耐震連結棟

試作から30年かけ特許登録 
第4281032号





(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
 屋根の頂部に設けられる棟において、前記棟は、のし瓦と、該のし瓦を支持するための
のし瓦支持手段とを交互に積層して構成され、前記のし瓦支持手段には、該のし瓦支持手
段を上下に貫通する通気穴が形成され、これら複数ののし瓦支持手段のうち少なくとも1
つののし瓦支持手段には、前記通気穴と連通すると共に前記棟の外部側へ向かう支持手段
溝が形成され、前記複数ののし瓦のうち少なくとも1枚ののし瓦の下面には、前記棟の内
部側から外部側へ向かう瓦溝が形成され、複数の前記通気穴が連通して画成される空気上
昇路と、前記支持手段溝と前記瓦溝とにより画成される通気路とが連通することを特徴と
する棟。

【請求項2】
 平面方向に隣接する前記のし瓦同士は、ワイヤにより固定されていることを特徴とする
請求項1記載の棟。

請求項3】
 前記瓦溝は、前記のし瓦の内側側面から該のし瓦下面の幅方向略中心部まで形成された
空気導入溝と、前記幅方向略中心部から該のし瓦の外側側面まで形成された空気排出溝と
からなることを特徴とする請求項1記載の棟。


【請求項4】
 前記のし瓦は、その上面に突起が形成されていることを特徴とする請求項1記載の棟。

【請求項5】


[2]

 前記のし瓦支持手段は、その下面に、前記のし瓦の上面の突起と嵌合する凹部が形成さ
れていることを特徴とする請求項1又は4記載の棟。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
 この発明は、2つの屋根面の相交わる頂部に設けられる棟、特に通気性及び施工性の向
上を図った構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
 従来屋根の棟を構築する場合には、図9に示すように、野地板52に葺かれた桟瓦51
上にのし瓦50を左右両列にそれぞれ重ね、最上部に冠瓦54を配し、これらのし瓦50
及び冠瓦54の隙間を南蛮しっくい、モルタル等の棟土55で固めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
 屋根には直射日光が照り付けるため、夏場には桟瓦51の温度は70℃程に、また屋根
裏の空間S3の温度は50〜60℃程にもなることがある。このように、屋根に溜まった
熱は、室内温度を上昇させ、延いては光熱費を増加させる大きな原因となる。
【0004】
 ここで、上記のような従来の棟部構造では、2つの屋根面の交わる頂部が棟土55によ
って覆われてしまうため、桟瓦51と野地板52との間の空間S4内で暖められた空気は
外部に逃げることができず、熱が空間S2に溜まってしまうので、室内温度の上昇を招く
結果となる。また、多量の棟土55を使用するため重量が大きくなるので、耐震性が低く
なりやすく、更に施工作業も困難である。
【0005】
 そこで、この発明は、屋根に溜まった熱を効果的に放出することができ、また施工性の
良い棟を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
 上記課題を解決するために、この発明は、屋根の頂部に設けられる棟において、前記棟
は、のし瓦と、該のし瓦を支持するためののし瓦支持手段とを交互に積層して構成され、
前記のし瓦支持手段には、該のし瓦支持手段を上下に貫通する通気穴が形成され、これら
複数ののし瓦支持手段のうち少なくとも1つののし瓦支持手段には、前記通気穴と連通す
ると共に前記棟の外部側へ向かう支持手段溝が形成され、前記複数ののし瓦のうち少なく
とも1枚ののし瓦の下面には、前記棟の内部側から外部側へ向かう瓦溝が形成され、複数
の前記通気穴が連通して画成される空気上昇路と、前記支持手段溝と前記瓦溝とにより画
成される通気路とが連通するものである(請求項1)。
【0007】
 これによれば、桟瓦と野地板との空間にある高温度の空気は、上下方向に積層されるの
し瓦支持手段のそれぞれに形成された通気穴により画成される空気上昇路内に進入し、上
方へ抜けていく。そして、この高温度の空気は、のし瓦支持手段とのし瓦との間に画成さ
れる通気路を通り外部へ排出される。これにより、屋根に溜まった熱を効率よく放出する
ことができる。また、複数ののし瓦の隙間に、予め用意されたのし瓦支持手段を挟み込む
ようにしていけばよいので、棟土を埋めていくよりも施工が容易となる。
【0008】
 また、平面方向に隣接する前記のし瓦同士は、ワイヤにより固定されているとよい(請
求項2)。
【0009】
 これによれば、棟土の使用量が少量であっても、棟の強度を確保することができる。
【0010】
 また、前記瓦溝が前記のし瓦の内側側面から該のし瓦下面の幅方向略中心部まで形成さ

