたその人は。
とても冷たい人だった。
― この人の手を離さない。 
  僕の魂ごと離してしまう気がするから。―

 


最後のフレーズで、何のゲームか分かった人もいらっしゃるでしょうか?
このゲームには本当にやられました。
そもそも、「梧桐の小さな冒険が始まったのです」までは私の文章ではありません。
説明書に書かれていたストーリーをそのままに主人公の名前を「梧桐」に変えただけです。
主人公は角の生えた異常に身体能力の優れた少年、です(笑)

そして、その後の文章は私がゲームの進み方に忠実に書いたものです。
別に半屋君へのドリームが止まらず、ここまでしつこく白い白いと書いているのではなく(笑)
本当に白い人なんです。
イラストは一応肌色塗ってますが、本当は肌に色はありません。
真っ白な肌に灰色の影が入っているような状態です。
細いのも本当。
全てゲーム通りなのです!

この後ゲームがスタートし、梧桐さんは物凄くやる気のない(笑)半屋君の手を引き、逃避行を続けます。
時には不気味な影から半屋君を救い出し。
梧桐さんにしか上れない場所には手を差し伸べて半屋君の身体を持ち上げ。
そうする内に、半屋君にもほんのりと梧桐さんへの好意の色が見えはじめます。
命がけで半屋君を救い出そうとする梧桐さん。
自分は城から逃れる事は出来ない、と知りつつ、いつしか梧桐さんと外の世界へと出たいと望むようになる半屋君。
そして二人を待ち受ける過酷な運命。

…どうです?やりたくなってきましたでしょう??(笑)
梧半云々を抜きにしても、とても良いゲームですので、お時間が許す方は是非1度プレイしてみて下さい(^^)
ゲームとしては難しいのですが(苦笑)
でもその分、結末には結構感動すると思います。
私は更に梧半逃避行ストーリーとして見ていたので(笑)より一層感動しました。