モンティ・パイソンと映画

モンティ・パイソン アンド・ナウ
(AND NOW FOR SOMETHING COMPLETELY DIFFERENT)

1971年度作品・イギリス映画 ・88分


 劇場用映画第1弾。
 第1シリーズ終了後、プレイボーイ・クラブの代表だったローンズという人がパイソンズの面白さに目をつけて資金の半分を出資、残り半分の出資者も探して、のアメリカ進出を視野に製作されたものです。 

 映画に入れるスケッチは、ローンズ氏が見たことがあって、彼が面白いと思ったもの、という基準が設けられていました。内容は、第1シリーズのベストと第2シリーズのスケッチの一部を、新たに撮り直した形です。
 TVのほうとは当然繋がり方も違ってきていますが、その違いも楽しめます。

 アメリカの学生を当てこんで製作された映画でしたが、アメリカではまだ早かったとか、アメリカの宣伝部が子供向けのようなポスターを作ってしまったとか、いろいろあって当らなかったそうです。

 しかし英国では、すでに放映されたものであったにもかかわらず、ヒットを飛ばします。
 
 この映画でグループは、編集に大切なことをいくつか学んだそうです。

モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル
(MONTY PYTHON AND THE HOLY GRAIL)

1975年度作品・イギリス映画 ・92分


 劇場用映画第2弾。アーサー王と円卓の騎士を題材に、パロディしたものです。
 この映画はアメリカでも大当たり。低予算、5週間という短期間で撮影しなければならなかったものながら、大きな利益をもたらしたのでした。ちなみにパトロンは、レッド・ツェッペリン、ピンク・フロイド、ジェスロ・タル、アイランズ・レコード、クリサリス・レコード、カリスマ・レコードと、ロックバンドやレコード会社だったそうです。グレアムの恋人の話によれば、この映画の撮影時に、メンバー全員が家を抵当に入れていたらしいです。
 
 テリー・ジョーンズとテリーギリアムの、両テリーがメガホンを取りました。
 「テリーって名前の奴が監督をしよう」とテリー・Jが言ったのだそうで、テリー・Jによれば、監督をしたいとは思ったけれども、完全な自信はなかったので、テリー・Gのヴィジュアルセンスの力を借りようと思い提案したそうです。

 しかし撮影に入ると、テリー・Jはすでに他のメンバーとの仕事を沢山こなしていましたが、テリー・Gはといえば、あまりみんなと顔を合わせる機会もなかったせいで、問題もいくつか発生したようです。

 DVD版は驚くほど盛りだくさんの内容で、通常の映画、両テリー監督たちの解説音声、亡くなったグレアムを除く、監督以外のメンバーの解説音声、テ リー・ジョーンズとマイケル・ペイリンがかつてのロケ地を巡る旅、当時撮られたBBCのドキュメンタリー番組、ココナッツの使い方にレゴブロックのミュー ジカル、カラオケ、作品の資料、当時の劇場予告、監督二人の新しい回想に加えて、この映画が好きではない人のための(笑)シェイクスピア作品朗読付き、なんてい うのも入っていて、とにかく楽しめます。

 ぶっちゃけ、アーサー王伝説に詳しくなくても大丈夫。
 最初に見た時には、図書館へアーサー王本を借りに行ったのでしたが、概要をぼんやり知っている程度の人ならば、あの話がこんな風になったのか、という発見は出来ます、ということで。
 
 アフリカのツバメとヨーロッパのツバメの違いや、素敵なココナッツの使い方、民衆と王様の考えの相違なんかが分かる一本、とでも言っておきましょう。
 日本では、彼 らの作品中で最も人気のある作品。

モンティ・パイソン ライフ・オブ・ブライアン
(MONTY PYTHON'S LIFE OF BRIAN)

1979年度作品・イギリス映画 ・93分


 キリストの隣で生まれた、ローマ人の父とユダヤ人の母を持つ、ブライアンの一生。
 ブライアンが救世主と間違われるところや、十字架に掛けられてしまうなどといった辺りがキリスト教徒の気に食わなかったために、上映禁止などの騒動が持ち上がった映画です。

 『ホーリー・グレイル』のプロモーション旅行中、次の映画は何にしますかと記者に聞かれた時に、エリックが「イエス・キリスト/栄光への欲望」と答えたことで、それは面白そうだと、企画が出発したそうです。

 が。
 宗教をテーマにしたせいでスポンサーが名前を出したがらなかったりして、資金集めに苦労しましたが、エリックの友達でもあり、「空飛ぶ」の1回目を見てすぐにBBCへ感激の手紙を出したジョージ・ハリソンが、資金を出すことになります。彼は「出来上がったものが見たいから」という理由で、家を抵当に入れてまで資金を出したそうです。
 監督はというと、前回の2人体制があまり上手くいかなかったので、テリー・Jが監督、テリー・Gは美術監督をすることになりました。

 ありとあらゆる聖書という聖書を読んで、聖書を題材にした映画を観て、当時の時代背景を研究した結果、彼らはキリストはすごくいい奴だった、弟子も陽気な奴らだったと気が付いたのでおちょく るのはやめて、キリストという存在自体をネタの対象にするのはやめにします。
 
 「笑いのターゲットにするのは、キリストとその弟子たちではなく、神に語りかけなさいと指示する教会と、権威を振りかざす司教たち、独善主義に染まった馬鹿野郎たちなど、掃いて捨てるほどいる宗教屋たちということになったんだ」と、エリックは語っています。

