バロン

1989年・イギリス
THE ADOVENTURES OF BARON MUNCHAUSEN
テリー・ギリアム:監督
エリック・アイドル:出演(バートホールド/デズモンド[二役])

 18世紀。
 トルコ軍から町を救うために立ち上がった伝説の老人バロン、その忠僕と愛らしい少女の冒険譚。

 結構長いこと子供向けだと思っていたのでテレビでやっていても見ないでいたけれど、大人も楽しめるファンタジーです。子供も楽しめるけれど、大人が見たらもっと面白い、とでも言うのでしょうか。映画自体は、監督の三人の子供たちへ捧げられています。
 
 撮影はヴィスコンティ監督の『山猫』、フェリーニ監督の『アマルコルド』などを手掛けたジョゼッペ・ロトゥン。パイソンのコントに『山猫』が出てくる回がありますが、その撮影者が撮影というのが、なんだか凄いなぁなんて思ったり。衣装はといえば、やはりヴィスコンティ監督の『ベニスに死す』やフェリーニ監督の『女の都』を手掛けた人、ガブリエラ・ペスカッチ。音楽のマイケル・ケイメン、特殊効果のリチャード・コンウェイは、『未来世紀ブラジル』でも一緒に仕事をした人です。

 美しいシーンが満載です。

 不死身で無敵のバロンが少女サリーと出会った時、彼の語る冒険譚に関る従者は一人もいませんが、サリーと乗った気球で行った月では、一の従僕らしいのにバロンのせいで月の王に幽閉されていた、エリック演じる韋駄天の従者と再会、思わぬ場所で思わぬことをしているところで再会する怪力の従者、やはりおかしな場所で再会することとなる遠目の従者とすごい肺活量の従者と一緒になっていき、冒険は進みます。いろいろな要因で、昔の冒険はもう出来ないと思っていた従者たちもバロンと共に、サリーの街を救うのです。

 頭は知性で身体は欲望のみの月の王、バロンに思いを寄せる月の王の妻、ヴィーナスを妻とする荒っぽい火山の神、何でも飲み込んでしまう魚のモンスターといった、物語に出てくる人や動物たちを並べただけでも、かなりわくわくする感じが伝わるのではないでしょうか。

 ヴィーナスのユマ・サーマン、びっくりするほど美しく、バロンとの空中でのダンスシーンはとても素敵。ほかのシーンもとっても綺麗。火山の神の言う、「武器を必要と思わない人間には他の武器がある」というのが、なんだか印象に残っています。

 そういえば、バロンと旅するしっかりものの少女は、たぶん昔、NHKでやっていた『アボンリーへの道』で主役だった女の子のような気が。ちなみに悪役は、同監督の傑作『未来世紀ブラジル』で主人公をやった、ジョナサン・プライス。月の王はロビン・ウィリアムスです。そういえば、スティングがほんの少し出てきます。