[3]
れた空気導入溝と、前記幅方向略中心部から該のし瓦の外側側面まで形成された空気排出
溝とからなるものであってもよい(請求項3)。
【0011】
 これによれば、前記空気上昇路内を通る空気が、のし瓦の内側側面、即ち棟部の内部側
の側面から空気導入溝を通ってのし瓦の下部に侵入し、更に空気排出溝を通ってのし瓦の
外側側面、即ち棟部の外部側の側面から排出される。これにより、有効に熱を放出するこ
とができる。
【0012】
 また、前記のし瓦は、その上面に突起が形成されているとよい(請求項4)。
【0013】
 これによれば、平面方向に隣接するのし瓦を連結させるためのワイヤを巻回させやすく
なるので、容易且つ強固に互いののし瓦を連結することができ、耐風性を向上させること
ができる。
【0014】
 また、前記のし瓦支持手段の下面には、前記のし瓦上面の突起と嵌合する凹部が形成さ
れているとよい(請求項5)。
【0015】
 これによれば、前記のし瓦の上面に形成されたワイヤを巻き付けるための突起が邪魔に
なることがないと共に、のし瓦とのし瓦支持手段とが互いに連結されることとなり、固定
強度が向上する。
【0016】
【発明の実施の形態】
 以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
 図1及び図2に示されるこの発明の実施の形態に係る棟1は、のし瓦6a,6b,7a
,7b、支持手段10a,10b,11a,11b、棟土5、冠瓦12、ワイヤ19を有
して構成され、これら複数ののし瓦6a,6b,7a,7b及び支持手段10a,10b
,11a,11bを交互に積み重ね、その最上部に冠瓦12を載置及び固定し、棟土5や
ワイヤ19を用いてこれらを固定することにより、野地板3に固定された桟木8に桟瓦4
を掛けて葺いた2つの屋根面の相交わる頂部を跨ぐように構築されるものである。
【0018】
 この実施の形態においては、前記のし瓦6a,6b,7a,7bは2種類計4枚が使用
され、下2段ののし瓦6a,6bと、上2段ののし瓦7a,7bとで異なる形状となって
いる。下2段ののし瓦6a,6bは、かさ状にやや反った形状を有するものであり、後述
する突起14が上面に形成されている以外には従来からののし瓦と略同等のものである。
また、上2段ののし瓦7a,7bは、以下に詳述する通気性を有するのし瓦である(以下
、通気性のし瓦7a,7bと称する)。
【0019】
 図3(a),(b)に示される通気性のし瓦7a,7bは、セラミックス等から形成さ
れ、上面22、下面23、内側側面18、外側側面20を有する。上面22及び下面23
とは、積層方向に対する上下面であり、内側側面18とは、棟1の構築時に棟1の内部側
を向く側面であり、外側側面20とは、棟1の外部側を向く側面である。この通気性のし
瓦7は、全体的には上面22から下面23側にやや反った形状を有し、幅方向(前記内側
側面18と外側側面20とを結ぶ方向)略中心部分がやや薄く、外側端部がやや厚くなる
ように形成されている。
【0020】
 前記上面22の長さ方向(前記幅方向と直角をなす方向)端部で前記内側側面部18寄
りの位置には、前記ワイヤ19を巻回させるための突起14が一体的に又は別部材を固着
させることにより形成されている。この突起14は、上端部が下端部よりも広がった形状

[4]

