始めに  
最近話題のPTSDってなんでしょうか?鬱とは何が違うのか?皆さんの疑問にお答えるとともに、対応策を考えて行きたいと思います。
    
 目次

Q1.PTSDって何?

Q2.PTSDの発症原因って何?

Q3.落ち込んでいる人は励ます方が良いの?

Q4.どうもPTSDらしい、どうすれば良いの?

Q5.PTSDの治療方法は?

Q6.病院で治療を受け始めたら安心?

Q7.回復は順調に進むの?

Q8.鬱気分の治療方法は?

      PTSDに付いてのご質問はこちらまで↑

鬱やPTSDを身近に感じない人生は幸せです。しかし、不幸にして遭遇する可能性は、誰にも有るのは事実です。このページはPTSDを考えるコーナーです。

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Q5.PTSDの治療方法は?

A5.鬱は、脳内伝達物質の過不足によって起きる事が確認され、良い治療薬が開発されています。しかし、PTSDは、先にも述べたように、自分の外からの衝撃で『自分の力の無さ』『無力感』『孤立無援感』『孤独感』等々、自分自身のアイデンティティーを崩される事態でトラウマを負い、まるで『心が複雑骨折』を起こした様なものです。このため、残念ながら、発生メカニズムも不明確で、PTSDそのものを治す薬は開発されていません(だから、対処療法として、抗鬱剤や睡眠導入剤を使用しています)。治療方法も確立されているとは言いがたい状態です。しかし、発生条件が、『自分の力の無さ』『無力感』『孤立無援感』『孤独感』等々、自分自身のアイデンティティーを崩される事態ですから、自分自身のアイデンティティーを取り戻すことが治療方針です。現在研究が進んでいる治療法として、

@.被曝療法;クライアントに当時の状況を思い出してもらい、その中で、何が起き、どんな気持ちだったかを追体験して、トラウマとなる出来事の意味をクライアントの中で再構築し、『あの状況の中でベストを尽くした』『今の自分の状況に責任は無い』等々、『自分の力の無さ』『無力感』『孤立無援感』『孤独感』をクライアントの心の中から追い出し、自分自身のアイデンティティーを取り戻すことを目指します。ただ、繰り返し、当時の状況を思い出すので、治療の初期にドロップアウトする人も多く、全員が全員、セッションの最後までたどり着けません。だだ、最後までたどり着けた場合、トラウマから脱する可能性は高いようです。

A.巻き戻し法;当時の状況をまるで映画を見ている様に、第3者的に思い出します(自分自身は追体験しない)。その直後、自分が最後の場面に入り込み、事件前の安全な状況まで、まるでフィルムを高速で巻き戻すように追体験します。フラッシュバックとか、不意に思い出される嫌な特別な記憶を自分自身がコントロールできる(巻き戻せられる)通常の記憶に昇華させることで、自分自身のアイデンティティーを取り戻す治療方法です。比較的簡単で、短時間に効果が上がるそうです。興味ある方は、ディビッド・マス著 トラウマ「心の後遺症」を治す 講談社発行をお読みください。

などがあります。各人にとって、最適な治療方法が異なります。1つの方法が駄目でもあきらめないでください。


Q6.病院で治療を受け始めたら安心?

A6.実は、治りかけが非常に危険です。
 PTSDの患者も、ある程度回復してくると、将来や人生の意味を考える気力が出てきます。しかし、現状は全治から程遠いのを一番感じているのは、患者さんご自身です。そうすると、将来や人生に希望を見出せず、失望してしまいます。
 また、周囲の状況も見えるから、『中々回復しない私が居ると、周囲に迷惑を掛けてしまう』と考えてしまう事も有る。その結果、体力が戻っている分だけ、衝動的な自殺に走りやすいのです。
 そして、PTSDの人は、白黒思考に陥りやすいのです。白黒思考とは、0か100かの二者択一の思考。『一時のひどい状態から回復してきても、まだ完全な健康とは言えない。そうすると、自分は、まだ病気で駄目なんだ』と考えてしまう。客観的には、一時の絶望的な欝から見れば、状況は回復しているし、決して悲観する状態じゃないけど、本人は、白黒思考により駄目人間とレッテルを貼ってしまう。そうなると、自殺に走る場合があります。
 自殺に走る兆候は、注意深く観察していると分かります。『疲れた、もう頑張りたくない』『私が居ると、迷惑掛けるから』『別れたい』『仕事やめたい』『生きていても良い事無い』『自由になりたい』とかを口走ると、かなり危ない。しがらみが断ち切れ、孤立するとますます自殺の危険が高まってしまいます。『一緒に生きたいの』『あなたが居てくれるだけで、うれしいんだよ』とあなたの大事な人との絆を強める訴えかけを繰り返し、繰り返し行い、自殺を思いとどめてください。そして翌日は、病院に一緒に行って、主治医に現状を訴えてください。きっと主治医はあなたとあなたの大事な人の力になってくれます。


