ルリルラ小説 光魔騎士団 〜ウィンコール〜
「ただいま。」
そういうと、少年は自分の部屋に荷物を投げ入れ、家を出る。
「カズヤ、昼ごはんは?」「いらない」
姉の声をそっけなく返すと、カズヤとよばれた少年は、1人目的地に向かう。
カズヤは、2年前両親が離婚し、父についてこの町に来た。初めは転校生という立場で
ちやほやされていたが、カズヤの自我は周囲を拒絶し、今、カズヤにとって友人と呼べるものは
1人もいなかった。
堤防を下り、大きな木の木蔭に座る。そこがカズヤの定位置だった。ここに座ると、カズヤはいつも
同じことを考える。ほんの数ヶ月前身についた不思議な力・・・・蘇生能力(といえばしっくりくるだろう)
について・・・
これについては説明は省略するが、この力が身についてからというもの、カズヤの周りに動物たちが
集まることが多くなった。
いつもと同じ考え事にふけっていると、木の枝に停まっていた鳥たちが、一斉に飛び立った。
カズヤが誰かの気配に気づき、振り返ると、1人の女性が立っていた。
なんだ、こいつは・・カズヤがそう思ったそのとき、誰かの意識が自分の頭に流れ込んでくるような
感覚を受けた。
(あなたが、カズヤですね・・・)
その意識が目の前の女のものだと感覚的に気づいたカズヤは、女が何者なのか一瞬考えた。
すると・・・
(私は、あなたを求めているもの・・・そして、あなたが求めているもの・・・あなたの力が
必要なのです。私たちの世界へ、来てくださいませんか?)
という言葉を頭の中で聴いた。思ったことだけで会話できるらしい・・・そう思ったカズヤは、
こう思ってみた。
(私たちの世界?この世界以外に他のがあるとでも言うんなら、連れて行ってみろよ。
拒絶はしないぜ。)
・・・最後の言葉が余計だった。女性は微笑み、「ありがとう」といった。
その瞬間!カズヤはあたりの風が、時が止まったのを感じた。それと同時に、自身の存在が
薄れていくのも・・・
「くっ・・・一体何が・・・」
一時的に意識を失ったカズヤは、目を覚ますと辺りを見回した。和也がいたのは、堤防下の木の下であるはずだった。だが、ここは違う。第一、堤防下にベッドがあるはずがない。
「お目覚めになられましたか?」
聞きなれない女の声だった。カズヤは彼女に状況の説明を求めた。
(外はもう暗い・・・家に戻らなければ、姉さんに迷惑がかかる。)
「まず、ここはトロンメルという国です。アーカイアのほぼ中心に位置し・・・」
なんだそれは・・・?そう思っている間にも女の説明は続く。
「そして、あなたは黄金の歌姫様の力でここに召喚されたわけです。」
彼女の説明を聞き、頭の中を整理する。当然、依頼に応じられるはずはなかった。
だが・・・・
ドゴォォォォォン!!大きな爆音がすぐ窓の外から聞こえる。
「ノイズ!?なぜここにこれほど早く・・・!?」
ノイズ・・・彼女の話に出てきていた。そうか・・・こいつが・・・
突然カズヤは走り出した。
「そっちは危険です!!!」
彼女の叫び声を無視すると、剣(彼女が腰に帯びていた)を鞘から抜き、猛然とノイズに突っ込む!
「どれほどのものか・・・見せてもらう!!!」
要請に応じるつもりはなかった・・・だが、カズヤの体は、勝手に動いていた。ノイズを見た恐怖が、
なぜかカズヤを突き動かしていた。
カズヤは飛び上がり、大上段に構えた剣を真っ直ぐに振り下ろした!!
カズヤはノイズの光る赤い目に見つめられていた。カズヤの持っていた剣は、中ほどから真っ二つに
折れている。カズヤにノイズの振り下ろした脚が迫る!
(俺が甘かったのか・・・すまない、姉さん・・・!)