【0021】
 また、図3(b)に示すように、この通気性のし瓦7a,7bの下面23には、複数の
瓦溝が形成されている。これらの瓦溝は、空気導入溝25と空気排出溝21とからなり、
前記空気導入溝25は、前記内側側面18から幅方向中心部へ向けて徐々に深さが浅くな
る形状で2つ形成され、前記空気排出溝21は、前記外側側面20から幅方向中心部へ向
けて徐々に深さが浅くなる形状で4つ形成されている。尚、前記空気導入溝25及び空気
排出溝21の数及び形状は、適宜変更できるものである。
【0022】
 次に、前記支持手段10a,10b,11a,11bを、図4及び図5を参照して説明
する。この実施の形態においては、前記支持手段10a,10b,11a,11bは発泡
スチロールから形成され、下段2つの支持手段10a,10bと上段2つの支持手段11
a,11bとで異なる形状となっている。
【0023】
 図4に示す上段2つの支持手段11a,11bは、幅方向略中央に長手方向に沿って上
方へ突出して形成された突状部31と、この突状部31の下部から両外側に向かって形成
され下方へ向かってかさ状にやや反った形状の翼部30とを有して構成される。そして、
前記突状部31には、所定の間隔毎にこの突状部31を上下に貫通する通気穴33が形成
されている。この通気穴33の間隔は、前記通気性のし瓦7a,7bを翼部30上に重ね
た際に、前記空気導入溝25の内側側面18の開口部が前記通気穴33と対峙するように
調整されている。更に、前記翼部30の上面には、前記通気穴33と連通する位置から外
側端部まで支持部側溝32が形成されており、下面には、前記のし瓦6a,6b及び通気
性のし瓦7a,7bの上面に形成された突起14と嵌合可能な形状の凹部35が形成され
ている。
【0024】
 また、図5に示す下段2つの支持手段10a,10bは、幅方向略中央に長さ方向に沿
って上方へ突出するように形成された突状部39と、この突状部39の下部から略両外側
に向かって形成され下方へ向かってやや反ったかさ形状の翼部40とを有して構成され、
前記突状部39には、所定の間隔毎にこの突状部39を上下に貫通する通気穴41が形成
され、前記両翼部40の下面に前記のし瓦6a,6b及び通気性のし瓦7a,7bに形成
された突起14と嵌合可能な形状の前記凹部35が形成されている。この下段2つの支持
手段10a,10bにおいては、上記上段2つの支持手段11a,11bの翼部30に形
成された支持部側溝32は形成されていない。
【0025】
 また、上記上段2つの支持手段11a,11b及び下段2つの支持手段10a,10b
の突状部31及び39は、積層時の安定性を得るために、図1、図2、図6、図7等に示
されるように、下段のものほど幅広に形成されているが、これに限られるものではなく、
同一の幅としてもよいものである。
【0026】
 そして、前記のし瓦6a,6b,7a,7b及び前記支持手段10a,10b,11a
,11bを用いて棟1を構築する際には、屋根の頂部に位置する2つの桟瓦4,4(図1
及び図2参照)上に棟土5を盛り、この棟土5の上に前記最下段の支持手段10aを乗せ
て固定する。この最下段の支持手段10aの両翼部40の上面に最下段ののし瓦6aを乗
せると共に、こののし瓦6aの内側側面18を前記突状部31の側面に当接させる。そし
て、図8(d)に示すように、前記ワイヤ19を前記突起14に巻回させて、平面方向に
隣接するのし瓦6a同士を連結させる。
【0027】
 その後、こののし瓦6aの上面及び支持手段10aの突状部39の上面に、2段目の支
持手段10bを乗せ、この支持手段10bの前記通気穴41を最下段の支持手段10aの
通気穴41と連通させ、前記のし瓦6aの上面に形成された突起14をこの支持手段10
となっている。また、この突起14は、下2段ののし瓦6a,6bの上面にも形成されて


[5]

b下面に形成された凹部35に嵌合させる。そして、2段目ののし瓦6bを前記支持手段
10bの翼部40上に、前記最下段ののし瓦6aと突起14の位置(位相)がずれるよう
に乗せた後、図8(c)に示すように、前記ワイヤ19を前記突起14に巻回させる。
【0028】
 そして、上記と同様にして、3段目の支持手段11a及び3段目の通気性のし瓦7aを
積み重ね、図8(b)に示すようにワイヤ19を突起14に巻回させ、、更に最上段の支
持手段11b及び最上段の通気性のし瓦7aを積み重ね、図8(a)に示すようにワイヤ
19を突起14に巻回させる。すると、4つの支持手段10a,10b,11a,11b
の通気穴33,41により空気上昇路34が画成される。この空気上昇路34は、図1に
示すように、複数の桟瓦4が葺かれた2つの屋根面が対峙する頂部の空間S2と通じてお
り、空間S2は、野地板3と桟瓦4との空間S1と通じている。
【0029】
 そして、のし瓦6a,6b,7a,7bは、図8(e)に示すように、一段ずつ位相が
ずれた状態となる。また、図1及び図7に示すように、3段目及び最上段の支持手段11
a,11bの翼部30に形成された支持手段溝32、3段目及び最上段の通気性のし瓦7
a,7bに形成された空気導入溝25、及び空気排出溝21により画成される通気路36
が、前記空気上昇路34と連通する。
【0030】
 上記のような棟1の構造によれば、日射等により桟瓦4の温度が上昇し、野地板3と桟
瓦4との空間S1内の空気が高温となると、この高温空気は野地板3面に沿って上方へ移
動し、前記頂部の空間S2に集まる。そして、この空間S2に集まった高温空気は、前記
空気上昇路34を通り上昇し、前記通気路36に流入し、前記通気性のし瓦7a,7bの
外側側面20の空気排出溝21開口部から外部へ排出される。これにより、前記空間S1
内の空気が換気されるので、屋根付近に熱が溜まることを効果的に防止することができる