Q7.回復は順調に進むの?

A7.残念ながら、上昇と下降のカーブを繰り返しながら回復に向かいます。
 一本調子で回復するなら、本人も周囲も楽ですよね。何時ぐらいに回復するか予想できますから。しかし、PTSDは心の複雑骨折で、第一の原因以外に過去に受けた傷も影響していたりします。それだけに、緩やかな上昇と下降を繰り返しながら回復に向かいます。治療が始まり、最初は順調に回復します。しかし、ある時点でちょっと停滞か落ち込みます。この時、PTSDの患者さんは、『またあの地獄のどん底に戻るのか』と恐怖し、『やはりもう駄目なんだ』と失望してしまい、Q6の様に自殺に走るケースが多いのです。あなたは、あなたの大事な人に『PTSDは緩やかな上昇と下降を繰り返しながら回復するの。ダイエットだって一本調子で体重減らないで、停滞する時期があるよね。そこを我慢するとまた体重が落ちるんだよ。ねえ、焦らないで、先生の言うこと信じて見よう』と繰り返し繰り返し、あなたの大事な人の焦りを取り除いて上げてください。

Q8.PTDSによる鬱気分の治療方法は?

A8.鬱病の治療方法と同じで、大きく分けて薬物療法、心理療法、食事療法があります。

@.薬物療法
 鬱は、脳内のセロトニンという物質が減少して発症します。詳しい病気のメカニズムは、専門書に譲るとして、脳内のセロトニンに支配されている部分は、神経を安定させ、活気を持たせる部分です。ですから、セロトニンが減少すると、鬱の症状が出るわけです。しかし、薬物療法は、セロトニンを直接投与するのではなく、鬱の治療として、SSRI(選択性セロトニン再取り込み阻害剤)を投与します。これは、脳内で減少したセロトニンを有効利用するための薬です。最近の薬は、副作用が少なくなっています。しかし、体質に合わないと、色々な副作用が出てくる場合があります。また、セロトニン自体の量を増やす訳では無いので、中途半端薬を止めてしまうと、鬱が再発する危険も有ります。

A.心理療法
 気分転換が上手く行かないと、ゆうつな気持ちが、鬱に悪化すると説明しましたが、逆に心の持ち方を変えると、鬱を治す事も出来ます。その代表例に、イ)認知療法、ロ)対人関係の改善、ハ)行動療法などがあります。鬱の人は、白黒思考に陥りやすいのです。白黒思考とは、0か100かの二者択一の思考でしたね。認知療法は、白と黒との間に広がる無限の空間がある事を理解してもらい、自分の偏った考え方を修正し、生き易くしようというものです。また、鬱病の人は、対人関係の作り方が下手である場合が多い。そこで、対人関係の作り方をアドバイスするのが、対人関係の改善になります。そして、鬱病の人は、『何をやっても上手く行かない』と最初から行動を諦めたり、途中で止めたりしがちです。そこで、上手く行かなくても、体を動かす事自体に意味がある事を理解してもらうのが、行動療法の主眼です。早起きや早朝散歩も、継続する事で自信も沸き、自分を卑下する気持ちから開放してくれるのです。色々駄目な所は有るが、それでも、自分自身を愛する事が出来るようになれば、鬱の回復は近いでしょう。

