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湘南 理工学舎

 楽しく学ぶ…微分積分

  イプシロン・エヌ論法1

 (ε・Ν論法)

 数列の収束の証明法の \(ε・N\) 論法について説明にします。
本によっては ε・δ 論法(関数の収束も併せて)といて扱っていますが、ここでは ε・Ν 論法として扱います。
 以前は微分積分のはじめには必ずイプシロン・エヌ論法(ε・Ν)の授業がありました。
理解しがたく、難しいと感じる人が多く、微分積分の最初の関門です。
 分かり易くをモットーに書きますので、是非ついて来て下さいね!

\(ε・N\) 論法を使わない高校では:
今、数列\( \{a_n\} \)、\( n \)は自然数(正の整数)に対し、次式があります。

 \( \{a_n\}=\{\frac{1}{1},\ \frac{1}{2},\ \frac{1}{3},\ …\frac{1}{n},\ …\} \)

下式は数列の一般項です。
 \( a_n= \frac{1}{n} \)

次の式は\( n \)を無限大にしたとき、\(0\) に収束する意味の式です。
  \(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \frac{1}{n}=0 \cdots (1)\) 

高校では数列\( n \)を限りなく大きくしたとき、この数列は限りなく0に近ずくとして:
\( \{a_n\} \)は0 に収束し、0 を数列\( a_n \)の極限値と言った。(極限値 \(α=0 \)です)
「限りなく近ずく」とは直感的、主観的です。
これなら馴れいて分り易いのですが、大学ではそうはいきません。
ε・N 論法が導入されます。
ε・N 論法での定義
\( n \):自然数、\(N\):自然数 \(ε\):実数
任意の正の数\(ε\)が与えられとき、ある自然数\(\ N\ \)が存在して、
\(n\)が\(n≥N\)ならば 
 \(|a_n-α|<ε \cdots (2)  \)  
が成り立つ\(\ n\ \)が、見つかるとき、
\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \ a_n=α \)となる。 

すなわち数列は収束して、その極限値は\(\ α\ \)であるといいます。
ε・N 論法の説明
以上が定義ですが、曖昧さがなく厳密・簡潔すぎて、難しいですね!
以下に詳しく説明します。
\(ε\) は小さな数です。(式(2)が意味しています)
\(\because \)\( \ ε \)(エラー)は\(a_n\)と\(\ α\ \)(目標値※)の差であり、小さいほど精度が高い。
(※:推測した極限値)
(最高の精度(ゼロ)なら\(a_n=\alpha \)となり\(\alpha\)数列の極限値になります。)
(これは数学的説明ではありません。)

任意とは 「すべて、勝手な、どれも」などの意味です。
「任意の正の数\(\ ε\)」とは勝手な小さい数です。
今、次の数列を考えます:
\( \{a_n\}=\frac{1}{1},\ \frac{1}{2},\ \frac{1}{3},\ …\frac{1}{n},\ …\)

この数列の一般項は:
\( a_n=\frac{1}{n} \)
式(2)は次のようになります。
\( |a_n-α|<ε\) \(\rightarrow |\frac{1}{n}-0| <ε\quad \therefore n>\frac{1}{ε} \)
以下の説明ではnをNとしてNを求めます。
\( \frac{1}{n} \rightarrow \frac{1}{N}\)
として考えます。
(N が求まれば、\(n=N+1\)からn が求まる。)

数列の番号 N を大きくすれば\( \{a_n\}\)はいくらでも小さくなります。
(下図は数直線上でイメージです、収束近辺を拡大して見るとεはいくらでも小さくでき、また1/an もいくらでも小さくできます)
例えば\(ε=0.1\)に対する\(N=\frac{1}{0.1}=10\)が存在しします。
また\(ε=0.01\)に対する\(N=\frac{1}{0.01}=100\)も存在します。
さらに\(ε=0.001\)に対する\(N=\frac{1}{0.001}=1000\)も存在します。
従って どんなに小さな正の数εに対して
 •いつもそれに対応できる数列の番号N が決められること。
 •決めたN より後のすべての項\(a_{n+k}\)について、\(ε\)より小さくできる。
がいえます。
これよって「限りなくαに近ずく」を使わないで「数列がαに収束する」といえることになります。
証明にあってポイント:
•まず、n と \(ε\)の関係式を作る。
•この説明では具体的な数値を使いましたが、実際の証明には数値は使いません。
…説明終わり…
図において\(a1,a2,…an,…\)は\(\frac{1}{a_1},\frac{1}{a_1},…\frac{1}{a_n},…\)のことです。
epsiron-N

ε・N 論法の定義(分かり易いバージョン)
上の説明から次のように分かり易い表現します。
\( n \):自然数、\(N\):自然数 \(ε\):実数
正の数\(ε\)をどんなに小さくしても、ある自然数\(\ N\ \)が存在して、
\(n\)が\(n≥N\)ならば 
 \(|a_n-α|<ε\) が成り立つ\(\ n\ \)が見つかるとき、
\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \ a_n=α \)となる。 


ε・N 論法の具体的な証明
それでは数列\( a_n=\frac{1}{n} \) に対し次式が成立することをε・N 論法により証明せよ。

\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \frac{1}{n}=0 \cdots (1)\) 

【証明】
まず初めに極限値\(α=0\)とを推定します。
証明すべき式 \(|\frac{1}{n}-0| <ε \)から
\(|\frac{1}{n}|<\varepsilon \ \) であり \(\ \frac{1}{n}<\varepsilon\)となる。 

\(\therefore n>\frac{1}{\varepsilon}\)

\(n >N >0\)から \(\frac{1}{n}<\frac{1}{N}\ \)

\( \therefore\) \( |\frac{1}{n}-0|\ =\frac{1}{n} <\) \(\frac{1}{N}=ε \)
つまり どんなに小さな\(ε\)与えられても

\( N>\frac{1}{\varepsilon} \)なる\(N\)が存在して
\(n>N\) ならば、 \( | \frac{1}{n}-α|<ε \) が成り立つ。
したがって
\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \frac{1}{n}=0 \) 

となることが証明できました。

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[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした