1998年・アメリカ FEAR AND LOATHING IN LAS VEAS テリー・ギリアム:監督 前2作でやとわれ監督としても才能を発揮できることを証明した彼でしたが、他の監督から引き継いだこの映画では、またまたごたごたにまきこまれることになります。 原作はハンター・トンプソン。もともとはアレックス・コックスが監督することになっていたのでしたが原作者とそりが合わずに途中降板をすることに。それをテリーが引き継いだのでしたが、封切数週間前になって米国脚本化教会が、脚本クレジットにコックスとほかの一人の名前を出すと言い出して揉め、結局、テリーの名前もクレジットされることになたのですが、そのあともごたごたしていて、テリーは上映前に流す短編を作ります。 『ドレスの型紙』と題されたそれは、アメリカ国旗と額入りの現作者の写真を背にした俳優が、「紳士淑女の皆様、今晩、お目にかけますのは脚本に基づかずに作られた初の映画でございます。作家たちはいかなる段階にも携わっておりません。この驚異的かつ単純な事実を否定せんという策謀家がおそらくは海外に司令部を持つ危険な組織によってなされました。この組織名は国家の安全のために伏されたままとなっております・・・・・・しかし、どうぞ欺かれませんように! かの偉大なるアメリカの愛国者ドクター・ハンター・S・トンプソンの仕事の枠を使用して、この映画は献身的職人の手で編まれました。脚本に基づいてではなく、アメリカ的往き方と正義のために闘う、恐れを知らぬ戦士――トニー・グリソーニ氏とその助手テリー・ギリアムによって作られたドレスの型紙を元に。アメリカ国民の皆様、どうぞゆめゆめ・・・・・・繰り返します・・・・・・欺かれませんように! 皆様の国家を左右するのは皆様なのですから! ありがとう存じます」と吟唱するというもの。 結局、脚本化協会が手を引いて、短編は上映されぬままに終わります。 ちなみにテリーが監督を引き継いだことをゴンゾー役のベニチオ・デル・トロは、「セスナ機がジャンボ機に化けた感じ」と言っています。 ジョニー・ディップがはげ頭・・・。 1971年を舞台にした、簡単に言えば、薬漬けロード・ムービーです。 トリップしたときに出てくる幻覚も、ラスベガスの町も、屋内遊園地も、全部キラキラと強烈。ベトナム戦争とアメリカについて、というのが、この映画の眼目 だと思うのですが、映画内で流れるニュースでは、ドラッグで死んだほとんどの人間がベトナム帰りだと流れます。 主人公はといえば、どっぷりとドラッグに浸 りきりながら、ドラッグ文化を否定しようとし、ドラッグの虜になったら、トンネルの中でいつか助けが来ると思って待っているだけだ、と言います。 結局彼は、フ リークの国でフリークとして生きる、ことを選択するのです。 ドラッグはやっていなくても、物悲しいような、生きるってこういう感じ、と思う映画です。 さてさて、この映画には出来上がってからもゴタゴタが持ち上がります。映画かは無理だといわれていた作品の映画かであるこの作品、評論家の支持を得られなかったのです。 しかし原作者のハンターは、一度は曲解されたものがメディアに載ってしまったテリーの発言を知って怒りまくったそうですが、作品を観て、「負け戦の戦場に流れる、不気味な召集ラッパの響き」と評し、絶賛したのでした。 |