八ヶ岳 赤岳 天狗尾根
ケロヨン軍曹
投稿日:2013年 3月 4日(月)
2013.2.9/10
パートナー 韋駄天さん
天気 晴れ
八ヶ岳 赤岳 天狗尾根
2月の三連休、八ヶ岳の東面でまだ入ったことがない赤岳天狗尾根に入った。
思えば、ちょうど二年前に五人パーティでこの時期、旭岳東稜に入って以降のこのエリアの山行となる。
あの時は、その一ヵ月後に東日本大震災があり、予定していた鹿島槍ヶ岳正面ルンゼを中止した。
そして暫くは山行を控えた。
当初は、能天気に赤岳山頂小屋に泊まる予定であったが、直前になってやっていないことが判明、韋駄天さんにどうするべ!と相談し、初日はゆっくりと出合小屋に泊まり二日目に未明よりワンデイでやることとした。
初日、ゆるい計画になるかなと思っていたが、韋駄天さんよりこちらを五時に出発しましょうと言う提案があり、やっぱりと納得、心がけが違うようだ。
美しの森駐車場に十時前に到着。
先発パーティ五、六人組が準備していた。
彼らも天狗尾根ということで初日、出合小屋付近でテント泊、その後は多分、キレット小屋付近に宿泊したと思われる。
予想どおり、三時間ぐらいかかり、十三時三十分ごろ出合小屋に到着、暫く休憩して偵察に入る。
トレースあり、尾根を大きく回りこむルートまで確認、本番はワカン必要無しと判断した。
小屋には権現東稜に入るパーティー、ツルネ東稜に入るパーティーも同宿。
持参したビール500ml二本のうち、一本が漏れて空になったのは残念であるが、残ったビールで乾杯し韋駄天さんが持参した芋焼酎でいい調子になり、適当に食事して早々に吾輩はツェルトの中へ、韋駄天さんはそのままシェラフに入り込み寝ることにした。
沢の出合付近、足先が冷え、なかなか寝付けず夜中に二度ほどトイレに行く。
夜空には星がきらめき、明日の成功を保障しているようであった。
二日目
、二時過ぎ起床。暖かい飲み物を作り、ツェルト及び不要のものをデポして三時二十分出合小屋を出発。
小屋には、まだ権現東稜パーティー、ツルネ東稜パーティーともに深々と眠りについている。
小屋を出たところの二つのテントのパーティも静寂に包まれていた。
前日の偵察もあり、ただトレースを追っていく。
今回も、GPSを持参、各ポイントを入力する韋駄天さん、事前にネットでトポを調査、幾つかの山行記録を点検、大天狗、小天狗などの核心部についてもしっかりと確認済みである。
かたや、吾輩、今回も何度も入っている地域であることもあり、コンパスも地図も持ってこず、山岳体系もネットでトポを調べることも一切せず、核心部がどこか、どの程度か全く興味なし、現地に行って判断すべし、と全くのマイペース。
結果的には、いつも韋駄天さんに大いに助けられているようで・・・
韋駄天さん、ありがとうございます。
今朝のスタートも吾輩が三時起床では・・・と提案したところ、いや三時スタートでしょう!と叱られてしまった。
とは言いつつも、三時二十分には出発、闇夜の渓谷を遡行することは楽しい、冬はなおさらである。
沢から尾根へ入る。
一本取り、暗黒の闇の上には、煌々と星がきらめいている。
厳寒の赤岳のなか、天狗尾根末端でのこの一時は何ものにも替えがたい、
至上の喜び
であった。
そこにあるのは暗黒の闇ときらめく星とわれわれ二人のみであった。
天狗尾根をただひたすら詰めていく。
こんな時は、ただ無心に一途に行動するのみだ。
途中で昨日、吾輩よりも遅く入ったパーティが尾根の下部でテントを張っていた。
しっかりとトレースされている尾根を更に進むとテントを張っているパーティが二組あり、意外とテントスペースはあるようであった。
途中にナイフリッジがあったりして、やや楽しめた。
周りがうっすらとして明るくなるころ
岩壁が現れる。
岩壁基部に一パーティが出発の準備をしている。
昨日は、小岩峰の核心部まで行き、そこから引き返したらしい。
この小岩峰、実にいやらしい、というか面白いらしい。
高度感のあるトラバース、迫る岩壁、クライマーにはたまらない。
十メートル、三十メートルの岩峰は難なく越え(というか殆ど記憶には無い)韋駄天さんが止まっている。
その地点まで行き、合流
眼前に、最上段の三十メートルの岩壁が現れる。
どうするべ!と言って話しあう。
韋駄天さんはトレースがあるからトラバース派、吾輩は、この地点から逆Zピッチのように
右上、左上して、上に抜けるルート
を提案。
結局、韋駄天さんがトラバースルートを行くということになる。五十メートル延ばして吾輩が行く。
