フィッシャー・キング

1991年・アメリカ
THE FISHER KING
テリー・ギリアム:監督

 『未来世紀ブラジル』でのトラブル、『バロン』での大幅な予算超過などなどのトラブルで、自分の作品を取ることが難しくなったテリー.Gが、やとわれ監督をした第1作目。この映画撮影前に、ハリウッドのエージェントに所属したのです。

 ハリウッドからのひどい攻撃を受けていたテリーは、この映画で自分に課していたルールを破り、メジャースタジオに雇われ、最終編集権を放棄することにします。

 所属先から送られてた脚本には、『アダムス・ファミリー』もあったそうですが、その脚本を読んで落胆したテリーの目に留まったのが、若手脚本家のリチャード・ラグラヴェネスの書いた『フィッシャー・キング』だったそう。大作には関らないと思っていたテリーに、ちょうどよいサイズの物語だったそう。

 主人公のパリー役を熱望していたロビン・ウイリアムズがごく短くまとめた、希望する監督のリストにテリーの名前があり、ロビン獲得のために選ばれたというのがテリーの見解。ちなみにジャック役のジェフ・ブリッジスのことはテリーが熱望し、最初はやったことがない役柄だと断られたものの、役に決まったのだそう。

 お話ですが、かつては売れっ子DJだったジャックが、今ではすっかり酒びたりで、アンというビデオ店を営む女性のヒモ同然の日々を送っているところからはじまります。
 三年前に自分の発言のせいで起きた殺人事件で落ちぶれたのです。ある日、ホームレスと間違われて、ホームレス狩りに遭ったジャックは、パリーというホームレスに助けられます。
 が、パリーは三年前の殺人事件で、奥さんを目の前で亡くして気のふれてしまった元大学教授でした。

 自責の念に駆られながらパリーと付き合うジャックですが、だんだん人生が上向きになってきて、アンを捨てて元の職場へ復帰、リッチな生活を取り戻すと、 かつての友人だったホームレスたちを無視するように。
 が、ホームレス狩りに遭って失語症に掛かったパリーと再開したジャックは心を揺さぶられて・・・という展開。

 主要人物4人全員、魅力にあふれています。
 確か公開当時、戸田奈津子先生も褒めていたような記憶が。
 これはモンティ・パイソンを知るずっと前に見て感動し、 そのあとも録画していたのを何回も見た映画です。

 ただ、恋愛ものとして見ようと思うと、ジャックの恋愛はアンの性格の強さと優しさに支えられているので、 男の身勝手を感じるかも。

 パリーの幻想シーンがとても美しい!
 グランド・セントラル・ステーションで、ラッシュで混雑した中、隣り合ったふたりがふいに恋に落ちてワルツを踊りだすのです。
  
 これはテリーがステーションでのロケハン中に思い付いた案で、脚本家曰く「あの場面は彼が以下に脚本を押し広げ、寄り良いものにしてみせるかの好例だ」。
 ただしテリー自身は、アイディアを使わずに脚本どおりにやろうという意思が硬く、当初はやるつもりになていなかったのだそうだけれども、素晴らしい案を実現するように説得されて、自らの案を撮影したのだそうです。