 マイケルも、「我々の映画がターゲットとすることは、”イエスは実在しなかった”でも”イエスは詐欺師だった”でも、”イエスは間違っていた”でもない。我々は翻訳されたものに基づいて映画を作っており、翻訳されたというのは、政治的行為なんだと、そうしてあらゆる翻訳されたものが、歴史を通して人々に利用されて、あらゆる行き過ぎた行為を許してきたんだということが重要なんだ」といい、都合よい解釈をした人間が貧乏人を騙して金を踏んだくることについてを、言いたかったと語っています。

 その言葉を待つまでもなく、別に、キリスト自身をおちょくっているわけではないことは見れば分かりそうなものですが、キリストを冒涜していると考えるほうが、むしろ冒涜のような・・・。宗教で金儲けをしている人間にとっては都合の悪い映画であったことは確かだったからか、上映禁止になった地域はたくさんありました。しかし映画は大ヒットを飛ばします。

 風当りは強く、TV番組ではジョンとマイケルが宗教家と討論する企画もありました。しかし教会関係者の攻撃は、歴史的交渉を踏まえたわけでもなく、ただ、ヒステリーに満ちたものでしかありませんでした。
 そんなこともあったものの、マイケルは知り合いの教会関係者に「いい映画」という評価を貰ってもいるそうで、ヒステリックにイエスを題材にしたことに怒る人間でなければ、彼らの言いたかったことの分かるものなのです。

 CMなどで使われたことのある、グレアムのお葬式でも歌われた、エリックが作詞作曲の「always look on the bright side of life」は、この映画に使われていたもの。とてもよい歌なので何度もカバーされたり、エリック自身が歌って再ヒットさせたりというのを繰り返しているそうです。
 フォークランド戦争で沈みかけた駆逐艦で救助を待つ兵士や、湾岸戦争で出撃する前のパイロットも、この歌をうたったのだそうです。イギリスでは、お葬式で流して欲しい曲の3位にも選ばれているようです。

 ちなみに現在、DVD発売は未定です。私がもっているのは、日本語吹き替え版のビデオと、本人たちの声で見たかったので、英語が分からないくせに輸入版ビデオですが、脚本も出ているので、DVDの発売までは、そういったもので楽しむのがよいかと思います。

モンティ・パイソン 人生狂騒曲
(MONTY PYTHON'S MEENING OF LIFE)

1983年度作品・イギリス映画 ・107分


 メンバー全員が集まった最後の映画。
 この頃にはすでに全員がソロで活躍をはじめていて、映画作りに対してジョンだけはイヤイヤだったのだそうですが、それでも残りのメンバーだけで、まずは台本の読み合わせをしていたそうです。
 
 しかしやっとジョンが参加した頃になっても、映画のテーマは見えてこなかったのでしたが、ある朝、エリックが「作品のタイトルは、ミーニング・オブ・ライフ(人生の意味)と呼んでもいいかもね」と言ったことから、それまでに書き溜められていたネタを、誕生から死までにまとめ上げることになったのだそうです。
 
 作品の資金を集めるためにユニバーサルと契約を結ぶことになりますが、映画会社に口を挟ませずに撮影をするために、脚本は見せず、見積もりと一緒にエリックの書いた、内容をほんの数行の詩にしたものだけを沿えて出したのだそうですが、ユニバーサルは簡単にゴー・サインを出したそうです。

 すでに、「パイソンと契約してパイソンの新しい映画をやる」ということ自体が、ユニパーサルにとってもスゴイことで、アメリカ中のコメディアンが、その契約を聞きつけてユニバーサルと契約したそうです。

 ジョンはあまりミーティングに出たがらず退屈もしていたそうで、そのせいで問題もありはしたようなのですが、パイソンズの後方や個人マネージメントを手掛けるナンシー・ルイスは、こう言っています。
 「思い返せば、みんな毎日のように現場に足を運んでいたわ。端に演技をする俳優よりも頻繁にね。彼らは素晴らしい共同作業を行っていたわ。互いに良い影響を与え合っていた。台詞のきっかけを与え合ったりしてね」

 そうしてこの映画は、カンヌ映画祭審査員特別賞を受賞することとなります。

 人生の意味とは? 魚たちが問う中、人間たちは様々な人生の一片を垣間見せます。
 魚って、英語ではいろいろな意味があるそうなので、とりあえず英和辞典を 引いてみましたが、本当に、なんでこれとこれが同じ意味なのだろうと頭を悩ませるようなものまでもが、同じ魚に意味が含まれていたりして、こういうのは 英語圏に生まれて英語圏で育たないと、脳にピンと来るものがないのだろうなあなんて、残念に思います。
 いえ、魚の意味が分からなくても、魚であることが面白ければいいのだし、映画は楽しめるので大丈夫です。
 
 人前でのベッドシーンどころか、血飛沫やゲロ飛沫まで出てきますが、おなかを抱えて笑えます。私、「空飛ぶ〜」を二巻ほど借りたばかりだった頃にこれを見ましたが、あんまり面白いので貸し出し期間の毎日、見てしまいました。母もかなり受けていたので、頭からお下劣なシーンはいやだという人でなければ、楽しめると思います。
 
 美しいシーンもあります。
 第三世界編のミュージカルはわくわくするし、臓器移植に出てくるミュージカルシーンは、血飛沫シーン後なのにもかかわらず、幸せ気分になれること請け合いです。 

ちなみに、2003年発売のスペシャル・エディション版には、カットされていたシーンも入っています。かなりおまけ満載なのにもかかわらず、お値段お買い得です。