そこから先、トラバースは壁が立っており、続登は論外、ということはこの地点から直上、チムニーそして上部岩壁ということになり吾輩が行くことになる。
チムニー登攀、悪いが中に入ると落ちることは無い、ザックとザックの荷に付けているクォークのピッケルが邪魔をするが、何とか切り抜け上部へ行く。
続く上部岩壁は約十メートルほど、下部にピトンが一本あるがアイゼン登攀は厳しい。
ここでかつて、越沢バットレス、広沢寺アイゼン登攀した経験がいきることになる。
よく見ると、やや広いジェードル風の壁の右足側がガバはなさそうだが、左足はツァッケをかけていけば行けそうだ。
右手にバイルを持ち、ドライツーリングで岩角に引っ掛け二メートル、三メートルとずり上がり安全地帯に突入。
多分X-程度だろうか、その後V+の岩を回り込みビレー。
韋駄天さんが、ヒーヒー言いながら上がってくる。
開口一番、「良く行きましたね」。
つるべで行く予定であったが、あまりに韋駄天さんの消耗が大きかったため、吾輩が続行、2ピッチほどで大天狗の基部に到着。
この大天狗、ルートは二本、一本は正面左寄りを直登、もう一本は大天狗を右へトラバースして、一段上のバンドに乗って岩峰を捲くルート。
吾輩は、迷うことなく先ずは
直登ルート
へ、大天狗最上部十メートルほどの地点にビレー点があり、そこからスタートする。
正面左より、というより左のスカイラインを直登するルート、核心部に一本のピトンがある、その横の岩の切れ目にカムを一本セットして登る。
岩と直面すると、手がかり、足がかりが無く、左側はスパッと一気に天狗沢に切れ落ちている。
核心部は三メートルほど、そこを抜けるとガバがあり傾斜は落ちてくる。ここは度胸と思いつつ、ピトンもあり、致命的な負傷は無いだろうと、先ほどの核心部と同様に、よく岩を観察すると、岩の弱点が見えてくる。
左側すなわち、左足側は良く見てみるとアイゼンの先端ツァッケだけは引っかかるポイントがある。
しかし、右足側は無い、どうしようもないので、ここは一発しっかりとバイルのピックに助けてもらうこととする。
またしても、ドライツーリングだ!!
ビレーを取った後、出来る限り伸びをして、右手のバイルをより高く、遠くの岩角に引っ掛ける、手袋を外した左手でそれに呼応して、先ず一歩上段へ、そして左足をあらかじめ定めたガバに乗せ、右足は岩に摺り寄せる。
そして更に伸び上がり、右手のバイルをより高く遠くへ、そして確実なガバに引っ掛けて、思いっきり体を上部にずり上げて一メートル、二メートルと登っていき、安全地帯に突入する。
何とか
核心部は切り抜けた。
確かに悪いが確実にガバを拾い、ピックを上手く使えば突破できないことは無い。X-程度であろうか。
続く韋駄天さん、またまたヒーヒー言いながら登ってくる。
疲労困憊しているようだ。
大天狗の頂上、トラバースして、懸垂点に行くのだが息が上がって行く状況ではない。
そこで吾輩はまた大天狗の反対側の懸垂地点までトラバースすることとなった。
後続パーティがすでにこの核心部のトライを始めているようである。
ここで長居は出来なかった。
吾輩が、大天狗を越え、懸垂点に到着する。
その後、韋駄天さんがやってくる。
懸垂をして下のコルへ
小天狗を目指す。
小天狗はさしたる困難な箇所も無く、夏道をしっかりとトレースして上部に抜ける。
目の前に稜線が広がり、3人パーティーが赤岳から権現に向かっている。先頭は、赤布をつけた小竹を持ち、下っている。
稜線には、10:10頃到着する。
暫くして、3人パーティーと合流する。
彼らは、権現を越え、青年の家まで行くという。
かなり時間が経過していたが(多分吾輩が大天狗を通過して1時間以上)未だ、後続のパーティーはどこも大天狗を通過していなかった。
他のパーティーはみな、直登ルートではなく、岩峰を回り込む、トラバースルートに行ったと思われる。
その後、厳しい八ヶ岳の強風にヒィヒィ言いながら、ツルネ東稜を目指したのであった。
ツルネ東稜は12:00頃に通過、当初はトレースが無く、厳しいラッセルであったが、後にトレースがあり、楽々の下山であった。
出合小屋 14:00頃 しばし休憩して、出発。
駐車場着 17:30頃 暗くなる直前であった。
今回は、2年ぶりの八ヶ岳の東面であったが、韋駄天さんのお力をお借りしながら、十分に楽しめた山行であった。
韋駄天さん、何時もながら、有難うございました。
2013.2.9-10 (土・日)
パートナー 韋駄天さん