B.食事療法
 欝は、脳内のセロトニンが減少する事で発症する事は、@で示しました。そのセロトニンは、食物で採ったトリプトファンというアミノ酸から合成されます。ですから、セロトニンを十分生み出すには、食事で、トリプトファンを採る事が重要です。トリプトファンは、主に肉や赤身の魚に多く含まれて居ます。ですから、ダイエットと称し、肉や魚を採らないことは、自ら鬱を招き寄せていると言えます。また、脳は、ブドウ糖のみを栄養源としています。このブドウ糖は脳内に貯められないので、常に食事で補給しなければなりません。ブドウ糖もダイエットの大敵と見なされていますが、適切な量のブドウ糖は、健康な精神状態を維持するためにも必要不可欠なのです。この辺は、高田明和著・「うつ」にならない食生活 角川書店に詳しく載っています。是非、食生活を見直す上でも、お読みする事をお勧めします。
  
Q1.PTSDって何?

A1.正式名称『心的外傷後ストレス性障害』と言います。鬱が『心の疲労骨折』ならPTSDは『心の外傷性の複雑骨折』といえるでしょう。鬱と異なり、自分の外から衝撃を受け、自信を失うようなトラウマを負う事があります。そのトラウマがまるで『心の複雑骨折』のため、残念ながら、発生メカニズムも、治療方法も確立されているとは言えないのが現状です。失った自信を取り戻し、自分の人生が自分の意思で動かせる実感を取り戻すのが治療の基本方針です。

Q2.PTSDの発症原因って何?

A2.誰にでもかかりうる病気であるのは確かです。ただ、どんな場合で、どのように発症するかは、事件・事故直後のケアーの受け方やその後の周囲の対応によって大きく異なります。一般論としては、事件、事件、自然災害、戦争などなど、個人の適応力を遥かに超えた事態に遭遇したり、目撃したり、話を聞いた時、すなわち、『自分の力の無さ』『無力感』『孤立無援感』『孤独感』等々、自分自身のアイデンティティーを崩される事態に遭遇し、更に、救援時の取り扱われ方で、『自分の力の無さ』『無力感』『孤立無援感』『孤独感』等々、自分自身のアイデンティティーを更に崩される事態に遭遇した時、心の深い所ところにトラウマが生じます。このトラウマは、直ぐに悪さをする場合と、自分でも封印したい記憶の為、封印され、後年、同じような事態に遭遇した場合に、トラウマの封印が開放され、『フラッシュバック』等に襲われ、深い心の傷により、各種の症状が発生します。事件、事故からかなり経ってから発症した場合は、原因の特定と因果関係の証明が相当困難になります。

アメリカでは、ベトナム帰還兵のPTDSが大問題になり、盛んに研究されました。研究の発端が戦争だったため、日本では、余り研究が盛んでは有りませんでした。しかし、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件で、PTDSに注目されるようになりました。

おすすめ参考文献;小西聖子著 インパクト オブ トラウマ(朝日新聞社)


Q3.落ち込んでいる人は励ます方が良いの?

A3.PTSDで苦しんでいる人に対しても、励ます事は、事態を悪化させます。PTSDになってしまったら、心に寄り添うことを優先してください。そして、病院で治療を受ける様、薦めてください。コラム参照


Q4.どうもPTSDらしい、どうすれば良いの?

A4.あなたやあなたの大事な人がPTSDの様なら病院へ。PTSDの人は、自分の病気を認める事は、事件・事故に対応できない敗北者の様な感覚に捕らわれ、自ら病院へ行こうとしません。しかし、先にも述べた通り、PTSDは、誰にも起き得る病気であり、決して、その人が弱いからかかった病気では、有りません。どうか、病院へ行ってください。精神科の門を叩くのが忍ばれるなら、心療内科の門を叩いてください。医師なら、薬を投与することが出来るので、辛い症状を和らげることも出来ますし、療養の為の診断書も書いてもらえます。診断書があれば、『交通事故で、1ヶ月入院になった』つもりで、会社を休み、治療に専念できるではありませんか。あなたやあなたの大事な人に今必要なのは、休養できる環境なのです。