輪郭の処理について



〔1図〕

りんごの絵を2枚描いてみました。
1枚は対象の周囲が背景と溶け込んでいる絵(1図)で、もう1枚は対象の周囲に線が残っている絵(2図)です。対象と周囲を隔てる線、つまり輪郭線といいますが、これがある絵にするのか、ない絵にするのかということは、印象派の登場がもたらした大きなテーマの一つとなっています。

印象派といっても絵画の傾向はさまざまですが、好んで戸外で絵を描いたという特徴があります。そうした中で、光の表現を単なる明暗だけでなく、対象の色にまで究めて「色の視覚的混合」という技法を確立します。それが〔1図〕です。それは異なる色の細かな線、あるいは点をちりばめることによって、見たときに混合した別の色として見せるという技法です。
この手の絵画は、ルノアールの初期やモネなどによく見られますし、さらにこれを徹底させ点描画の作品で知られるスーラなどもいます。
こうした色の視覚的混合の場合、輪郭線は登場しないのが普通です。のみならず、この技法で絵としての統一性を保つためには、対象の表現に使われている特徴的な色を対象の外側(背景)でも使用することが必要になりがちです。一方で、そのことによって対象と周囲を隔てる力は弱くなるという傾向が生まれます。印象派の画家が古典的な画家から非難された点の一つにこの点があります。

実は印象派の画家の中でも皆が皆〔1図〕のような描き方をしていたわけではありません。〔2図〕は同じく印象派に分類されるセザンヌ風に描いてみたもので、輪郭線を明確に残してみたものです。まねしてみて感じたのですが、セザンヌは割りと輪郭線を残す画家ですが、その処理がたいへん巧みであると感じました。
まず、輪郭線の色です。よく見ると線がはっきりとわかるものですが、それほど強くなく、対象にも背景にも溶け込む色を選んでいるように感じます。それと、その溶け込ませ方に独特な方法を感じます。
一つには影を利用するということです。対象に投影される影は一様ではなく、斑紋上にやや鮮やかさの低い色として配置されます。もちろん影の強いところではその色が強く出ますが、その際に輪郭線の色が入り込んで、輪郭線があることの不自然さを緩和しているようです。特に明度の高い背景ではそうした方法がとられているように感じます。
もう一つは色の濃い背景の利用です。もともも輪郭線に使用されている色はそれほど強い色ではないので、明度の低い色を隣にもってくると自然と溶け込んで見えるということです。
さらに、ここではまねることもできませんでしたが、丸いものの場合水平線があるんですね。一様な色をしていても水平線近くでは固有色は濃く見えるのが普通です。セザンヌの絵ではこのことを利用して輪郭線の処理をしているのではないかというふしがあります。
これらの技法によりはっきりと輪郭線を置きながら、その線を必要以上に意識させない工夫がされているようです。

〔1図〕〔2図〕で輪郭処理の違いをみてきましたが、実はみっきはどちらのタイプでもありません。境界をぼかすことは部分的にありますが、境界線は実験的なものを除いて行いません。それではどういう描き方なのかということを輪郭処理のタイプ分けみてみましょう。

〔2図〕




〔A図〕

〔B図〕

〔C図〕
〔A図〕  輪郭処理をあまり厳密に行わず、対象同士あるいは対象と背景が溶け込むように混ぜ合わせてしまうという方法です。上では〔1図〕がここに分類されます。この方法では対象が背景に溶け込むので、全体のはんなりした雰囲気を出すのに向いていると感じます。

〔B図〕  対象を輪郭線で区切るという方法で、上では〔2図〕です。この方法では対象をはっきり打ち出すような絵になります。みっきはこういう絵は描けません(好んで描くということはしません)。

〔C図〕  AやB図に比べると割と古典的な方法で、みっきはこれを多様しています。これは色の違いで境界を識別するという方法です。実際の〔C図〕では濃い色の細い境界線が入っているようにみえますが、これは左右の色が少しだけ混ざってしまったという技術的な問題によるものです。CGなどでは明確に色の塗り分けは可能ですが、アナログな絵画ではこうした問題を避けることはできません。必ず塗り重ねになるか、間に塗り漏れの白が残るというわけです。そこで、色の塗り分けで境界を識別する方法の場合、一方を先に塗り他方は先に塗った色の上に塗り重ねることによって問題を解決したりします。例えばここでは赤と青という原色系になっていますが、先に赤を全面に塗っておいて、後から境界をはっきりさせて青を塗る。そうすると境界線なしに赤と紫の色が左右に現れるというわけです。

実際の絵画では、これらの技法は完全に分類されているわけではなく、併用したり、技法の選択が中間的であったりと多様です。が、全体の傾向としてどういう絵を好むのかというのは人によって分かれるところでもあります。
みっきの絵はC図に近いと思っています。では最後に〔C図〕に割りと近いみっきの絵の部分を紹介しておきましょう。

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