中国 《ギターの友社主催》アジア音楽祭・第4回全国ギター大賞コンクールレポート 石田 忠

中国の香港・深?に程近い広州市で、《ギターの友社》主催のアジアギター音楽祭が10月2日から6日にかけて行われました。中国全土からギタリストや愛好者が広州市の南国リゾート地に集まっての祭典でしたが、中心のイベントはコンクールでした。テキスト ボックス:

写真 リゾートホテルより

このコンクールは3回目までは政府主催でしたが、4回目となる今回は《ギターの友社》が中心となって主催しています。今まで上海に在ったギターの友社が広州に移転しての初の全国コンクールということで今までになく大規模なイベントでした。主催者は「とにかく初めての事で行き届かなくて、」と謝り通しでしたが、当日になっても決まらない広いリゾートホテル内での審査会場・演奏会場、など変更に次ぐ変更で大混乱でしたが、それはそれで大きなイベントにはよくある事と、皆、大らかにしていましたが、私達外国人は掲示板に書かれた事柄がよく分からないのでウロウロすることになってしまいます。各地で第1次予選を通過してきた人達がここで第2次予選と本選に望むわけです。ちょうどこの時期は中国の国慶節にあたり、言わば黄金週間と言った感じの1週間程の休みになるので、大人も子供もこの祭典に参加しやすいのです。中国全土、ハルビン、北京、南京、上海、など600人ほどの人達が集まりました。食堂も壮観で何百人もが食事が出来るようになって、しかも大変美味しいものでした。以前、演奏会でご一緒した広州のギタリストの江さんが「食は広州にありだからぜひ来てください」と言っていましたが、本当にそう思いました。遠方から来ていた人達には口に合わないと外へ出かけて行った人も見かけましたが、日本人にはぴったりです。中国では珍しくスープから出してくれます。地方地方によって、味付け、食材はもちろん、料理の出てくる順番やマナーまで違っているようで、楽しみの一つです。

ここでのコンクールは、クラシック、民謡、ロックの3部門に分かれていて、クラシック部門はさらに独奏の部と重奏・合奏の部の2つに分かれています。さらに独奏の部では成人、子供の部(中学生まで)と分かれています。今回のコンクールではアジアギター音楽祭ということで外国人の審査員を参加要請され、クラシックでは台湾、日本からも招かれたのです。台湾から葉登民さん、日本からは、鈴木巌さん、福田進一さん、そして私達夫婦の石田 忠、石田淑恵の4人が招待されました。各部で先ず10月3日に30人程の2次予選が行われ、選ばれた24人が次の日に本選出場(10月4日)とな

写真 ホテルで日本人審査員が集まって

ります。それぞれに成人の部では課題曲の練習曲第1番(ビラロボス)と自由曲。子供の部ではリュート組曲第1番のブーレ(バッハ)と自由曲。成人の部で1位になった潭磊さんは昨年私が南京で出演した演奏会で一緒に演奏された人で、私が名誉校長をさせてもらっている南京飛音ギター学校の講師を今年までされていた人です。(この飛音ギター学校の校長、趙長貴さんと言う人は35才という若さですが10数年前からここの校長を任され、後進の指導等にも熱心に取り組むと共にご自身の演奏にも精力的に活動され中国のギター愛好家の尊敬を集めています。)潭磊さんですが自由曲の祈りと踊り(ロドリーゴ)を端正に演奏し場慣れしているせいか安心感のある演奏でした。爽やかな青年です。子供の部で1位になったのは?虞(中学生男子)。実は子供の部では大変上手な人が多くいてとても驚きました。この少年はベニスに謝肉祭変奏曲(タレガ)を演奏したのですが突出したテクニックで他を圧倒していました。2位の彭博さん(中学生女子)はバーデンジャズ組曲(イリマル)を演奏し、情感豊かな演奏で、将来が楽しみです。この2人は鎮江市出身で彭来柱先生の生徒さんです。私も鎮江での演奏会ではいつもお世話になっている人で、やはり以前は南京飛音ギター学校の講師をしていたそうです。彭博さんのお父さんです。テキスト ボックス:  重奏・合奏の部の1位は陳小勇・鄭正紅・黄継康さんのトリオできれいな音で丁寧

