自己破産
免責不許可事由(破産法366条の9)
 以下の事由に該当する場合、免責が不許可になるおそれがあります。民事再生手続きを検討してください。

@ 破産財団に属する財産を隠匿、毀棄または債権者の不利益に処分したとき。
A 破産財団の負担を虚偽に増加させたとき。
B 商業帳簿作成義務があるのに作成しなかったり、不正確または不正の記載をしたり、あるいは帳簿を隠匿したり毀棄したりしたとき。
C 浪費または賭博などの射倖行為で著しく財産を減少させたり、または過大な債務を負担したとき。
D 破産宣告を遅らせる目的で著しく不利益な条件で債務を負担したり、信用取引(借金等)で商品を買い入れ著しく不利な条件でこれを処分したとき。
E 破産原因があるのに、ある債権者に特別の利益を与える目的で担保を提供したり、弁済期前に弁済するなどしたとき。
F 破産宣告前一年内に、破産原因の事実があるのにそれがないことを信じさせるため詐術を使って信用取引により財産を得たとき。
G 虚偽の債権者名簿を裁判所に提出し、または裁判所に対し財産状態につき虚偽の陳述をしたとき。
H 破産者が免責申立て前10年以内に免責を得たことがあるとき。
I 破産法に定める破産者の義務に違反したとき。

非免責債権(破産法366条の12)
 以下の債権は免責されません。特に不法行為による債権についてはご注意ください。

@ 租税。
A 破産者が悪意をもって加えた不法行為に基づく損害賠償。
B 一般の先取特権を持つ雇い人の給料。
C 雇い人の預り金、身元保証金。
D 破産者が知っているのに債権者名簿に記載しなかった請求権、ただし、債権者が破産宣告を知っている場合を除く。
E 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金及び過料。

破産申立書類
 おおむね以下のような書類が必要になります。裁判所によって若干異なります(特に郵便切手等の金額)ので、ご注意ください。以下は東京地裁モデルです。

 ・住民票(3ヶ月以内、世帯全員)
 ・戸籍謄本、抄本/外国人登録済証明書
 ・陳述書(裁判所様式)
 ・資産目録(裁判所様式)
 ・家計全体の状況(裁判所様式)、2ヶ月分
 ・債権者一覧表(裁判所様式)
 ・予納金 同時廃止14,170円 少額管財・個人 16,413円
 ・収入印紙 個人900円(免責申立分300円含む)
 ・郵便切手 4,000円(400円×5枚 80円×25枚)  *同時廃止の場合
 ・債権者送付用宛名入り封筒(債権者数×1又は2組)

 ・生活保護/年金/各種扶助の受給証明書
 ・給料明細書(直近の2ヶ月分)
 ・源泉徴収票
 ・課税証明書又は非課税証明書
 ・退職金計算書(又は退職金がない旨の証明書)
 ・差押 仮差押決定正本(判決は不要)
 ・預貯金通帳(全部) 
 ・生命保険証書/解約返戻金計算書
 ・車検証又は登録事項証明書
 ・不動産登記簿謄本(売却/競売/財産分与)
 ・(不動産を所有する場合)オーバーローン上申書
 ・(同上)ローン残高証明書/不動産評価書類

 自営の場合
 ・事業に関する陳述書(事業内容/負債内容/従業員状況/法人営業の場合申立の有無)
 ・税金申告書控(直近の2期分)

 法人併存の場合
 ・資産目録(裁判所様式)
 ・債権者一覧表(裁判所様式)
 ・予納金 少額管財 法人13,457円
 ・収入印紙 法人600円
 ・郵便切手 4,000円(400円×5枚 80円×25枚)
 ・債権者送付用宛名入り封筒(債権者数×1 又は 2組)
 ・社員総会議事録又は株主総会議事録
 ・商業登記簿謄本
 ・税金申告書控(直近の2期分)
 ・預貯金通帳(全部)
 ・有価証券
 ・会員権証書
 ・生命保険証書/解約返戻金計算書
 ・車検証又は登録事項証明書
 ・賃貸借契約書
 ・不動産登記簿謄本(売却/競売)

