シーラチャー1
低層のショップハウスが建ち並ぶ路地向こうに不自然に生えるビルが「シティ・ホテル」。路地は日本人が多く泊まるホテル前にしては考えられないくらい寂れている。車もバイクもトゥクトゥクも殆ど通らないので、何回も歩いてみた。現地人向けの飲み屋、カラオケ屋、置屋、バイク修理屋、小さな小さな乾物屋。コンクリート剥き出しになったままの建物の2階、3階を見ても生活感が感じられない。が、誰かが住んでいるのは間違いない。赤や黄、オレンジなど場違いな色の衣類が「店頭」に吊されている。古着なのかな?手が出る。それに触れると濡れている。洗濯物だ!その店は置屋で、女の子達のユニフォームであるドレスやスカートを干していた。洗濯石鹸の香りが一瞬した。その昔この路地は「シラチャー・パッポン」と呼ばれていたとの事。
シーラチャー2
カメラを構えるのが苦手です。写真は専ら「ブラインドシュート」。ファインダーやモニターは見ない。さっと撮るだけ。だからブレていたり「あさって」の方向が写っていたりするのが多い。しかし、目で見たものと違うものが写っているので後の楽しみがあります。朝の散歩途中のただの景色。面白くもなんともないけれど、日本に戻って気が付いた。アパートの窓におそらく家賃であろう「1500(バーツ)」という紙が貼られている。駐在員家族が多く住んでいるらしい「Jタウン」が、かろうじてフレーム内に収まっている。
こういう「発見」も、また楽しいですね。
ソイ・サラデーン1
名もないお店は特別に美味しいとか安いとか、そういうものとは無縁に永く商いをしている。昼時には近所のトヨタに勤める日本人でいっぱいになるので、もしかしたら評判の店なのかもしれない。その店主であるMおばちゃんと多少の縁があって立ち寄ってみた。帰路、BTSの駅までMおばちゃんと歩く。「どこまで行くの?」「サイアムに行きたい」Mおばちゃんは小走りに窓口へ行き切符を買おうとする。切符は自動販売機でしか買えない。MおばちゃんはどうやらBTSには乗った事がないようだ。でもその気持ちがありがたいんだよね。
ランナム通り
午後散歩。休日のせいもあるのだろうか、やけに人もクルマも少なくてタイらしくない。こ洒落た感じを演出している食堂が数軒。左の歩道と右の歩道を行ったり来たりしながら(それができるほど閑散としている)ぶらぶら歩く。持ち物はGパンのポケットにいくらかの現金と、カラビナでぶら下げた小型カメラだけ。手ぶらで歩くのがやはり楽しい。暑いのだけど爽やか。通りも終わりに近付くと苺を売る屋台。許可を得てシャツターをきる。後日PCにデータを読み込んでみて気が付いた。屋台の風車が勢いよく回っている。風が吹いていたんだ・・・。爽やかな理由は風のおかげだったのでしょうか。
ファーストホテルから
昔読んだ前川健一氏の「バンコクの匂い」を書棚の奥からひっぱりだした。一部引用『こうして高い所からバンコクを眺めると、美しい街でもなければおもしろそうな街でもない。暑さも感じなければ、騒音も耳に入らない。排気ガスに目とノドを痛められることもない。汁ソバの屋台もパンツ屋の露店も、白シャツと紺スカートという制服の小学生も、宝石屋も銀行も棺桶屋も、タイ語と中国語と英語の看板も、すべて映画の一場面のように見えてくる。映画には汚水もなければ、ニンニクを炒める香りもない・・・』その高い場所「バイヨーク・タワー」がホテルの窓のカーテンを開けると目に飛び込んできた。窓はすぐ抜け落ちてしまいそうなくらい頼りなく、しかも1ミリたりとも開ける事ができなかった。窓越しに撮った画像は、あたかも大気に漂う目に見えない物質を映し出しているようで、私はその窓を「バンコク・フィルター」と名付ける事にした。
←index next→