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湘南 理工学舎

   逆関数とその微分

ここで逆関数の講義するのは、先に逆関数の微分積分が控えているからです。微分積分が苦手になるのも「逆関数の微積分」のところの人もいます。
ここで少しおさらいをします。…単調性について
数列に関して単調増加とは:
  数列{ \( {a_n} \) } に関し、\( a_1 \leq a_2 \geq \cdots a_n \leq \cdots \) のこと。
関数が\( f(x) \)が単調増加とは:
 \( x_1 \lt x_2 \) で \( f(x_1) \leq f(x2) \) が成り立つ場合。
関数が\( f(x) \)が狭義単調増加とは:
 \( x_1 \lt x_2 \) で \( f(x_1) \lt f(x2) \) が成り立つ場合。

・上では増加の説明でしたが、減少の方の…単調減少、狭義単調減少は\( x_1\lt x_2 \)に対して\( f(x) \)減少するものです。
・狭義があれば広義もありますね、狭義でない「単調増加/減少」が「広義」なのですが、通常この広義をつけてません。
・単に「単調」と言っている場合がありますが「文書の流れ」でこれらを判断するしかありません。
・関数 f(x) がある区間で連続かつ狭義単調であれば逆関数が存在します。
 
これから逆関数について進みます。

逆 関 数

関数 y=f(x) は変数x に対しただ一つのy が決まり、逆にしてyを決めた時に x がただ一つ決まるときがあります。(決まる条件は書きの※1)
このとき x は y の関数となり \( x=g(y) \) と表します。
関数\( x=g(y)\)の xとy を入れ替える操作します。➡\( \ y=g(x) \)となります。
なぜ入れ替えるかは…独立変数をx、従属変数をy で表す慣習に従っているからです。
この\( y=g(x) \) を \( f(x) \)の逆関数といいます。
一般\( f(x) \)の逆関数を\( f^{-1}(x) \)「fインバースx」と表します。
まとめると
\( \ y=g(x)=f^{-1}(x) \) となります。… xとy を入れ替えている形です。
注:こような逆関数がある区間で存在する条件が上記のアンダーライン部(キーワードは…連続かつ狭義単調)です。
またその逆関数も連続かつ狭義単調となります。

例:\( y=\sqrt {x} \)の逆関数:
 \( x=y^2 \) 記号の入れ替えて次のようになる。
 \( y=x^2 \) …これが与式の逆関数。また \( y=g(x). \ y=f^{-1}(x) \) となる。   
 

逆関数のグラフ

下図は\( \ y=x^2 \) とその逆関数\( y=\pm \sqrt{x} \)のグラフ(正の部分)です。
2つの関数は\( f(x)=x \)の直線に関して対称です。 関数\( f(x) \) のある点\( (a_0 , b_0) \)に対応する逆関数\( g(y) \)の点は\( (b_0 , a_0) \)です。
関数\( f(x) \)の\( (b_0)=f(a_0) \)に対し逆関数のほうは\( (a_0)=g(b_0) \)となります。
2点は互いにxとyが逆の関係にあり、それが\( f(x)=x \)という中線に関して対称となっています。
 

逆関数の対称

逆関数の微分

【逆関数の微分】

次のとおり逆関数と元の関数の微分は互いに逆数である。
(1)逆関数の微分はもとの関数の微分の逆数…もとの関数が既知の時など
(2)もとの関数は微分は逆関数の微分の逆数…逆関数が既知の時など

\( y=f(x) \)の逆関数を\( x=f^{-1}(y)=g(y)\)として\(\underline{ x=g(y)} \) と表せる。 両辺をxで微分すると(合成関数の微分を使う):
\( \frac{d(x)}{dx}= \ 1 \ = \frac{d}{dx} \left( g(y) \right) = \frac{dg(y)}{dy} \frac{dy}{dx} =\frac{dx}{dy} \frac{dy} {dx} \)

 \( \therefore \underline { \frac{dx}{dy}= \frac{1}{\frac{dy}{dx}} }  or \ \underline { \frac{dy}{dx}= \frac{1} {\frac{dx}{dy}} }  \)

となります。(上の2つの式は設問内容や微分のしやすさで決める)
さっそく次の例題に進み、実感してみましょう。

例 題

次の逆関数の導関数を求める。

  

(1)\( y=\sin^{-1} x \ \)

 
\( y=\sin^{-1} x \) とすると\( \ x=\sin y \ \)と表せるので
\( \frac{dy}{dx}= \frac{1}{\frac{dx}{dy}} = \frac{1}{\frac{d(\sin y)}{dy}} =\frac{1}{\underline{\cos y}}= \underline{\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}} \quad \tiny (a) \)

上の下線の項は \( \sin^2 y + \cos^2 y =1 \) から導出。
( \( cos y =\pm \sqrt{1-\ sin^2 y}=\sqrt {1-x^2 } \) )
また答え(a)の \( \sqrt{ \cdots } \)ルートにマイナスがないのは定義域を主値[-\( \pi \)/2,\(\pi\)/2](※1)を前提にしたからです。

  

(2)\( y=\tan^{-1} x \ \)

\( y=\sin^{-1} x \) とすると\( \ x=\sin y \ \)と表せるので
定義域 (-∞< x < ∞)
\( x=tan\ y = \frac{sin\ y}{cos\ y} \) \( (x=tan\ y)' = \frac{(sin\ y)'(cos\ y)-(sin\ y)(cos/ y)'}{(cos\ y)^2} \)
\( = \frac{(cos\ y)^2 +(sin\ y)^2}{ {cos}^2y } = \frac{1}{1+{cos}^2y} \)
( \( = \frac{1}{ {cos}^2y } = {sec}^2\ y \) )
以上より
\( \frac{dy}{dx}= \frac{1}{\frac{dx}{dy}} = \frac{1}{ \frac {d(\tan y)}{dy}} =\frac{1}{ {1+{tan}^2y}}= \underline{\frac{1}{ {1+x^2}}} \)

coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…主値とは(※1)

逆三角関数の主値(例題(1)※1)

 

逆関数の主値

  【 \( cos^{-1} \)曲線 x-y(横-縦) 】

 
簡単にいうと、三角関数は周期関数なので、グラフを見ての通り、定義域の中のx=0.4に対してyの値が多数、存在します。
そこでその中で基本となる一周期の値域に限定し、これを主値という。
 \( cos^{-1} x \) の場合:主値は\( [0, \pi]\) ( 定義域は[-1,1] )
 \( sin^{-1} x \) の場合:主値は\( [-\frac{\pi}{2} , \frac{\pi}{2}] \) ( 定義域は[-1,1] )
 \( tan^{-1} x \) の場合:主値は\( (-\frac{\pi}{2} , \frac{\pi}{2}) \) ( 定義域は\( (- \infty ,\infty)\) )
 (上の\( tan^{-1} x \) の定義域、値域は開区間で定義されているのにご注意。)