一定の財産(不動産等)を持っている方
 「破産手続き費用を支出するに足りる一定の財産があるとき」には、破産宣告と同時に破産管財人が裁判所より選任されます。つまり、同時廃止でないときには破産管財人が選任され、管財事件として破産手続きが開始されます。「破産手続き費用を支出するに足りる一定の財産」とは、だいたい30万円から50万円以上の財産が目安です。申し立ての予納金も50万円程度かかります。なお、不動産があっても不動産の時価の1.5倍以上に担保が付着している場合は管財人は選任されないこともあります(東京地裁ケース)。この場合資料として、競売の通知あるいは不動産の時価についての意見書などが必要です。

少額管財ケース
 東京地裁をはじめ、大都市地域の裁判所で行われている手続きです。従来、上記50万円以上の財産があったり、免責不許可事由がある場合、予納金が50万円と高額なため払えない、もしくは免責を得るために一定の積み立てをするケースがあったのですが、それが滞ることが多かった。そのため、従来の管財手続きを簡略化した少額管財手続きが実施されるようになりました。以下のこの手続きに該当すると思われる例です。

 法人   資産がほとんどない場合(換価が困難な資産を持っている場合は通常の管財事件)
 自然人  1.負債総額が5,000万円超
       2.債権者の数が多数の場合(100名超)
       3.法人の代表者
       4.個人事業主
       5.免責不許可事由が疑われる場合
       6.破産財団に属する財産の換価が必要な場合

 なお、この少額管財事件では弁護士が代理人の場合にのみ適用され、予納金は20万円となります。司法書士である当職が、後記説明の同時廃止事件か少額管財事件かが微妙なケース(主に免責不許可事由の有無)において、最終的に少額管財事件になった場合は、必要経費だけをいただきます。

同時廃止事件
 財産が少なく(30万円〜50万円以下が目安)、かつ法人や個人事業主でない場合、あるいは不動産を所有しているが、オーバーローン状態の方が、破産宣告と同時になされる裁判所の決定のことをいいます。自己破産の典型です。

支払不能とは?
 自己破産が認められるには、支払不能状態にあることが必要です。支払不能とは、「債務者が弁済能力の欠乏のために即時に弁済すべき債務を一般的かつ継続的に弁済することができない客観的状態」と定義されます。これは、債務者の財産、職業、給料、信用、労力、技能、年齢、性別などを総合的に判断して個別的にケースバイケースで認定されます。一般的には、手取りの収入から住居費を差し引いた金額の3分の1で分割返済(通常3年)できれば任意整理もしくは特定調停、できなければ自己破産といわれています。
 
アドバイス
 消費者金融等からの多額の借金がある場合には、自己破産を考える前に現在までの取引を利息制限法に引きなおしてから判断するほうが良いでしょう。自己破産の不利益は意外と少ないものですが、官報に名前が掲載されてしまうことや、(業者によって期間は異なりますが)いわゆるブラックリストと呼ばれるものに掲載される期間も任意整理等に比較して長いようです。

利息制限法とは?
 消費者金融等では、利息を年29.2パーセントを取るところが多いですが、利息制限法では年利は18パーセント(元金100万円未満の場合)が限度となっています。厳格な基準を満たした場合は年利29.2パーセントが認められますが(みなし弁済)、ほとんどの業者はそれを満たしていないので、年利は18パーセントと考えて間違いはないでしょう。

取引履歴
 上記計算は業者から最初の借り入れから現在までの取引履歴を開示してもらうことが前提となります(なお、債務者自身で現在までのすべての貸し借りを把握しているならば問題はないのですが、そのような方は稀です)。これに関しては本人が業者と交渉しても、上記のみなし弁済の件をいいくるめられたり、取引履歴をいろいろ理由をつけて出し渋るのが現状です。また契約を切り替えた時からしか開示しないケースも多いです。
 これはどういうことかと言うと、取引が長ければ長いほど、29.2パーセントと18パーセントの差額が大きくなり、だいたい5年程度の取引ならば半額、10年ならばほぼ0か、あるいは払いすぎで業者から返還してもらえる可能性が高いので、業者の方も死活問題なのでなかなか開示しません。これに関しては法律専門家にまかせましょう。

計算を終えて、、
 すべての業者から取引履歴を開示してもらって、年利18パーセントで当初の契約からの再計算をしたものが、現在の残高となります。取引の長い方だとかなり額が少なくなっているはずです。この金額をもとに返済できるのであれば任意整理又は特定調停を考えましょう(いずれも将来利息はつかないはずです)。