写真 審査風景


に演奏していました。総じて中国の人は歌うのは上手です。そしてよく練習もします。CDや楽譜等の教材は日本と同じ様に豊富ですし、最近は以前よりずっと高価な楽器を購入する人が増えてきています。中国製の楽器のレベルも随分上がってきています。ただ、鎖国時代が長かった為に西洋音楽への理解度、捉え方はもう一つと言った演奏も多々見受けられました。これからの若い人達に大いに期待したいと思います。

日本のコンクールとの大きな違いは、演奏者のレベルに大きな幅があって、どうして1次予選を通過したのかと思われる人がいたり、他のコンクールで優勝しているので予選はなし、といった事があることです。事前に聞かされていなかったのでちょっと驚きましたが愛嬌の内といったところでしょう。ただ、どうしても身内の生徒にはよい点を付けている審テキスト ボックス:  査員もいる様で、本選では自分の生徒には点をつけないなどの工夫が必要ですし、コンクール

写真 中国人ギタリストと

直前、当日に審査員にレッスンを受けている人もいて、このあたりもルールを作って行くべきでしょう。

今回は中国ギター界の重鎮と言われる先生方や現在中国で一番レベルが高いといわれている音楽大学、上海音楽院の元院長先生、演奏家と共に外国人の審査員が何人か参加して賑やかな華やぎがあり、名実共に中国で最も大きなコンクールであったことは間違いなく、入賞した人達の大きな励みになる事と思います。

最近は外国からの演奏家も多く中国へ出かけるようになりまた、外国へ留学する人も増えてきました。この人達の中国ギター界に影響は大きなものがあることと思います。長い鎖国時代を一気に乗り越えようとするエネルギーとより多くのものを吸収しようとする若い人たちの向上心は目を見張るものがあります。同時に情報も資料も足りない鎖国時代にこつこつ勉強を積み重ねてきた先人たちの努力と意欲にも敬意を表したい思いがします。

福田進一さんが「コンクール特に子供の部門を聴いて中国のギター界はあと5・6年もしたら世界中の国際コンクールに入賞する人が何人も出てくるでしょう」も言っていましたが本当に中国に行くたびにレベルの著しい向上に目を見張ります。この間はショパンコンクールで中国の人が優勝しました。声楽家も活躍していてトゥーランドットでは素晴らしい歌を聴かせて貰いました。オーケストラもついこの前までひどいと言われていましたのに、アメリカ公演で絶賛されていたそうです。ギターの世界でも活躍が聞かれるのはもう直ぐのこととなるでしょう。応援したいと思います。

他のアジア音楽祭クラシック部門の企画として、テキスト ボックス:  ゲスト審査員の演奏会(10月3日夜)石田デュオ・鈴木巌・中国ギタリ

写真 コンクールの合い間のゲスト演奏

スト5組の演奏会、福田進一のマスタークラス(10月4日夜)、また10月5日広州市内のホールで福田進一をまじえた11人のジョイントコンサートなど開かれ盛り上がりをみせて音楽祭が終了しました。

私も中国にかかわりをもって10年、毎年のように訪中してきましたが日本のギタリスト、中国のギタリストと一緒に毎晩夜遅くまで(夜中の2時〜4時)酒を交わし、今年は特に楽しい日々をすごしました。鈴木先生の飾らない人柄や福田さんの楽しいおしゃべりなど私たち夫婦はもっぱら聞き役に回っていましたがこうした思いがけない縁でいろいろなギタリストや愛好家と知り合いになれる事がこういういろいろな音楽祭の楽しみの1つでもあるでしょう。今回の訪中は日本に帰ってからなぜか疲れを覚えたのは歳のせいばかりではなく酒疲れ、寝不足かな。それにしても69歳の鈴木先生は中国の白酒を一晩でほとんど飲み干し翌日さぞや二日酔いかと思ったらケッロとしていたのには驚かされました。さすがに各国を演奏旅行したギタリストは体力があるものだと感心させられました。

中国ではこれからコンサートホールや演奏会の出来るような文化会館のようなものを作る計画が各地でたくさんあるそうです。来年の旧正月に南京近くに新しい演奏会場が出来るそうで、私達デュオはこけら落としの演奏に出かける予定です。また多勢の人達と楽しく過ごせる事を楽しみにしています。

テキスト ボックス:

写真 趙長貴さんを囲んで野外での懇親会






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