【0031】
 また、のし瓦6a,6b,7a,7bの上面に突起14が形成されていることにより、
ワイヤ19を巻回させやすくなり、容易且つ強固にのし瓦同士を連結することができる。
これにより、耐風性が向上する。更に、突起14の上部が下部よりも広がった形状となっ
ているため、この広がった部分が返しとなり、前記ワイヤ19及び上段の支持手段の抜け
が防止される。
【0032】
 また、のし瓦6a,6b,7a,7bの連結を、これらのし瓦6a,6b,7a,7b
間に予め作成された支持手段10a,10a,11a,11bを配することにより行うの
で、組付け性が向上する。更に、棟土5の使用量が少量で済むと共に、この支持手段10
a,10a,11a,11bは軽量の発泡スチロールにより形成したので、棟1全体が軽
量化され、耐震性が向上する。
【0033】
【発明の効果】
 以上のように、この発明によれば、桟瓦と野地板との空間にある高温度の空気は、のし
瓦支持手段に形成された通気穴により画成される空気上昇路内に進入し、上方へ抜けてい
く。そして、この高温度の空気は、空気上昇路と連通する通気路を通り外部へ排出される
。これにより、屋根に溜まった熱を効率よく放出することができる。また、複数ののし瓦
の隙間には、予め用意されたのし瓦支持手段を挟み込んでいけばよいので、棟土を埋めて
いくよりも施工が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】   図1は、この発明の実施の形態に係る棟部構造を示す断面平面図である。
【図2】   図2は、この発明の実施の形態に係る棟部構造を示す断面斜視図である。
【図3】   図3(a)は、この発明の実施の形態に係るのし瓦の上面構造を示す斜視
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ある。
【図4】   図4は、この発明の実施の形態に係る上2段の支持手段の構造を示す斜視
図である。
【図5】   図5は、この発明の実施の形態に係る下2段の支持手段の構造を示す斜視
図である。
【図6】   図6は、支持手段を積み重ねた時の状態を示す斜視図である。
【図7】   図7は、支持手段及びのし瓦を積み重ねた時の内部構造を示す断面斜視図
である。
【図8】   図8(a)は、最上段ののし瓦のワイヤ巻き付け構造を示す上面図であり
、図8(b)は、3段目ののし瓦のワイヤ巻き付け構造を示す上面図であり、図8(c)
は、2段目ののし瓦のワイヤ巻き付け構造を示す上面図であり、図8(d)は、最下段の
のし瓦のワイヤ巻き付け構造を示す上面図である。図8(e)は、積み重ねた時ののし瓦
の位相状態を示す側面図である。
【図9】   図9は、従来の棟部構造を示す断面平面図である。
【符号の説明】
1 棟
3 野地板
4 桟瓦
5 棟土
6a,6b のし瓦
7a,7b 通気性のし瓦
10a,10b,11a,11b 支持手段
12 冠瓦
14 突起
19 ワイヤ
21 空気排出溝
25 空気導入溝
31 突状部
32 支持手段溝
33 通気穴
30 翼部
34 空気上昇路
35 凹部
36 通気路
39 突状部
40 翼部
41 通気孔


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[第1図」



第「2図」


第「3図」



第「4図」




「8」JP 4281032 B2 2009.6.17


第6図」

第「7図」

「図8」


「図9」


特許証
特許第4281032号

特許棟瓦登録