そう死を覚悟した瞬間、耳をつんざくような音と共に、ノイズは腹部から大量の体液を流し、倒れた。
数秒後彼の前を通り過ぎたものを見て、カズヤは自分が助かったことを知った。
「あれは・・・ロボット?・・・・・・・トールギス?そんな馬鹿な!?」
カズヤの目の前を通り過ぎたのは、元の世界で見た、ガ○ダ○Wのプラモ、トールギスに似ていた。
その後、他のロボットも数体現れ、ノイズたちを撃破していった。その姿を呆然と見ていると、さっきの
トールギス(に似た)ロボットが、カズヤの目の前に降り立ち、パイロットが出てきた。
それは意外な人物だった。
「アレ?お前・・・カズヤか?」見覚えがあった。
(こいつは・・・確かクラスメート。ウイングマニア。あだ名しか思い出せん・・・)
「お前は・・・ゼクス・・・なぜお前がここにいる?」
「それはこっちのセリフだぜぇ。もしかして、お前も呼ばれたのか?」
さっきの家(基地だったようだが)にクロード(ゼクスのこっちでの名)とともに戻ると、対戦への参加を承諾(負けっぱなしは嫌だ)し、シャルラッハロートUという機体を選んだ。また、歌姫がいないと完全起動できないということなので、翼の門(転移装置)でポザネオ島ヘ向かうことになった。ゼクスと、彼の歌姫カナも一緒だった。
「こんなやつでも戦力にはなるだろう・・・」
一瞬の感覚の喪失の後、目の前には焼け野原が広がっていた。ポザネオ島らしい。
(ここに俺の運命の歌姫とやらが・・・)
その辺の偵察をクロードに頼むと、何かに惹かれるように数人の人影が見える祭壇へ向かった。
泣き崩れている女(おそらく彼女たちも歌姫なのだろう)
「何があった?」
「ミイナが・・・瓦礫の下敷きになって・・・助け出したんだけど・・・」
ミイナという子は助からない・・・誰が見ても明らかだった。カズヤの能力なら助けられるが、人間には使わないと決めていた。だが・・・・
「万能なる魔力(マナ)よ!今その力生命の息吹となりて、この者を蘇生させよ!」
体が勝手に動いていた。見捨ててはいけないと、誰かが心にささやいた。
あたりに光が満ち、次の瞬間にはミイナは生き返っていた。成功したのだ。
その場の雰囲気が明るくなったそのとき!
ズゴォォォン!!
大音響とともに燕(フォイアロート・シュヴァルベ)が落ちてきた。クロード機だ。
「くっそ、起動時間切れに気づかなかった・・・」
苦笑いしている。燕の頭が吹っ飛んでいるが、問題にしていない。大丈夫か、こいつ。
だが、クロードのことを考えている場合ではなかった。ふらつきながら飛んでいたクロード機を追ってきていた
ノイズ、約20匹に囲まれていた。
クロード機が落ちた今、ここにいる者を助けられるのはカズヤのツヴァイしかなかった。
「もう、歌えるのか?」
ミイナにたずねる。ミイナは元気よく立ち上がると、大丈夫だと答えた。お互い、無意識のうちに相手が運命の相手であることを悟っていた。カズヤがツヴァイに乗ると同時に、ミイナとの精神統一を図る。・・・成功!
カズヤ機はロングソードを構えると、ミイナの歌(歌術というらしい)の開始を待った。ミイナの歌が始まる・・・
「ん、良い声だ!」
カズヤは言うなり、3〜4体のノイズを横一文字に切り裂いた。そして、1回り大きいノイズ(貴族と呼ばれるものではないようだが)に向かって、高く跳んだ!
(今度は・・・いける!!)
そして、大上段に構えた剣を、今までに無いほどの速さで振り下ろす!
決着は一瞬でついた。ノイズは真っ二つに裂け、倒れた。
(まだだ!)
まだ背後には10体ほどのノイズが残っているはずである。だが、振り向いたカズヤの目には、ノイズは1体も見えなかった。その代わりに、蟹(フォイアロート)が一機立っていた。その蟹には、「蒼い炎に巻かれる十字架」がペイントされていた。
これが、このときの決戦で大きな戦果を上げた勇者の一人、セージ・アズマとの出会い、そして、彼が身を寄せている宿、「三日月亭」に同じく身を寄せるきっかけとなった。
三日月亭には、多くの英雄たちが集う・・・その理由は、やはりここの女将、モニカさんの料理のうまさと、人徳だろう。また、多数存在するチームについての情報も多く得られることも、人気のひとつだと思う。
そこで、カズヤは自分の運命を変える人たちと出会うことになる。
それが、「光魔騎士団」である。
First Mission
End.